14.ヴィドフニル
降り注ぐ光が、無差別に地表を破壊する音が聞こえる。
無差別ということは、遮蔽物で時間を稼ぐことができるということだ。
作戦開始前、レミアと交わした対
「長射程の光線攻撃なら、一番簡単な対処は遮蔽を使って隠れることだろ」
「だったら……地上の森を進むの?」
「だな」
光線を阻む遮蔽として一番分かりやすいのは、森だ。
思考リンクでレミアが作り上げた
「でもそうなると、主力級とぶつかりそうだよね」
「だとしてもそうするのがベストだ」
俺の生やした森の中に、レミアが暗い影を発生させる。が、俺はアルギアを突っ込ませてそのイメージを焼き払う。
「
「そうだね。
「慣れてるだけだからなあれ」
さすがに上下二方向からの、しかも片方は
「森を抜けて接近して、
「
「隠し持ってる能力が気になる。直線ビームの弱点を補うとしたら、近距離への魔力放出とかかと思ってるんだが、集樹を攻撃してる最中にそれをやられて、状況が混乱するのは避けたい」
「……聖宣種を見逃すかもしれないから?」
「そうだ」
アルギアの攻撃を受けた
魔力は大きくともサイズは小さい聖宣種に逃げられると、後から見つけ出すのは困難だ。
「だから、
「前衛部隊が4機だから……揃って行ければ理想だね」
――現在。
戦局は想定通りに推移した。
頭上から降り注ぐ光線は、目論見通り鬱蒼と茂った森が阻んでくれている。その上、
(ここまでが良い点だ。困った点は……)
(右前方、
レミアが警告して少し、弾けるような爆発音がして、右方の樹木が数本割れ飛んだ。
(……困った点は、エリオットたちと合流できていないことだ。
木々の合間をジグザグに飛び、
深々と
(……先行して
爆散する
(そうする? 確かに
(行けると思うか?)
問うてから、あまり俺らしくないことを考えたな、と思った。
レミアの返事が返ってくるのにも、まばたくような時間を要した。
(行けるよ)
だが、レミアは普段通りの調子で返す。
(ファレン、遠くまで翔んで行くんでしょ)
(……)
その囁きを、じっくりと受け止める。
(…………改めて聞くと、結構小っ恥ずかしいな)
(私はいいと思うよ)
(言ってろ。……よし)
息を吸い、シートに深く座り直す。
「仕掛けるぞ」
* *
ヴィスカムは
同士討ちしない程度の知能が元からある以上、それは驚くべき事実でもない。
重要なのは、
(
ここまで接近すると、樹衛種以外は烏合の衆であることが大体だ。あちらとしても、主力級を
(座標渡す。思ったより飛ぶの速い)
(
(でも、今まで動いてなかった)
(ああ)
だがそうはせず、俺が接近することで初めて巣より飛び立った。
恐らくその機動力には限界がある。
(初撃で一発かます。予備装甲、八割方吹っ飛ばすかもしれん)
(大丈夫?)
(ここまで温存してきたしな。それに、派手にやった方が合図になる。俺一人じゃ無理だ)
ここまで止まることなく速度を上げてきた。風向きを感じ、重力を振り払い、碧色の翅より炎を噴かす。
(
(……ビーム来る!)
「交戦開始!」
瞬間、黄金の姿を目撃する。
いつか何かの本で読んだ、クジャクという鳥を思い出した。
白い枝と明るいグリーンの葉で編まれた、放射線状に広がる六翼。
杉の葉のような刺々しい葉束の
垂れ下がる柔らかい枝がまとまった尾羽。
そんな
ぴんと立てられた翼の三枚から、太い光条が放たれた。
すべて
(目ぇ回すなよレミア!)
(大丈夫っ……)
揺るぎない生態。
ヴィスカムは
計算通り。
そしてこれは劇的な成果ではなく『前提』だ。
(魔力反応っ……もう一、いや二本!)
「だろうな!」
普通にこれを回避するならば、大きく旋回する必要がある。たとえ奴との距離が離れても、それが安全策だ。
そうはしない。
最速で叩き込む。
(射線予測送る!)
奴の攻撃直前、レミアが最高の座標情報を共有してくれた。最終的な軌道を決定。
圧壊光線が放たれる。
棒立ちでは
背の翅から炎を噴き出し、僅かな出力差と体勢だけで方角を調整する。日和って速度を落とせば、
バギギギギ――ッ!
後方の地表が光線に破壊される音がした。ほとんど同時に、予備装甲に光線が触れ、派手な破砕音と共に容易く散っていく。
(だが……)
左腕、左脚。右脚。予備装甲の下の
(……届く!)
ザ ボウッ!!
光線を切り抜け、右手の針で
それだけでは止まらない。
キイィ――
針を突き刺すと同時、甲高い音と共に炎が逆流する。
赤撃、成立。
ドオオ――――ン!!
内部より赤い爆炎が迸り、先程まで光線を放っていた翼の一枚が、爆ぜて落ちる。
だがその爆発は、俺がこの場に到達したというサインにもなるだろう。ついでに光線の発生源も一つ落とせたのだから接近もしやすく――
(魔力反応っ……ファレン、翼が!)
「こいつは……!」
あいにく、俺の目論見は一つ外れた。
今切り落としたばかりの翼が見る間に内側から生え変わり、さらに炎の名残も消えている。
その間、尾羽が強く輝き、無数に生えたうちの一本が色褪せ、抜け落ちた。
すなわちこれが、奴の尾羽の魔力の正体。
「……高速再生能力だ! …………エリオット!!」
『見りゃあ分かるってんだよ!!』
俺が光線を引き付けている間に、木々の下から飛び出した機影があった。
アルギア・
奴は俺ほどではない速度で飛び続け、俺が一撃を食らわせた間にもう音声会話ができる距離に迫ってくれていた。
『ちょっと……! もう予備装甲ほとんど残ってないじゃない!』
「おかげで相手の隠し能力も見れたんだ。感謝しろよ」
「ティルチェ、他の2機は?」
『森の下で主力級を相手してもらってる。だから下の方は気にしなくて大丈夫!』
『てなわけで、今日はオレとオマエのダブル
「言ってろよ。どう攻める?」
『あれはいかにも尾羽を切れば何とかなりそうだが……』
『……どうかな。弱点としてはあからさますぎでしょ。試しても良いけど』
「いや、クサいってのは俺も同意見だ」
針で奴を切りつけた瞬間、外見から想像した感覚と実際の手応えに差があった。
全身を覆う金色の光が、バリアのようにも働いているのだろう。相手の命が尾羽である以上、そこに強力なバリアを集中させていてもおかしくはない。
柔らかな構造は、針で狙いづらいという側面もある。そういう部位を攻めて空振りとなるのはつらいところだ。
であれば、それよりも確実な手段が、
「正面突破で行こう」
『……いいね。俺もそう言おうとしてた。花火はハデな方が良い』
『ってことは……三乗赤撃で行くの?』
「ああ――
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