side セレナ短編 「太陽は、まだ笑わない」
森は静かだった。
静かすぎて、少し嫌な感じがする。
ゴブリン討伐。
常設依頼。
肩慣らしにはちょうどいい。
(……でも、新人が来てるって話だったわね)
私は先に動いた。
『嘲笑う太陽(ソルビモック)』。
亜空間が花開く。
黄金の槍が四方八方から降り注ぎ、
ゴブリンは悲鳴すら上げられずに沈黙した。
自分でも思う。
派手すぎる。
でも――
これは“二つ持ち(ダブル)”の私が、
手を抜かない時のやり方だ。
「……うわ」
声がした。
振り返ると、
少し離れた場所に少年が立っていた。
腰は引けていない。
でも、戦闘を見慣れている目でもない。
(初心者。でも――)
目が、違う。
強さを見て、怖がるより先に「測っている」。
「名前は?」
「ウルガです」
末っ子。
騎士爵家。
冒険者登録したばかり。
(なるほど)
守られてきた子。
でも、甘やかされてはいない。
そんな子が、私が足を滑らせた瞬間――
「今の、油断しすぎです」
……言うじゃない。
思わず吹き出した。
強さに媚びない子は、嫌いじゃない。
でも。
それだけじゃなかった。
彼の中に、
“妙な空白”がある。
魔力が少ないわけじゃない。
むしろ、流れは異様に整っている。
なのに――
核心が、見えない。
(……これ、スキル?)
いや、違う。
スキルにしては、
輪郭がない。
まるで、
蓋をされた何か。
(あー……これは)
私のもう一つの能力が、
“何かいる”と囁いている。
でも、名前も形も分からない。
ただ、でかい。
「ねえウルガ」
「はい?」
「無理はしないこと。
森は、舐めた新人に容赦ないわよ」
冗談めかして言うと、
彼は素直に頷いた。
……可愛い。
私は決めた。
この子は、
まだ太陽に晒すべきじゃない。
だから今は、
私が前に出る。
「死にそうになったら呼びなさい」
軽口で十分。
だってきっと――
本当に恐ろしいのは、
私じゃない。
この少年の“中身”だ。
それが目を覚ました時、
世界は否応なく知ることになる。
太陽は、
その時まで、笑わなくていい。
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