第10話 親友と親友の友達
俺は8月の終わりにまだ暑さの残る東京に戻ってきた。
親戚やら親父の会社の社員さんやら取引先やらとの応対が、向こうに行く前は面倒だなあと思っていたけど、そんなのは面倒でも何でもなく、「特定の従妹」とか「特定の親友」への対応の方が大変とは思わなかった。
どうにか治めたけど、これからも続くのかなあ・・・。
こっちは落ち着けていいや、とか思っていたら、9月に入って早々に、
「隆太君、インターンシップの情報教えてあげる。」
とか、電話でももか先輩が言ってきた。
ちょっと面倒臭そうな予感がしたので、
「そんな、わざわざお時間をいただかなくても、後期が始まったら・・・」
と言いかけたら、
「何、君、私の貴重な情報を何だと思ってるの?それとも私とはお話ししたくないの?そうなのね!もういい!ふん!」
とか、拗ねてしまったので、俺は必死にももか先輩をなだめて、ようやく落ち着いたと思ったら、ももか先輩、調子に乗りやがったみたいで、さらに咲ちゃんも同席させるようにとかぬかしやがる始末。
でも、当然逆らえるはずもなく、俺は、先約があるとかブチブチ言ってる咲ちゃんをなんとか説得して、それをセッティングするのに夜中までかかってしまった。
なんでこうなるの?
まあ、通話だと俺の表情とか見えないから誤解されても仕方ないけど、いや、そもそも、先輩って俺のことよく見誤るから、直接会ってたとしても同じ結果か。
さらに、ももか先輩は、有紗ちゃんにも聞かせるって聞かなかったんだけど、有紗ちゃんは1年生ですし、まだ早いですよって必死に説得して、納得してもらったんだ。だって、俺からどうやって連絡していいのかわからんし。
いや、連絡先のアドレスくらいは知ってますけどっていうか、スマホに格納されてますけど、こっちから女子にどんなふうに連絡していいかわからないんだよ。美鈴とかは別として。
でも、当日、どこから聞きつけたのか、有紗ちゃんはしっかり俺の横にいて、ももか先輩の話を熱心に聞いていた。
ももか先輩、半月以上のインターンシップだったみたいで、少なくとも若手社員の男性1人2人ぐらいは一生を変えさせたんじゃないかとひそかに期待、じゃなくてちょっと心配していたのだが、ももか先輩の話の中には、そういった話は無く、なんというか、ちゃんと社会人っぽく過ごせたようで、俺はちょっぴり残念に思うとともに、安堵もした。
何が残念かって?だって、それだと俺が一応敬愛するももか先輩じゃないような気がしたから。でも、それでよかったんだと思う。一生あれだと、いろいろ問題あるし。
それで、咲ちゃんは、ももか先輩の話にかなり興味があったようで、熱心に質問したりしてたけど、ももか先輩は、ちゃんと質問に的確に答えていて、俺は、ももか先輩って本当は優秀な学生なのでは?俺に見せている姿は、仮の姿なのか?と思ったりした。
いや、決して、ももか先輩のことをバカ女とかって思ってるわけじゃないぞ。
俺たちは、ももか先輩の話を大学のカフェテリアで聞いていたのだが、当然、流して聞くような安直な対応は許されるはずもなく、俺は、緊張感を保ったまま、全能力を活用して対応したものだから、話が終わるころには、正直ヘロヘロだった。
幸い、ももか先輩は、他に用事があったらしく、後輩にためになる話を聞かせてあげたという満足感もあったのか、ご満悦の表情で、
「ごめんね、みんな。これから行かなくてはいけないところがあるから、これで失礼するね。」と、去っていった。
そうなると、所詮はももか先輩という柱で成り立っている「4人のお友達」なので、残された3人は、当然のごとくバラバラになってそれぞれの道に進んでしまうのだ。
咲ちゃんは、当然のこと、最近は構ってくれる男子がいるらしい有紗ちゃんも、
「隆太さん、ごめんなさい。最近、私によく連絡をくれる人がいて、すごくすっごぉくうざいんですけどぉ、でもお断りできなくてですね、今日もこれからお会いしないわけにはいかなくなってしまって、だから、ご一緒できなくて・・・」
とか、どう見てもお前、そいつと会うの、期待一杯、胸いっぱいの表情じゃねえかと思いつつも、
「いや、それは残念だな、でもさ、後期が始まったら、きっと機会もあるよ。そんときはよろしくな。名残惜しいけど、今日は、ここでお別れしよう。」
とか、機会なんてねーよ、そもそも名残すら存在しねえんだよ、という気持ちを微塵も見せず、にこやかに俺が言うと、
「隆太さん、いつもわかっていただいて、ありがとうございます。失礼します。」
と、足取り軽く去っていく。
それを見送っていると、咲ちゃんがジト目で俺を睨んでいる。
「何だよ、何もしてねえだろ?」
咲ちゃんは、これ見よがしに溜息を吐くと、
「あんたさあ、本質的にクズ男そのものの素質があるよね。いや、何もしてませんっていうのもわかってるけど、女の子を軽く見ないほうがいいよ。刺されたりしないでよ、頼むから。一緒に卒業するんだからね、私たち。約束だよ。」
とか言ってきたので、よくわからなかったのだが、俺の対応に問題があるって言いたいのはわかったので、ちょっと考え込んでしまった。
「・・あんたはさあ、それでいて、妙に生真面目だからねえ。本当のクズだったら、私もあんたなんか刺されちゃえって、何も言わないんだけど。そうさせてくれないところがあるんだよね、たちが悪いよ、全くもう。」
今度は、咲ちゃん、ご機嫌が斜めになってきた。
「ごめん、何が悪いかわからないけど、咲ちゃんにはいつも助けてもらってるのはわかるよ。ありがとう。」
「全くあんたは。どういたしまして。でもさ、有紗ちゃん、ほんとはあんたの・・、いや、もういい。」
何か言葉を言おうかと思ったが、火に油になるような気がしたので、俺は黙ってしまった。
「本当に君はわかりやすいよね。元気出しなよ。女の子とヘラヘラしてる君の姿も悪くないし。落ち込んだら、話位なら聞いてあげるし。じゃあね。」
「おう、またな。」
というのが精いっぱいだった。
いや、わかってるよ。
でも、どうしようもないんだよ。もう、恋愛なんて、したくないんだよ。
このままじゃ、いけないのかよ。
俺は、疲労感を覚えて、カフェテリアのテーブルに突っ伏してみた。
そんなことぐらいで済むものではないけれど。
と、俺がぐたーっとしているところに、
「おい、高階、生きてるか?」
と声が。おお、その声は、丸山善次郎!
俺は起き上がり、
「丸山!」
「元気にしてたか、ハーレムの親父。」
「何でハーレムなんだよ、そもそも親父じゃねえぞ、せめて兄貴にしてくれよ。久しぶりだな。お前こそ元気そうでなにより。」
丸山は、ちょっと考えていたみたいだが、言った。
「久しぶりに、ちょっと話さないか?」
俺たちは、いつもの商店街の喫茶店に移動した。
「今日はガラナじゃないんだな」
「いや、ちょっと苦みを味わいたくってな。」
「なら、何でアイスコーヒーにたっぷりクリームやらシロップやら入れてんだよ、相変わらずだなお前。発言と行動がまるで一致しない。」
確かに、クリームもシロップも多めではあるが。
「ほのかな苦みがいいんだよ、完全一致だろが。」
「あん?理系に論理で対抗するのか?論破してやる。」
こいつの「論理」も大概だけどな。まあ、似た者同士的なとこだな。
「あはは、ほんまもんの理系にはかなわない。」
とりあえず、元気出てきた。
「お前にはさ、女難の相が現れてるから、話を聞いてやろうと思ったんだけど。夏休み中にいろいろあったんじゃないのか?」
おお、さすが親友。よくわかっている。
「帰省したら、従妹対応、女友達対応で、疲労困憊。戻ってきたら、さっきみたいに、サークルの女子対応で、この状態だよ。」
「わはは、一部で有名な高階ハーレム、夏休み中も開業かよって思って見てたけど、今日は何か普通の感じだったな。」
え、有名なのか?そんなにあの4人で学内でつるんだかなあ。
「俺よりすごい奴が、この大学にはごろごろしてるじゃないか。俺なんて末席の末席の末席程度だよ。」
「そこまで末端とは思えないなあ。末席×1ぐらいにはなれるんじゃねえの?まあどうでもいいけどさ。でもさあ、いつも水準以上の女子に囲まれているお前のこと、ひそかに崇め奉ってる奴もいるんだぞ。」
俺は教祖かよ。まあ、事情知らない奴から見たら、そうなのかもな。
「でも、あれは、多分俺以外だと、1日で人生変わるよ。多分。」
ももか先輩の真の破壊力を侮ってはいけないのだ。
「何となくわかるよ。どうせ恋愛はご無用っていうような関係なんだろ?それでいて、女子の破壊力半端ないみたいな。勘違いしたやつは瞬時に墓場送りみたいな。」
何となくとはいえ、すげー的確な分析。やっぱ真の理系はすごい。
「ああ、知ってるだけで、2人の先輩の人生が変わってしまった。」
「あのすげー可愛い人か、最初に帰った人。」
「さすがの観察力だな。あの先輩と親密なままで現役でいるのは、もはや俺だけらしい。」
「一般人には全然嬉しくない現役選手か。まあいいや。で、次に帰った子は、後輩だな。しかもお前に惚れて・・・」
俺は丸山の話を手を前に出して遮った。
「頼む、その先は言わないでくれ。ご賢察下さいってやつだ。」
「しょうがねえな、まあお前だからな、俺は許してやれるけど、夜道には気をつけろよ。最後は、お前を理解して諫めてくれる友人ってとこか。」
「お前、聞いてたのか?」
的確過ぎる分析。優秀な理系学生の能力ここに極まれり。
「ストーカーじゃあるまいし。結構離れたところにいたから、話は聞こえてないよ。」
全てお見通しかよ。
俺って、そんなにわかりやすいのか?
「丸山には隠し事できないってよくわかったよ。」
「お前がわかりやすすぎるだけなんだけどな。でも、それを理解できる奴は多くなさそうだけど。」
「感謝してるぜ。」
「たくよう。で、聞いてやるよ、まずは従妹か?手出したんじゃないだろうな?もしそうならクズゲス野郎って呼んでやる。」
おお、クズゲス野郎かあ、新しいじゃないか。どんな野郎だろう・・・じゃねえよ。
「手出すわけないだろ。でも、従妹との結婚は法的には問題ないし、高3だけど、誕生日過ぎて18歳だし。もし深い仲になったとしてもクズとかゲスとか言われる筋合いはないぞ。」
丸山は、苦笑しつつ言う。
「お前はいつも詰めが甘いけど、そういうところはちゃんと押さえているんだよな。どうせ、昔から慕われてて、理想の男にされてるって感じなんだろ。」
「そんな感じかもな。姉貴にも、もう少し毅然とした態度取れって指導されたけど。でも可愛いんだよ、そんな子がぐいぐい押してきたら、相手しないわけにはいかないだろ?」
「わはは、そうかそうか、そりゃ相手しないわけにはいかない、よな。お前だし。しかし、お前、まだねーちゃんに相談してるのか?」
「だって、帰省中だし、姉貴もいたし。」
「そうか。相変わらずの仲良し姉弟でいいことだ。で、迫られたりしたんだろ、どうせその従妹に」
「まあ、俺が襲ってこないと踏んだうえでのことだろうけど、でも、あれだけ可愛いとなあ、心は別として、身体は反応しかねないし。俺だって健全な男子なんだぞ。」
「威張るんじゃない。しかし、そんなうらやましすぎる話とはな。でも、イメージわかないな、どうせその従妹をお前が美化してるだけじゃないのか。」
「いや、ちょっと待って、写メってもらったのがあったはず。」
俺は、軽井沢のランチの時に中町さんに取ってもらった写真をスマホで探して、丸山に見せた。
「どうだ、可愛いだろ?」
見た瞬間、丸山は無表情になり、その後タハハとでも笑いそうな感じの顔になり、さらに少し怒ったような表情になって言った。
「お前、なんだこれ、この親密バカップル。ほんとに従妹なのか?可愛いじゃねえか。しかも、お前のこの満面の笑み。許さねえ。」
そこには、俺の腕に手を絡ませ、そして密着して幸せそうに微笑んでいるみどりと、どう見ても彼女に密着されて嬉しくてしかたがないですっていう、笑顔というかデレ顔をしている彼氏にしか見えない俺が写っていた。
あちゃー、これ、まずかったか。
「相手にしない訳にはいかないってわかってくれたか?」
「あー、よくわかった。わかったよ。なにこの可愛い子。それに、写真ではよくわからんけど、どうせスタイルも悪くないんだろ。何だよお前、この子と婚約しちまえよ、法的な問題ないんだって言うなら。なあ、そうしろ。そうすれば、お前も落ち着いて、女の問題で悩むことはなくなるし、何のトラブルもなくなって、大学も、世の中も平和になるじゃないか。」
大学のみならず世の中も平和になるのか?何その凄まじい影響力。俺ってワールドワイドなニンキモノだったのか?せいぜいサークルとかのそれもごく一部のはずなんだが。
「簡単じゃないだろ、俺はあいつのことを好きなのかよくわからないし。そりゃ、従妹としては、可愛いと思うし、いろいろ面倒見てやりたいとは思うけど。でも、やっぱり、中途半端な気持ちのままで、付き合うのは相手に失礼だよ。」
「お前の言うことっていつも正論なんだけどな、今一つ納得できないんだよ、お前の話はいつも。そうだよ、そもそも、こんな写真撮らせるのが間違ってないか?なんだこの密着、お前、もう少し理性的というか、毅然とした態度とれなかったのか、デレやがって。」
「だから、これだけ可愛い子だぜ、この子にお願いされて、この破壊力の前に屈しない男子なんていないぞ。」
「そりゃそうだよな・・じゃないだろ、こうなる前に、毅然と対応すべきだろが。」
「無理でしょ。物心ついたときには、俺がいたって感じらしいし。」
「なんか、怒りを通り越して、呆れも通り越して、無力感を禁じえないわ、俺。まあ、とりあえず問題起こしてなさそうだし、楽しくて良かったな。でも、この写真、自撮りじゃないよな、誰にとってもらったんだ?」
「友達の友達。」
「はあ?また面白い・・・いや、わけのわからない話だな、詳しく語ってもらおうか。」
俺は、俺が長野に帰省していた期間に、美鈴が友達と3人で軽井沢に来ていて、美鈴に呼び出され、それをみどりに気づかれて一緒に行くことになって、軽井沢で5人で行動した旨を簡潔に伝えた。
「長くてよくわからないところも多々あるんだけど、いや、要するに、お前の女友達の美鈴さんが、友達と3人でいるところに、お前が従妹のみどりって子と一緒に合流して、男1人女4人の、素晴らしきかな青春状態で軽井沢を満喫したってことだよな。」
素晴らしいのか?女子の方が多いなんて日常茶飯事だし、普通の延長じゃねえの?
「いや、だから、俺は美鈴に呼び出されて、みどりは俺に強引について行くって・・・」
「わかってるわかってる。でもそこは本質ではないんだ。男1人女4人で軽井沢というのが、一番のポイントだ。」
よくわからないが、言い方に説得力のある丸山の発言。
「まあ、それでもいいけど。」
「で、その子たちの写真はないのか、どうせあるんだろ。」
俺は、美鈴達3人を写した写真を探し出して丸山に見せた。
「ああ、この左側の子が、おまえといつも一緒にいる眼鏡かけた子、美鈴さんか。そして、その横の2人が美鈴さんの友達ってことね。」
「そう、中町沙友里さんと沼口雅代さん」
「ったく、水準以上の可愛い子ばっかりじゃねえか、てめえ。」
何で怒るんだ?
「そうかなあ。あんまり気にしなかったけど。あ、美鈴の高校時代の同級生だけあって、2人とも有名女子大の学生だって。」
「合コンだって、こんなレベル高い子ばかりの子がそろってるケースなんてないのに、何でお前ばかり、可愛い女の子達と知り合えるんだよ。」
「たまたまだろ、それで、中町さんが写真撮ってくれて、送ってくれたんだよ。」
「ていうことは、お前、アドレス交換もしたのか?」
「へ?普通だろそんなの。沼口さんとは事務連絡っぽいことしかしてないけど、中町さんとは今でもメッセージ交換とかもしてるよ。折角知り合ったんだぜ、自然な流れだろ?」
「自然ってお前・・・。普通はな、合コンでも、アドレス教えてもらうだけでも苦労するんだぞ。それなのになんだお前、また女友達増やしやがって。充実しすぎてるじゃないか。悩みなんて俺は認めん!」
「いいじゃん、邪念あるわけじゃないし、誰も口説いてもいないし。まあ、俺は、たまたま、男よりも女友達が多いだけのことだよ。」
「そんなもんなのか。安全安心ってわかると、女友達が増えるのか。それは使えるかもしれないな。でも、そんなんじゃ普通は嫌なんだよ。」
「俺はそれがいいんだけどね。普通はそうなのかなあ。まあ、周りは、そういう奴が多いみたいだけど。」
「普通はそっちだ。みんな、彼女が欲しくて、しかたがないんだよ。」
「彼女ねえ。俺はもう宮下とのみたいな話は真っ平御免だね。一生要らないとは言わないけど、今はいらん。」
「まあ、お前が苦しかったのは俺も知ってるからな。でも、あれから1年以上だぜ、もう忘れてしまえよ。」
「忘れたいけどさ、悪い経験じゃないのかもしれないけどさ、もうイラネ。」
「そうなのか。かなり重症だな。」
「自覚はしてる。いつかは払拭する日も来るだろうけど・・・来るといいとは思ってるけど。」
「そっか。気長に行けばいいんじゃないのか。でもさ、あんまり自分だけの論理で相手を測らないほうがいいかもな。刺されるような事態になる前にさ。」
なんだろう姉貴や咲ちゃんみたいなこと言われてしまった。
「うーん、丸山の言いたいことは判るけど、難しいな」
「そうだろうけどな。でも俺は、お前とはまた話したいからさ。」
といいつつ、丸山は席を立った。
「わかったよ、またな。」
「ああ」
大人しくしていればいいのだろうけど、現状では女子との付き合いを自粛すると、丸山、四井、木村ぐらいしか腹を割って話せる友達がいないんだよ、俺は。
それもなあ、寂しい人生になっちまうじゃないか。
*
軽井沢はすでに先月の話。今日は、3人で買い物にでも行こうと思ったら、雅代は彼氏とデートらしい。
ということで、私は沙友里と一緒にとある巨大ショッピングモールに来ている。
今は、一旦休憩ということで、フードコートでお休み中。
「ねえ、美鈴、隆太君のこと、好きなの?」
唐突に聞かれて、飲み物を噴きそうになったじゃないの。
なによ、もう。
「まさか。只の友達。」
「その割には、仲良さそうだよね、美鈴の男子の話って、だいたい隆太君だよね。」
「腐れ縁みたいなものよ。同じコースで授業も一緒の場合も多いし、どうしても縁が強くなるのは、不可抗力みたいなもの。」
「でも、同じコースの男子って、30人ぐらいいるんだよね?」
う。そうだけど。
「真面目に授業受けてる男子は少数派だし」
「まあいいや、でも、軽井沢に呼んだよね。呼ばれてくるってことは、向こうも少しは気があるんじゃないの?」
「ないと思うよ。しかも、女の子と一緒に来るなんて。全くあのクズ野郎ったら。」
何笑ってるの沙友里。
「隆太君と一緒に来た、従妹のみどりちゃん、可愛かったな。あの子、一生懸命美鈴に対抗してたよね。隆太君にくっついたまま離れようとしないし。でも、いい子だったよね、素直で。」
「そうね、何この子って初めは思ったけど、思ったよりも聡そうだし。」
「みどりちゃん、地元でも難関の高校に行ってるらしいよ、それで、美鈴の大学の理工学部目指しているって。」
「そうなんだ、でも沙友里、何でそこまで知ってるの?軽井沢ではそこまでの話は聞かなかったと思うんだけど。」
「あ」
「ちょっとあなた?」
「いいじゃない、折角アドレス交換したんだよ。」
「いつのまに仲良くなったの?」
「だって、あいつ、結構おもしろいし。」
「あいつって、え、みどりちゃんじゃないの?」
「隆太君だけど。」
いつの間に?
「ダメ!」
思わず叫んじゃったけど、そんな権利ないよね。
「何で?別に美鈴は隆太君の彼女じゃないし、いいよねえ?」
案の定沙友里に指摘されてしまいました。
「え、まあ・・、沙友里、あーいうのが好みなの?」
「別に。でもちょっと・・・、隆太君から、美鈴とみどりの件で、いろいろありがとうみたいな丁寧なメールもらったからさ、いえいえどういたしまして、あ、みどりちゃんと一緒の写真送るね、みたいな感じでメール交換が始まって、いつの間にかメッセージ交換するようになっただけだよ。」
あなたこそ隆太が気に入ったんじゃないの?めずらしく熱く語ってるね。
いいですけど。
「全くあいつ、すぐ調子に乗るから。」
「いいじゃないの、結構面白い男子だよ。」
「そうだけど、いや、あいつクズだし。」
「心にもないことを言うんじゃないの。そんなこと微塵も思ってないくせに。」
「クズじゃないけどクズみたいな発想しかしないよ?女友達に呼び出されて、女連れでくる奴なんて可笑しいでしょ?」
沙友里、何にやけてるのよ。
「まあ、あんまり聞いたことないけど、でも美鈴は友達だよね。友達にとやかく言われたくはないんじゃないのかな。それに、美鈴が許したんでしょ?みどりちゃん、ちゃんとお礼言ってて、あ、この子ちゃんとしてるなって思ったけど。」
「・・まあそうだけど。」
「私、告っちゃおうかな、隆太君に。」
ええー?って動揺してはいけない。私は別に隆太の彼女でも何でもないんだから。
「別にいいんじゃないの?いいもんあんな奴、誰と付き合っても。関係ないし。知らないし。」
「ふうん。美鈴も可愛くなったね。大丈夫だよ、しても多分フラれちゃうから・・。」
・・・
「でもさ、みどりちゃん、美鈴の気持ち、自分と同じなのが一目で分かったんじゃないかな。」
「だから、違うって。」
「まあいいけどさ、隆太君も罪な人だよね。なんだろう、でも、下心とか全然感じないんだよね、面白いよね。私たちの周りの子って、隙あらば体いただきますみたいな奴ばっかりで、いい加減にしてよって思ってたところだったからさ。」
沙友里の場合、コミュニケーション力が高すぎて、逆に誤解されることもあるのかも。
「ま、まあ、そんな男多いかもね。」
「去年付き合ってた元カレなんて、その典型。油断してたら、二股三股。誰でもいいのかってむかついたから即別れたけど。」
「別れたことは聞いてたけど、そうだったのね。」
「そんな過去はどうでもいいや。これからまだまだ私たちは行けるよね。」
「そうよね。」
「でもさ、私たちみたいな普通の女の子はね、自分から行かないと、いい男は他の女にとられちゃうよ。」
沙友里は、十分可愛いと思います・・・。
「そうなのかなあ。待ってるのはダメなのかな。」
「ダメだよ、もうそういう時代じゃないよ、女だって、ぐいぐいいかないと。」
「だとしても、壊れて何もなくなっちゃうんだったら、今のままの方がずっといいんだ。」
「何となくわかる、かな。何だろう、隆太君って。不思議な人だよね。童顔かもしれないけど、可愛いかもしれないけど、イケメンという感じではないし、何で女子に好かれるのかよくわかんない。少なくとも、あんな人、他に会ったことない。多分、あの人しかいないよ。そういったオリジナルなところ、他は他、俺は俺、みたいなところがいいのかな。いやいや、私は違うからね、恨まないでよ、美鈴。」
コミュ力高い沙友里をも変な話っぷりにしてしまう隆太。ほんとにクズ。
「いいよ、あいつと仲良くなっても。」
「え・・、いいの?」
「うん。」
いいもん、あんな奴・・・。
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