第16話 黄金槍と嘲笑

セレナが踏み込む。


距離は一瞬で詰まり、槍が空気を裂いた。


直線的な一突き。だが速い。


シュマカは軽く身を引き、その軌道を紙一重で外す。


「いいねェ」


余裕を含んだ声。


それでもセレナは止まらない。間合いを維持したまま、突き、薙ぎ、払う。連なる攻撃が逃げ場を削っていく。


「――嘲笑う太陽」


名を告げた瞬間、空間が歪んだ。


亜空間ホールが次々と開き、そこから黄金の槍が射出される。前後左右、上下すべて。完全な包囲。


「綺麗だな」


シュマカは感嘆するように呟き、投げキッスを送った。


「笑う大口女(ハッピーゲート)」


白い仮面の大女の顔が空間に浮かび上がり、大きく口を開く。


黄金の槍は次々と呑み込まれ、異次元の奥へ消えていった。


「……全部、か」


セレナは短く息を吐く。


乾いた音が鳴る。


指が弾かれた瞬間、魔力が抜け落ちる感覚が走った。


「刹那の幸福(ロストマリッジ)」


再び指が鳴る。


次の瞬間、黄金の槍が逆方向から現れた。自分の攻撃、自分の技。


セレナは迷わず槍を構え、正面から受け止める。


衝撃で地面が抉れたが、踏みとどまり、力を込める。


踏み込み。


槍先が、シュマカの頬を掠めた。


一筋の血。


「……へえ」


初めて、その笑みが変わる。


心底楽しそうに。


「君、凄くいいよォ」


子供たちが息を呑む。


セレナは構えを崩さない。互いに分かっていた。この場で決着はつかない。


太陽はまだ高く、道化師は幕を下ろさない。


そして、この戦場を遠くから感じ取る存在が確かにいた。




後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


少しでも「続きが気になる」「面白い」と感じていただけましたら、


ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


感想もとても嬉しいです。


次話もよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る