月曜 君の名前は
「ごめんなさい! 時間遅れて、そして昨日は無理やりに働けなんて言って」
「いやいや、お姉さんが気にすることないから! そして遅れてないから!」
退勤して夕食を取って明日の準備をしてから、昨日と同じ二十二時、同じ湖の橋の上に向かった。彼はもう来ており、今日は白ティーシャツの上にグレーのパーカーを羽織っていた。待たせてしまったのも申し訳なく、姿が見えてからすぐに走り謝罪した。
「それよりお姉さんは寒くない?」
「あ」
時間ギリギリで来てしまったため、羽織るものを忘れていた。だけど別に寒くはないし、なにより年下に迷惑をかけるわけにはいかない。
「いや別に私は……ヘックシ!」
ヤバい。花粉症の薬を飲み忘れた。
「ほら言ったこっちゃない。これ着てよ」
寒くはないんだけどな。でも、温もりが心地よい。
「ありがとう、ございます……」
パーカーを羽織り、橋の柵に肘をかけた。
「それにお姉さん。俺、頑張って働くことにしたんだ! 昨日のお姉さんの話を聞いて、俺も頑張りたいって思ったから。今日ネットで応募して、土曜に面接受けるよ」
「……!」
そっか。そう言ってくれるのなら、なんか嬉しいな。
「ありがとうございます。えっと、」
そう言えばこの人の名前、何なんだろう? 私はずっとお姉さん、って言われていたからな……。
「あの! お名前、教えてもらってもいいですか?」
いやいやいや、聞くの急すぎるでしょう!!
「ハハッ! やっぱ面白いねお姉さん」
「なっ……! バカにしてる?」
つい大声を出してしまった。真夜中なのに何やってるんだろう。
「そんなことないよ。俺、佐藤(さとう)謙一郎(けんいちろう)。お姉さんは?」
あ、そっか。私も名乗ってなかった。
「通里(とおり)ハナって言います。ハナでいいですよ」
「オッケ、ハナさん。俺も謙一郎でいいよ」
「謙一郎、くん?」
「なんかいいな……」
「え?」
一瞬、謙一郎くんが照れたような……? 気のせいか。
「いや、何でもない。名前聞けて良かったってこと。それよりそろそろ夜も遅いし、明日またここで。じゃあね」
そう言って謙一郎くんは、昨日と同じように帰っていった。
「あ、パーカー返すの忘れた」
明日返そう。
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