第3話 星屑の森にて
風斗視点の回
ムーンさんって……ゲーム内では女性キャラだけど、リアルでも女性なのだろうか。
たまに、オッサンなのに女性キャラを使う人もいる。
……いや、きっと違う。
きっと、素直で。
少し不器用で。
可憐で、優しい人に決まっている。
そんな事を考えていると——
「おーい」
「ウインドさーん」
「もしもーし」
何度も呼びかける声で、ようやく我に返った。
どうやら、Aランクモンスターを倒したあと、完全に意識が飛んでいたらしい。
「ごめん、ちょっと離れてた」
ムーンさんのことを考えていた、とは言えず、無難な言い訳を口にした。
そのままモンスターを倒しながら、目的地である森へと向かう。
"ピロンッ"
「こんばんわっす」
ログインしてきたのは、武闘家のブロッサムさんだった。
青いグローブがよく似合う、大柄で頼れるプレイヤーだ。
「過去ログ見てくるっすね」
そう言って黙り込む。
ゲーム慣れしている彼は、新規の割にレベルも高い。
「すごいっすね。ジャイアントバファロー、ほぼ一人で倒すなんて」
「ムーンさんが居てくれたからだよ。いい位置が取れた」
偶然ではあるが、嘘ではない。
彼女の魔法がなければ、あの状況は作れなかった。
「いえ……私なんか、邪魔しただけで」
照れたように、少し視線を逸らすムーンさん。
そういうところが——本当にずるい。
やがて昨日引き返した、森の入り口へと到着した。
ギルドメンバーのグリーンさん、ライトさんもここから加わる。
星屑の森。
突如、暗闇に包まれた妖精の里を救うための手がかりが眠る場所。
一歩、足を踏み入れた瞬間、不思議な感覚に包まれた。
鬱蒼と生い茂る木々。
木漏れ日が揺れ、風に合わせて草木が囁く。
まるで、本当に森の中に立っているようだった。
「来たわよ」
グリーンさんの声と同時に、蜂型のモンスターが三体現れる。
「スターダストキラービー。毒針に注意して」
三体は円を描くように、互いをカバーし合っている。
明らかに連携型だ。
「距離を取らないと厄介だな」
ライトさんが冷静に分析する。
「ボクは後衛に回るっす」
ブロッサムさんはグリーンさんの前に立った。
判断が早い。
「ムーンさんは、距離を取って。グリーンさんの動きを見て援護を」
「は、はい!」
少し不安そうな返事。
……大丈夫かな。
そう思った瞬間、オレは自然とムーンさんの前に立っていた。
先に動いたのはモンスターだった。
「剣技・サイレントスラッシュ!」
ライトさんの一撃で、一体が真っ二つになる。
「フレイムアロー!」
グリーンさんの魔法は躱された。
「ファイアアロー!」
ムーンさんの魔法が、続けて放たれる。
ボンッ
命中。
「や、やった!」
しかし倒しきれない。
毒針を向け、ムーンさんへと急降下してくる。
「え——」
「剣技・サイクロンソード!」
上下左右からの連撃。
オレの剣が、蜂型モンスターを粉砕した。
「よしっ」
やはり防御力は低い。
その後、グリーンさんが最後の一体を仕留め、戦闘は終わった。
「パパパパーン♪」
レベルアップ音が鳴る。
「え……私、あまり何も出来てないのに」
「頑張ったよ、ムーンさん」
皆が口々に祝福する。
オレも、なぜか自分のことのように嬉しかった。
「ウインドさん、さっきはありがとう」
ムーンさんはそう言って、こちらを見上げる。
その笑顔が、
星屑の森の光よりも、やけに眩しく見えた。
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