第14話 気紛れな道化師
その男は、どこにも属さない。
国境に興味はなく、
組織に名を連ねる気もない。
誰かの正義を背負う理由もなければ、
悪を名乗る趣味もない。
ただ、自分が中心だと信じているだけ。
名前は
シュマカ・フォン・ディーベルト。
彫刻のように整った顔立ちに、
目元を強調する奇妙な化粧。
感情の読めない笑みを浮かべ、
彼は今日も気分良さそうに鼻歌を口ずさむ。
鍛え抜かれた肉体は、
戦士のそれでありながら、
どこか舞台役者のようでもあった。
「さて、と……」
森の奥人目につかない廃屋。
そこに集まっているのは子供たちだった。
街や村から姿を消した噂の子供たち。
だが、彼らは怯えていない。
泣いてもいない。
床に広げられた菓子。
新品同様の服。
見たこともない玩具。
「ねえ、次はなにする?」
「もっと甘いのがいい!」
「はいはい、落ち着いて」
シュマカは楽しそうに笑う。
「順番だよ。
ほら、君はこれ」
子供の頭を軽く撫でる。
その仕草に、迷いはない。
彼にとってこれは、
“世話”でも“誘拐”でもなかった。
ただ――
そうしたかったから、そうしているだけ。
「外に帰りたい?」
問いかけはする。
だが、答えを求めてはいない。
子供たちがここにいる理由に、
意味を持たせる気がないからだ。
「まあ、飽きたら帰ればいいさ」
そう言って、肩をすくめる。
「今は楽しいだろ?」
彼は嘘をつかない。
同時に、真実にも執着しない。
「正義とか悪とか、
よく分からないんだよね」
くるりと一回転し、
指を鳴らす。
子供の一人が、
操られるように立ち上がる。
糸は見えない。
命令もない。
「ほら、できる」
それは支配でも洗脳でもない。
彼にとっては、
“ちょっとした芸”に過ぎない。
圧倒的な戦闘センス。
異常な適応力。
噂される通り能力だけならブラックランク級。
けれど本人に誇る気も、隠す気もない。
「……ああ」
ふと、手を止める。
「最近、変な感じがするな」
胸の奥に、
微かなざらつき。
名前も知らない。
仕組みも理解していない。
ただ、“面白そうな何か”が近づいている。
「まあ、いいや」
すぐに興味を失い、
再び子供たちに向き直る。
「今日は何して遊ぶ?」
無邪気な声。
屈託のない笑顔。
彼は誰かを不幸にしている自覚すらない。
ただ気まぐれに今日も遊んでいるだけだった。
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