────────第2話 門番の証言 (2)

「いいか若造、王都に保管されている公式の遠征記録なんてものは、すべて出鱈目だ」


 老人は今、鋭い眼差しで私を射抜いた。

 彼は、革の表紙が剥がれかけた一冊の小さな手帳を取り出した。当時任務に就いていた兵站監の私的な手記だ。


「そこには、彼らが禁忌の領域からの脅威を退けた英雄として帰還した、と記されている。だが、この一行を見てみろ……」


 彼は、震える手で書かれた一文を指差した。『彼らは帰ってきた。だが、その魂はあそこに置いてきてしまった』


────────実際のところ、再び門をくぐった時の彼らはどのような状態だったのか?


「崩壊していた。それが最も適切な言葉だ。いつも仲間を気遣っていたラヴィエルが先頭を歩いていた。だが、その目は……死んでいたよ。かつての絶対的な静寂など、そこにはなかった。彼は雪の上で剣を引きずり、悲痛な摩擦音を立てていた。まるで、握るには重すぎ、離すには怖すぎる何かを抱えているようだった」


────────他の者たちはどうだったのか? 彼らは切り離せないパーティーだったはずだが。


「そこが悲劇なのだ。嵐の中の灯火だったエリナ・モルヴェイル……あの豪華な魔法のローブは、ぼろぼろに裂け、乾いた血にまみれていた。いつも顎を引いて毅然と歩く彼女が、あの日はずっと俯き、イセレーヌの袖を固く握りしめていた。そしてイセレーヌ……あのエルフは、一晩で千年も老け込んだかのようだった。優雅さは消え失せ、暗闇から何かが追いかけてくるのを恐れるかのように、何度も何度も背後の道を見やっていた」


────────一人が足りない。ハーフエルフの青年、ヴェイル・アッシェンだ。彼はその時、どこにいたのか?


 老人は長い沈黙に陥った。

 息の詰まるような静寂が、詰所を包み込む。


「ヴェイルは自分の足で歩いてはいなかった。ラヴィエルとエリナが交代で彼を担いでいたのだ。生きてはいた。ああ、確かに心臓は動いていたよ。だが、矢筒の最後の矢は折れ、彼の心も同様に砕けていた。彼らは『全員で帰ってきた』と言い張ったが、あの日彼らを見た者なら誰の目にも明らかだった。何かが永遠に奪い去られてしまったことがな。彼らはもう四人ではなかった。砕け散った鏡の、四つの破片に過ぎなかったのだ」


────────人々は、彼らが最後の一瞬まで抗い続けたと言っている。その言葉の真意は何なのか?


「世間は、敵を倒すまで勇敢に戦い抜いたという意味だと思っている。だが、あの日の彼らを見た私にとっては違う。『最後の一瞬』とは、敵を倒す瞬間のことではない。人間であり続けるか、それとも友を連れ帰るために人間性を捨てるか……その選択を迫られる瞬間のことだ」


 老人は手帳を閉じた。


「彼らは『共に帰る』という約束を果たした。だが、その約束のために支払った代償は……すべてだった。ラヴィエルはあの日以来、二度と剣を手にしなかった。エリナは一族の塔に引きこもった。そしてイセレーヌは? 彼女は森へと消えた。全員で『完遂』するために、禁忌の領域であの日、自分たちが一体何をしたのか。その記憶から逃れるようにな」


────────では、パーティー全員で無事に帰るのは、簡単なことだろうか?


「酷く困難なことだ、若造。友の身体を連れ帰るために、自分の魂を戦場に置いてこなければならない時がある。それが彼らの戦いの、真の意味だった。忠義が呪いへと変わってしまった、そんな物語なのだよ」

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