幸福税
政府は新しい制度を導入した。 その名も 「幸福税」。
「国民の幸福度が高いということは、その者にゆとりがあるということ。だから幸福には税金をかけるべきだ」 という、どこかで聞いたような理屈が理由らしい。
幸福度は、腕に装着された小型センサーで自動測定される。 楽しいと感じれば数値が上がり、税額も上がる。 国民はみな、笑うことに慎重になった。
サラリーマンの黒田は、ある日ふと気づいた。 「幸福を感じなければ、税金を払わなくて済むんじゃないか」
それ以来、黒田は徹底的に“無感情”を心がけた。 好きだったコメディ番組も見ない。 家族との会話も最低限。 休日も何もせず、ただぼんやりと過ごす。
センサーの数値はみるみる下がり、税金はほぼゼロになった。
「よし、これで節約できる」
しかし、ある朝。 黒田の家に役所の職員がやってきた。
「黒田さんですね。あなたは幸福度が低すぎます。 国の平均を著しく下回っているため、是正措置が必要です」
「え、幸福が低いとダメなんですか」
「当然です。幸福な国を作るのが我々の目的ですから」
黒田は強制的に“幸福向上プログラム”に参加させられた。 毎日、笑顔の練習。 楽しい映像の視聴。 ポジティブな言葉を繰り返す訓練。
センサーの数値は上昇し、黒田は再び税金を払うことになった。
「……結局、どっちに転んでも損じゃないか」
ぼやく黒田の腕で、センサーがピッと光った。
《不満度の上昇を検知 追加課税を実施します》
黒田は思わず天を仰いだ。 その瞬間、センサーがさらに明るく光る。
《皮肉反応を検知 幸福税を加算します》
黒田は悟った。 この国で一番幸福なのは、きっと――
税金を集めている側だ。
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