第13話 不愉快な不可解
前書き
少しだけ、ほんの少しだけ動きだします
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最初は、噂だった。
「また子供が消えたらしい」
「夜に外へ出たわけでもないのに」
「神隠しじゃないか?」
酒場の片隅で、
そんな話が囁かれるようになったのは、
ほんの数日前のことだ。
だが、噂は噂のまま終わらなかった。
消える。また消える。
次々と。
狙われるのは決まって、子供。
年端もいかない孤児や、
下町の職人の子、
商家の末っ子。
共通点は――
誰にも、見られていないこと。
「……偶然じゃない」
冒険者ギルドの空気が目に見えて重くなった。
ついに近隣一帯を治める伯爵家が動き、
正式な要請がギルドへ届いた。
内容は単純だ。
だが、重い。
――原因の特定と排除。
――被害の拡大防止。
そして何より、
子供を取り戻せ。
「ギルマスが出る」
その一言で、
ギルドは騒然となった。
受付の奥、
普段は滅多に姿を見せない執務室から、
大柄な男が現れる。
白髪交じりの短髪。
鋭い眼光。
鎧の上からでも分かる、歴戦の体。
冒険者ギルド・ギルドマスター
――ヴァルド。
「遊びは終わりだ」
その低い声だけで、
場が静まり返った。
「これは噂じゃない。
計画的な犯行だ」
彼は地図を広げ、
消失地点に印を付けていく。
「範囲は拡大している。
犯人は移動しているか、
もしくは――」
一瞬、言葉を切る。
「“門”を使っている可能性がある」
ざわり、と空気が揺れた。
転移。
召喚。
禁忌に近い術。
「ゴールド以上を中心に、
即時対応班を編成する。
新人は後方待機だ」
その言葉に、
ウルガは静かに拳を握った。
――子供ばかり、か。
森で出会った、
あのスラムの子供たちの顔がよぎる。
(……許せないな)
だが、まだだ。
自分は、まだこの場の主役じゃない。
そのことを、
ウルガ自身が一番分かっていた。
「ウルガ」
声をかけてきたのは、セレナだった。
いつもの軽さはなく、
珍しく真剣な表情だ。
「無茶はしないで。
今回の事件凄く嫌な匂いがするわ」
「……はい」
短く答える。
その瞬間。
ウルガの胸の奥で、
何かが微かに軋んだ。
――呼ばれている。
理由は分からない。
でも確かに。
我儘な玩具箱(トゥテソロ)が、
まだ開かれていないのに、
存在感だけを主張してくる。
(……今じゃない)
そう、心の中で言い聞かせる。
この事件は、
まだ“入口”だ。
だが――
誰かが一線を越えた時。
その時は…
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