第15話 太陽と道化師
冒険者ギルドが、本気になった。
ギルドマスター、ヴァルド自らが指揮を執り、街と周辺地域を完全に封鎖。
常設依頼はすべて一時停止。
「遊びじゃねぇぞ」
その一言で場の空気が変わった。
動員されたのはギルドが誇る最高戦力――
ゴールドランク冒険者、三名。
三方向から街と森を洗うように捜索する。
「……嫌な予感がする」
セレナは森に入った瞬間、
足を止めた。
今まで感じたことのない感覚。
魔力が強いとか、
殺気が濃いとかそんな次元じゃない。
(……“いる”)
確信だった。
理由は分からない。
でも、体が先に理解している。
セレナは走った。
木々を縫い、地面を蹴り一直線に――森の奥へ。
そして開けた場所に出た瞬間。
「やあ」
満面の笑みがそこにあった。
派手な化粧。
異様な存在感。
鍛え抜かれた肉体。
――シュマカ・フォン・ディーベルト。
彼は両手を広げ、
まるで舞台役者のように一礼する。
「ようこそ。
今日のお客さんは、君かい?」
その背後には子供たち。
楽しそうに笑い拍手までしている。
「……あんたが、元凶ね」
セレナは槍を構えた。
「元凶?」
シュマカは首を傾げる。
「失礼だな。
僕達はただ、遊んでるだけさ」
言葉と同時に空間が歪んだ。
突如、真白な仮面を被った“大女の顔”が現れる。
異様なまでに大きな口。
笑いながらぱっくりと開く。
「――っ!」
「これ?
笑う大口女(ハッピーゲート)」
シュマカが投げキッスをすると、
仮面の口が嬉しそうに震えた。
「行きたい場所へ、
ひと口で」
その奥は異次元。
過去に訪れた場所なら世界のどこへでも繋がる。
(転移系……しかも制限付きとはいえ、
規格外……!)
セレナは即座に距離を取り『嘲笑う太陽(ソルビモック)』を発動させる。
だがその一瞬。
――指が鳴った。
乾いた音。
「な――」
体が、軽い。
軽すぎる。
魔力の流れが“抜けた”。
「刹那の幸福(ロストマリッジ)」
シュマカは楽しそうに言う。
「一回で、もらって。
二回で、返す」
彼がもう一度指を鳴らした。
次の瞬間。
セレナ自身の技が、
逆方向から迫ってきた。
「……っ!」
ギリギリで回避する。
(スキルを、奪って……返す!?)
ただし――
彼の表情に少しだけ不満が浮かんだ。
「でもさ」
肩をすくめる。
「変なのは、取り込めないんだよね」
神具のような、
“存在そのものが異質なもの”は対象外。
セレナは確信した。
(この男――)
トリプルだ。
そしてまだ一つを隠している。
「さあ」
シュマカは大袈裟に腕を広げ、
子供たちに向かって声を張り上げた。
「ショーの時間だよ!」
歓声が上がる。
セレナは槍を構え深く息を吸った。
ここから先は引き返せない。
太陽が照らす場所で道化師が笑う。
――戦いの幕は、
今まさに、上がろうとしていた。
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