第23話 世界一の錬金術士

遺跡ダンジョンから帰還したウルガとセレナは、足を休める間もなくギルドへ向かった。


目的は一つ。


宝箱から回収した、あの石版の鑑定だ。


「リーナさん、これをお願いします」


カウンター越しに石版を差し出すと、リーナは一瞬だけ眉をひそめた。


「……ごめんね。


 今日は日が悪いわ」


「鑑定士が不在、ですか」


「ええ。アルドナの街に呼ばれていて、戻りは早くても明日ね」


肩をすくめるリーナに、セレナが軽く手を振る。


「仕方ないわね。


 じゃ、今日は解散にしましょ」


その場で二人は別れた。


宿へ戻る途中、ウルガはふと足を止める。


久しぶりに、あの子供たちの顔が浮かんだ。


――少しだけ、顔を出そう。


そう思い、スラム街へ向かう。


薄暗い路地を歩いていると、道の端に倒れ込む人影が目に入った。


ボロボロの服。


泥と埃にまみれ、年齢すら分からない男。


「……大丈夫ですか?」


反応はない。


ウルガは慌てて水袋を取り出し、男の口元へ運ぶ。


少しずつ水を流し込むと、男は激しくむせ込みながら息を吹き返した。


「げほっ……!


 は、腹が……」


掠れた声で、男は食べ物を求めた。


見殺しにはできなかった。


ウルガは男を肩に担ぎ、宿へと連れ帰る。


「ちょっと、また厄介ごとかい?」


女将は呆れた顔で腕を組んだ。


「そんなの助けてたらキリがないよ」


そう言い捨てながらも、厨房へ向かう。


どうやら料理は出してくれるらしい。


しばらくして運ばれてきた温かい食事に、男は目の色を変えた。


無言で、夢中になってかき込む。


ウルガはその様子を見ながら、そっと財布の中身を気にした。


――まあ、なんとかなる。


食事を終え、ようやく落ち着いた男が深く頭を下げる。


「あんたは命の恩人だ!


 本当に助かったよ!」


「いえ……大したことは」


「おっと!


 自己紹介もまだだったな」


男は胸を張り、不敵に笑った。


「俺の名前は、エンキド・メドゥダリア」


一拍置いて、誇らしげに言い放つ。


「世界一の錬金術士だ!」




その瞬間だった。


「――はあっ!?」


背後から、女将の声が炸裂した。


振り返ると、腰に手を当てた女将が、呆れ顔で立っている。


「世界一の錬金術士様が、生き倒れねぇ笑」


鼻で笑い、エンキドの全身を上から下まで眺め回す。


「その世界一サマが、


 スラムで腹減らしてぶっ倒れてるって、どんな冗談さ」


「ち、違うんだこれは……」


「はいはい」


女将は一蹴した。


「ウルガ!


 アンタ、何を本気にしてんの!」


ウルガの頭を軽く叩く。


「こんなのに騙されちゃダメよ。


 どう見たって、胡散臭さ世界一じゃないか」


「え……でも……」


言い淀むウルガを見て、女将はため息をついた。


「まったく。


 アンタは本当に人が良すぎるんだから」


一方、エンキドはなぜか傷ついた様子もなく、ニヤリと笑う。


「信じるか信じないかは自由さ。


 ただ――」


エンキドは、ウルガの方をじっと見つめた。


「本物ってのは、


 いつだって最初は疑われるもんだ」


その言葉に、ウルガは妙な引っかかりを覚える。


――怪しいはずなのに。


――なのに、なぜだ。


我儘な玩具箱(トゥテソロが)、


ほんの一瞬だけ、静かに反応した。



後書き

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ついに新キャラが本格的に物語へ合流しました。


胡散臭いのか、本物なのか……今後の展開を楽しみにしていただけたら嬉しいです。


まだまだ物語は序盤。


遺跡ダンジョン、錬金術、そしてウルガの力も、ここから少しずつ輪郭を帯びていきます。


「続きが気になる」


「この先も読んでみたい」


そう感じていただけましたら、


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それでは、また次話で。


今後ともよろしくお願いします!

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