最後の一瞬まで抗い続けた、四人の親友たちの物語。

ミハリ | カクヨム

────────フォーフレンズについて

────────第1話 門番の証言 (1)

「パーティー全員で無事に帰るのは、簡単なことだろうか?」


 その問いに、目の前の老人は絶句した。

 彼はアロキサリア王国の国境を守るベテランの門番であり、この三十年、数千もの冒険者たちの門出と帰還を見守ってきた男だ。

 老人はビールを啜り、薄く雪の積もった道筋を虚ろな目で見つめた。


「残酷な問いだな、若造」彼は呟いた。「よりによって、彼らのことを聞くとは」


 彼ら。 冒険者ギルドの新人たちにとって、かつて希望の象徴であった四人の親友たち。ラヴィエル、ヴェイル、エリナ、そしてイセレーヌ。


「あの日を覚えている。彼らが最後の任務へと出発した日のことを。英雄のような過剰な覇気があったわけじゃない。黄金で買える最高級の装備を身につけてはいたが、どこかピクニックにでも行く親友同士のように見えたよ」


 老人は語り始めた。彼に言わせれば、あの四人の関係は契約で結ばれただけの仕事仲間などではなかった。


「ラヴィエル・グランツ……あいつはグループの心臓だった。おそらく、最強ではなかっただろう。だが、並の騎士には持ち得ない『絶対的な静寂』を持っていた。門を通る前、あいつがヴェイルの靴紐を確認してやっているのを見たよ。ハーフエルフのヴェイルは、いつも弓を手に落ち着かない様子だったが、ラヴィエルが肩を叩くと、すぐに背筋を伸ばしたものだ」


 そして、エリナ・モルヴェイル。高貴なるアロキサリア王家の血を引く、侯爵家の令嬢。 本来ならば王宮の柔らかな椅子に座っているべきであり、辺境の泥で魔法のローブを汚すような存在ではないはずだった。


「エリナ様は……嵐の中の灯火のようなお方だった。一度聞いたことがある。なぜ高貴な身分でありながら、魔物の巣窟で命を懸けるのかと。答えは何だったと思う? 彼女は物静かなエルフの少女、イセレーヌを指差し、それから二人の青年を見た。そしてこう言ったんだ。『ここでは、私は侯爵令嬢ではない。ただの、歩く家の一部なの』とな。彼女にとって、あのパーティーこそが帰るべき家だったんだ」


 イセレーヌ・アトラ自身は、最も掴みどころのない存在だった。

 エルフとして長い寿命を持ちながら、彼女はその貴重な時間を、瞬きのように短い命しか持たない人間たちと共に過ごすことに決めたのだ。


「イセレーヌはいつも最後尾を歩いていた。その目は常に仲間の背中を追っていたよ。エルフは冷徹だと言う連中もいるが、私は見た。夜風が吹いた時、ラヴィエルが寒くないようにと、彼女が静かに小さな守護魔法を唱えていたのをな。彼らは、普通の冒険者には理解できないやり方で、互いを守り合っていた」


 門番は一瞬、言葉を切った。震える手でグラスを置く。


「『共に帰る』という言葉。それは彼らが故郷の村にいた幼い頃から抱き続けてきた約束だった。冒険者の世界では、生きて帰るだけでも奇跡だ。だが彼らは、ただ生き延びることを望んだのではない。全員で。四人で。一人も欠けることなく、だ」


 しかし、この世界は寝物語の童話ほど美しくはない。禁忌の領域への遠征が、すべてを変えてしまった。


「何が起きたかだと? 中での詳細は分からん。だが、数週間後に再びこの門が開いた時のことは覚えている。空の色は灰に染まり、戻ってきた彼らの顔もまた、同じ色をしていた」


 彼は深く息を吸い込んだ。その瞳の奥で、古い傷跡が再び開いたかのようだった。


「ただ重苦しい足音だけが響いていた。笑い声も、温かな挨拶もない。その時、悟ったよ。『共に帰る』という約束こそが、人間が背負うにはあまりに重すぎる荷だったのだと」

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