第6話 新入生歓迎のはずが

 大学生活のメインである授業が始まった。

 2年生となった今年は、授業も多いし、さらにハードになるだろうから、気を引き締めないといけなさそうだ。それでも、青春ど真ん中の俺たちには、やっぱ勉強だけとはいかない状況も存在するんだよな。

 1年の終わりの春休みは、ぼーっと過ごすのかなと思ったけど、他所の恋愛沙汰に巻き込まれたりとか、思い返すと結構大変日々だった。

 こういった大変さは、さすがに社会人になったらないと思うから、貴重な体験だったのかもしれない。

 さらに、なぜか俺をお気に入りにしたっぽいももか先輩が、これからも俺を巻き込んで大騒ぎになるような気もするけど、その時はその時だし。

 ももか先輩関係だけではなく、これからもそういうの沢山あるのだろうな。

 いや、それを歓迎はしちゃいけない・・・けど、少しくらいなら、いいよね。


 授業が開始されて間もなくの昼休み。

 昼食を終えて、次の授業の教室に行こうと大学構内を歩いていると、スマホが電話の着信を告げている。

 俺のスマホに直電してくる人は、多くはない。

 最近では、姉貴か美鈴のどちらかがほとんどである。

 少し前は、ももか先輩からのことが多かったけれど、最近は、ももか先輩からは、たまに、メールとかメッセージをもらう程度である。

 そう、メッセージであれば、もう少し広がり、丸山や四井とかのクラスメート、サークルのメンバーの何人かが俺宛てに送ってくれている。

 今回の電話は、美鈴であった。

「ねえ、隆太。話したいんだけど会えないかな?」

 あれ、さっき一緒の授業だったはずだけど。しかも、近くにいたよなあ?

 と思いつつ、基本女の子に逆らわない俺は、

「午後2コマ授業あるから、夕方になっちゃうけど、それでもいい?」

「そっか、それなら仕方ないね。私たちは次のコマは授業ないんだ。」

 え、わたし「たち」?他にだれかいるのか?

 とは思ったが、とりあえずそこには触れずに、

「悪いね。午後2コマ目の授業一緒だよね。その時に場所とか教えて。」

「気にしないで、勉強優先だよ。うん、授業の後に声かけるから。突然ごめんね。」

「そっちこそ気にするなよ。」

「ありがと、じゃあ、またね。」

「ああ、また。」

 通話を終えたが、何だろう?結構真面目な話風の印象だよな。

 という感想を持ちつつも、俺は、次の授業に向けて教室に急いだ。


 授業終了後に受けたその相談は、臼井さんと木村君の関係についてのことだった。木村君が浮気しているのではないかということで、俺に探ってほしいそうだ。

 そんなことできるかよ、とは思ったが、押し切られてしまったというか、受けざるを得なかったというか。

 俺は、木村君と夕食を食べつつ、話をすることになるのだが、木村君、いやもう木村、というか、あいつと本当の友達になれたと思うので、よかったとは思う。

 そして、木村から聞いた限りの話ではあるが、木村も臼井さんも移り気だなあという感想を持ちつつ、お互いに別なパートナーと付き合うようになるんじゃないかな、という結論を得た。

 そして、そのことを美鈴に報告したのだが、結局、俺が想定した組み合わせでカップルが再編成されたことを美鈴から知らされるのは、それから間もなくと言ってもいい頃だったんだ。

 そんなに時間をとられたわけでもなく、勉学にも支障は出ていないが、新学年の出足からちょっと疲れたなという感じ。

 美鈴が言うには、こういうことは「経験者」に相談するのが一番、ってことらしいのだが、俺の経験は、宮下さんとの短い付き合いだけなんだけどね。

 そんなにインパクトあったのか、あの関係。あんなので経験豊富扱いでいいのか。


 4月はそんな感じで一件落着し、GWに突入。

 前半は、美鈴と出かけたりはしたけど、なんかいつもの延長みたいな感じだった。いやそのデートとかじゃなくて、植物園に行って親交を深めただけだからね。健全だなあ。

 でも、後半はちょっと違うぞ。そう、サークルの新入生歓迎合宿が行われるのだ。

 毎度のことだが、合宿と言っても、みんなで一か所に泊まるだけで、基本仲良しグループに分かれて遊ぶだけだ。

 ただし、新入生が必ずどこかのグループに混ざれるように配慮するというのが、暗黙のルールになっている。

 新入生歓迎合宿では、先輩方が新人を品定めする目的と言ってたメンバーもいたが、そもそも、合宿をきっかけに先輩と1年生がカップルになることは稀らしい。

 ももか先輩情報なので、ガセかもしれんけど。

 あ、先輩、すみません。

 というか、去年はそういった事例はなかったし。

 ただ、同期同士が仲良く、ということは結構あるのだそうだ。

 これも、ももか先輩情報。

 信じましょう、ももか先輩。ていうか、それご自分のご経験・・・ということは、黒歴史でしたね。やべぇ。言えるわけねえ。

 などと考えつつ、現在は合宿地にいる俺である。


「高階君?」

 ん?誰かが呼んだ?気のせいか?まあ、いいや。

「高階君は高階君でも童顔で可愛い高階君!」

「何ですかその呼び方!」

「なんで怒るの?可愛いのにな💛」

 何でハートマークみたいな口調なんですかっ。ていうか、マジでそうだって顔してるし。

 それはそうと、気が付かなかった俺も悪いのだが、童顔で可愛いってのは、まあ、可愛いはスルーしても童顔は自分も認めてるので・・・じゃなくて、やっぱ恥ずかしいのでやめてくださいよ。

 でも、ももか先輩を下手に構うと餌食になるだけだからな、ここは素直に受け止めて差し上げよう。

「ももか先輩、何でしょうか。」

「だって、高階君とお話ししたいんだもん。」

 何ですかその顔。可愛いじゃないですか、とか思っていたら、周りの先輩や一部を除いた同期、新入生たちが、見てはいけないものを見てしまったー、いや、私は何も見ていませーん、もちろん、何も聞こえていませんよー、みたいな顔をしつつ。蜘蛛の子を散らすように去っていく。

 他方、その場に残った岩村さんは、

「高階君、ももかさんが相手して下さるって。よかったね。ももかさん、こいつ、孤独癖があるんですよ。可哀そうだから、よろしくお願いしますね。」

 といって、さっと消えていった。

 なんだよ岩村さん、君は俺の保護者ですかあ?しかもこいつ扱いって。

 そうなんだよ、最近は、なんだかんだいいながら、サークルの活動では、岩村さんは俺の近くにいることが結構多かったりする。

 でも、最後に、<サイテーサイアククズ男!>とか罵倒して、<もう知らない!>とプンスカしながらどこかに消えていくのがお約束だ。

 でも、今回はちょっと違う斬新な感じ、かな。

 と思っていると、

「高階さん?」

 と、黄色い声が。

 1年のえっと、渋川有紗しぶかわありささんだったな。

「渋川さん、なに?」

「名前覚えてくださったのですね、嬉しいです。あの、えっと、良ければ、有紗って呼んでいただければ、なお嬉しいのですけど。あ、お返しに私も隆太さんって呼ばせていただきますから。」

 控えめなのに積極的に出る後輩キター!

「それ、いいわねえ。でも私、何で今まで高階君って呼んでたのかしら。去年の夏合宿では、隆太君って呼んでたはずなのに。よし、決めたわ。私も君のこと、これからはずっと隆太君って呼ぶね。だって、君はももか先輩って私のこと呼んでくれているものね。国際関係は相互主義が常識よね。」

 え?あの、俺とももか先輩とのやり取りは、外交なのでしょうか?

 相互主義じゃなくて黒船外交みたいに強要された気がするのですが。

 そもそも、ももかって呼べっておっしゃったのももか先輩ですよね?

 と、俺が思考停止状態になっていると、

「隆太君?いいわよね、いいでしょ!お返事は?」

「はい!もちろんOKです!」

 俺は、年上のお姉様のご命令はなぜか即容認してしまうのだ。まして、ももか先輩は可愛い人なんだから、仕方ないよね?

「あの、私は、NGですか、隆太さん?」

 控えめな口調だけど、すでに隆太さん呼びしてる後輩キター!

 って、NGっていったら、どうするんだろう。しないけど。

「いいよ、有紗。」

「ありがとうございます。有紗ちゃんでも大歓迎ですっ!」

 はいはい、俺の意見は聞いてくださらないのですね、先輩も後輩も。

「で、お二人に聞きますけど、お付き合いされてるのですか?」

 と、可愛く上目遣いでももか先輩に尋ねる有紗ちゃん。

 俺には聞かないのでしょうか?

「当然よ。」

 って、嘘八百垂れ流すの止めて下さい!ももか先輩。

 慌てて俺が叫ぶ。

「違うでしょ!いつ恋人同士になったって言うんですか!」

「何騒いでるのかなー?只の先輩後輩ではなくて、お友達として付き合ってるんだけど。違うの!隆太君?」

 何でももか先輩が怒るの?まあ、暴走されても困るのです・・・わたくしが。

「はい、仰る通りです。有紗ちゃん、俺とももか先輩とはね、先輩後輩を超越した友達関係なんだよ。」

「そうなのですね、お友達かあ。それは安心しました。」

 何で君が安心するの?変な子だ。

 そこに、

「高階君が修羅場に巻き込まれてるって聞いたから、急いで戻って来てみたのだけれど、何この穏やかで友好的な雰囲気は?魔法でも使ったの?」

 魔法?そうだね、俺が魔法使えたなら、まず岩村さんに、俺を罵倒しないように魔法をかけてあげよう。きっと素敵な女性になれるよ。

 っていうか、今さっきどこかに消えたよね?いつ戻ってきたんだよ。しかも、修羅場って聞いたって、どこでいつ聞いたんだ?

 まあ、岩村さんだから、いいか。

「最初から和気藹々としてたよ、ももか先輩と有紗ちゃんは、咲ちゃんとは違って優しいからね。」

「だから、咲ちゃんじゃなくて、岩村さんですっ。へん、どうせ私は優しくない鬼のような女ですよ、何よもう。」

 あれ、サイテーサイアク、もう知らない、って言いながら何処へ消える、じゃないの?

「咲ちゃん、あなたも隆太君の良さをちゃんと知っているようね。いいのよ、恥ずかしがらなくて。そうね、無理して罵倒することないの。あなたも私と隆太君のお友達になりなさい。」

 ももか先輩、何気に命令してる。

「え?いや、その・・・ももかさんのご意向でしたら私はそうさせていただきますが、高階君はそれでいいの?」

 え、俺に選択権あるんですか。

 でも、ももか先輩のご命令に逆らったら、俺はバツとしてももか先輩に持ち帰られてしまうかもしれないし(それは罰じゃなくてご褒美、とか抜かしてたメンバーがいたけど、違うからね、懲罰だからね!)、それは勘弁なので、1択じゃねえか。

「ももか先輩の御意のままに。」

 それを聞いた岩村さんが言った。

「ありがとう・・。じゃあさ、その、お礼に、私のこと、咲ちゃんってよんでもいいからね。でも、私は高階君って呼ぶからね。」

 お礼に、なのか?まあ、いいか、と思っていると、ももか先輩がちょっと怒ったような顔をして言った。

「ダメよ咲ちゃん、隆太君って呼んであげて。」

 うゎ、可愛い顔でものすごい圧をかけているももか先輩の迫力、半端ねー。

「う・・ももかさんが仰るなら・・わかりました。」

 圧に屈したって言うのはわかりますけどね、そんな、マジ嫌そうな顔しなくたって・・・ちょっと悲すぃ。

「じゃあ、呼んであげて。」

「り、隆太君・・・」

 そんな、顔歪ませなくたって・・・。まあ、いいですけど。

「隆太君!お返事は?」

「はい!咲ちゃん。」

「よくできました。もう2人は仲良しのお友達ね。」

 やっぱ、結構めんどくせー。

 そこに、有紗ちゃんがもじもじとしながら訴えてきた。

「あの、ももかさん、咲さん、私もお友達にしていただけませんか。」

「もちろんよ。あれ、もう私はそのつもりだったのだけれど。」

 仰っていただかないと誰もわかりませんが、ももか先輩。

 でも、何その嬉しそうな顔。

「隆太君、今から私と、咲ちゃんと、有紗ちゃんと、君とは仲良しのお友達だからね。あ、私と隆太君は、遥か昔からお友達だけど。」

 遥か昔って・・・、結構最近のような気がしますけど。

 それでも、異議唱えたりしたら、ハグ攻めの刑だろうし(もう一度言うよ、それじゃご褒美だって言う奴いるけど、違うからね、罰だからね!)、それは自分を見失いそうで、勘弁して欲しいからなあ。

「わかりました。私たち4人は、友達です。」

「仲良しの!」

 細かいなあ・・・可愛いのに。

「はい、仲良しのお友達です!」

「よくできました。あ、私と隆太君は1ランク上の超仲良しの友達同士だからね、いいわね?」

 めんどくせー、だけど逆らえねー、ご命令のままに。

「もちろんです!」

「やっぱり隆太君は可愛いね。」

 と、俺の頭をなでなでするももか先輩。

 何気に笑顔なのが怖い。

 そして、心からの笑顔で、俺をなでなでしているももか先輩を見ている咲ちゃんと有紗ちゃんにも恐怖を感じる。


 しかし、今気が付いたのだが、俺って女子と一緒の時間の方が多いんじゃないのか?

 まあ、楽しいから、いいか。


 新入生歓迎合宿は、俺はお約束とばかりに、ももか先輩のハグ攻めを多々浴びせられたりはしたが、全体としてみれば大きなトラブルもなく、少なくとも俺には問題なく終了した。あれ、有紗ちゃん以外の1年生とは話したっけ?まあ、いいか。

 それに、これで4人のお友達関係も、解消、かな。


 *


 と思っていたのだが、ある点では解消、しかし、という感じだった。

 ももか先輩は、夏にどこかの企業のインターンシップに参加するということで、その情報収集に気を使っている様子だ。

 そして、勉強にも一段と力が入っているようだ。

 そのため、俺を構っている時間はあまりないらしい。

 ももか先輩は、

「隆太君、ごめんね、寂しいよね・・」

 とか言ってくるが、多分自分に言い聞かせているのだろう。

 あの個性だから、ももか先輩は、他人(特に男子)と対等の関係を維持するのはなかなか難しいんじゃないか?

 俺が何故維持できているのかはよくわからないけど。

 そういえば、ももか先輩に名前呼びされて、生き残ったのは俺だけだというし。

 そうだ、去年の夏合宿で俺がももか先輩に隆太君と呼ばれていることがわかると、1年を除いて絶句してたもんな。他の先輩には、ご愁傷さま、とか言われてしまうし。何やら祈ってる先輩もいたよな。合掌してる姿もあったよなあ。

 そもそも、ももか先輩に気に入られて生き残っているだけでも、凄いとか言われてる。

 人生変わってしまった先輩もいたというし。

 でも、俺は、勘違いしないから大丈夫なんだけど。

 そうだ、ももか先輩が、晃、と呼んでいた晃さんも、自業自得とはいえ、サークルを去ってしまった。

 晃さん、ひょっとすると、ももか先輩との関係で疲れたのだろうか。

 でも、晃さん、別れた後でも、ももか先輩のこと、絶対悪く言わないんだよな。

 まあ、市川さんとラブラブのようだから、なのかもしれないけど。

 まあいいや。ももか先輩との<友達付き合い>は楽しいし。

 それに、それがないと、ちょっと寂しい気がする。


 次に、岩村咲ちゃん。

 サイテーサイアククズ男、もう知らない、の言葉はこのところ聞かれないが、お小言は復活している。

 学食で美鈴とランチしてたときに、美鈴が結構俺にベタベタしたような感じになったことがあったんだけど、そこを咲ちゃんが目撃したらしく、

「いつもあんたは女の子とヘラヘラベタベタしてるよね、少しは自粛したら?」

 とか言ってきたことがあった。

「美鈴のことか。アイツとは、同じコースの腐れ縁みたいなものだからな。それにアイツ、ノリが女子高生っぽいからか、結構スキンシップしてくるんだよね。」

「隆太君が、女子高校生扱いされてるってこと?」

「そうじゃないのかな?」

「そんな訳ないじゃん、バカじゃ・・・、いや、そうなのかな。」

 合宿前なら、<・・・バカじゃないの?このサイテークズ男、もう知らない!>になるはずなんだけどな。

 調子狂う。

 でも、咲ちゃんは俺と感性?が似てるっぽいからか、案外話してると落ち着くんだよな。

「まあいいんだけどさ、そのさ、その気がないのならね、あまり無防備なのは、その、良くない気がするのよね。」

 と、言いにくそうに言う咲ちゃん。

 その気?ああ、恋愛感情?

「そんな関係じゃないし。いいんじゃね。」

 咲ちゃんは、大きく溜息を吐いた。

「何よあんた、チャラすぎだわ。」

 あれ、行っちゃった。

 まあ、去る者は追わず、だな。

 そのうち、会うこともあるでしょ。仲良しのお友達だし。


 最後は、渋川有紗ちゃん。

 この子とは、明らかに遭遇度が格段に増加している。

 気が付くと、横に座っていたりする。

 この前、一人でランチして、食べ終わったら、横で微笑みを浮かべつつ有紗ちゃんが座っていて、焦った。

「隆太さん、ここいいですか、えへ。」

 とか言ってたけど、ずいぶん前から俺の横にいたっぽい。

「声かけてくれればいいのに。」

「隆太さんがいつ気が付いてくれるのかなあって。」

「想定してないでしょ?普通気が付かないよ。」

「隆太さんの意地悪!」

 声がでかいんですけど。周りの学生たちの目が辛い。頼むよ、俺がクズ男みたいじゃないかよ。

 学食ではこんな感じ。

 それ以外にも、

「あれ隆太さん、奇遇ですねえ」

 おかしいだろ、何で俺の家に向かう路線の電車乗ってるんだよ。全然違うよね?君が利用している路線って。同じ駅で降りたわけではないから、まあよかったけど。

「あれ、隆太さん、偶然出会えるとは。運命ですかねえ」

 何で大学の診療所の待合室にいるの?

 きみ、健康だよね?いや、女子には俺にはわからないこともあることは知識としてはあるから、何も言う気はないですけど。

 っていうか、どんな運命だよ。

 ここまでくると、偶然作ってるんじゃね?

 君、不審者として通報されても知らねえぞ。まあ、俺はそんなことしないけど。

 こんな感じで、結構な頻度で近くにいるから、そうなると咲ちゃんのチェックが当然に入る。

「何で有紗ちゃん独占してるの?」

 とか因縁を着けられたりしてる。

「俺のせいじゃないよ。有紗ちゃんがなぜかいつも横に来るだけだから。お前のことが怖いんじゃないの?」

「何そのバカな発想。」

 とか俺と咲ちゃんが言い合いしていると、

「咲さん、なぜ隆太さんのこと、いつも虐めてるんですか?」

「違うのよ、こいつ、女の敵みたいなものだからさ」

「それ、酷くねえか?」

「隆太さんはそんな人じゃありません!その辺のクズ男と一緒にしないでください、可哀そうです。」

 そーだそーだって言いたかったけど自粛した。

「クズ男みたいなものよ、隆太君なんて。いつもいろんな女の子にヘラヘラしてさ。」

 う、クズ男、懐かしい響き。

「まあそうかも・・・ひょっとして咲さん、隆太さんのこと好き、なんですか」

「はあ?何でこんなクズ野郎好きにならなければいけないの?」

 クズ野郎もキター、けどさ、そこまで言い切ることないじゃないか。ちょっと悲しい。

「だから、酷くねえかって。」

 とそこに、都合よくももか先輩が!

「隆太君、楽しそうね。咲ちゃんも有紗ちゃんも・・」

 楽しそうって・・・あれ、ももか先輩、ちょっと拗ねてる。

「ねえ、隆太君、もしかして、咲ちゃんか有紗ちゃんのどちらかが好きなの?」

「だから、何でそうなるんですか。全然違いますよっていうか、お友達でしょ?」

「だって、私に声かけてくれないんだもん。」

「ももか先輩、就活でお忙しいと思って。」

「忙しいもん。でもさ。」

 ももか先輩がダークサイド(=めんどくせー女)に落ちていく、タスケテ。

「そんな、俺がももか先輩を邪険にするわけないじゃないですか。」

「だってさ、君、チャラいから」

 話通じてねー、の気がする。

 でも、ももか先輩について行かないといけない。

「濡れ衣です。僕は誰も口説いてません!ていうか、好きな人いないし。」

「そうだったの。ふうん。じゃあ、今日私と飲み行かない?」

 話やっぱり通じてない。

「へ?」

「なによ、私と一緒じゃ嫌なの?」

 最初から、飲みに行かないって誘ってくれればいいんじゃないですか?

「咲ちゃんと有紗ちゃんも一緒でないと。だって、4人のお友達ですよ?」

 無駄とは思うが、一応抵抗する俺。

「そうだったわね、咲ちゃんも有紗ちゃんも一緒に、どう?」

 出たー天使の微笑み。

 これを見たものは、ももか先輩を受け入れるしかなくなるのだ。

 案の定、

「もちろんご一緒させていただきます!」

 とハモッた。

 やっぱり、仲良しのお友達でした。


 それにしても、女子との交流が多いな、俺。


 前期はこんな感じで、大学では、美鈴と、そうでないときは、ももか先輩、咲ちゃん、有紗ちゃんとかの女子と一緒にいることが多くなった。

 俺は、それも日常と思って気にしていなかったのだが・・・。

「あれ、今日は1人か?」

 と、ぼっちメシのつもりで来た学食で、声を掛けてきたのは四井。

「おう、四井も1人なんて珍しいな、たまには一緒に喰うか?」

「そうするか。今日はサークルの集まりもないし、いつもつるんでいるコースの連中はサボリで大学来てないし。まだ2年だけどさ、少しは勉強した方がいいんじゃね?」

 イケメンはぼやいてもイケてるんだな。

 四井は真面目といえるか、いや、とはいえないかな、の境界線というところだけど、こいつ、語学できるからな。中高生の頃外国生活が長かったってことだけど、英語は、すでにネイティブと普通に話せるレベルだし。留学生とかと普通に英語(たぶん)で世間話してるんだよね。

「そうだよな、お前は英語できるけど、あいつら、どうなんだろ。」

「あはは、聞かないでやってくれ。1年で取得単位20単位以下の奴もいるからなあ。あと100単位超って、もう、4年でストレートの卒業は厳しいんじゃないか。」

 自己責任とは言え、そりゃ大変だな。

 俺もそうだけど、四井も単位は40単位以上とったって言ってたから、まあ順調だろうけど。

「とはいえ、俺は評価が今一つだからな。勉強の成果だろうけど、お前が正直うらやましい。」

「既に彼女もいないし、勉強が捗るから、成績が上がるだけ。」

「よく言うわ。最近、高階がハーレム状態だって、ダチが羨ましがってたぞ。」

 ハーレムって。まあ、ももか先輩可愛いから、無理もないか。

 咲ちゃんも有紗ちゃんも、ももか先輩の教育のおかげなのだろうか、結構可愛くなったし。

「サークルの先輩、同期、後輩だよ。連休の合宿で4人でつるむことがあって、それが続いてるって感じだな。恋愛沙汰は存在しない。」

「もったいない、と思うけど、まあ、お前だからな、どうせ女に連れまわされてるだけなんじゃねえかとは思ってたよ。それに、お前には愛しの美鈴ちゃんもいるしな。」

 と、四井が後半笑いをこらえつつ言った。

 愛しの美鈴ちゃん、確かに笑える。

 四井も、今の俺が恋愛を回避していることは、よくわかっていてくれる。

「愛しというか、脅しというか、それはいいけど、そうだな、こうしてお前と一緒にいると、何だかほっとする。」

「そっか、まあ、俺は高階をウェルカムだからさ。いつでも声かけてくれ。」

「ああ、サンキュ。」

 そして、世間話をして、俺たちは授業に向かった。

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