這う音
「
こういうことを言われると、私は何でこの人と結婚したんだろうと思う。
「私は
旦那はというと、不思議そうな顔をしている。
「更にすることに何か意味があるのかもしれない・・・結局どんな風にも考えられるから、考えても仕方がない。俺はそう思うけど・・・」何てつまんないやつ。
旦那から見ると私は、不必要に面白がってるようなのかな?
「でも、イチョウの垣根から想像だけでそこまでたどり着いてるんだから、すごいと思うよ」
何だろうこの人のこういう所。
「お茶入れるね。ちょっと休憩しよ」私はいったんその話はやめて立ち上がった。
陽が落ちてきたころ。
大体の荷物は運びこんだが、普通に暮らせるまでには、1週間かそこらはかかりそうだ。
「ゆっくりでいいよ、疲れるだけだし」旦那はそういって優しそうに笑う。
私はやっぱりこの人のことが好きなんだなぁと思うと胸の辺りがもやもやする。
確かにそうだ、ここに住んでいた人がどんな人であれ、北になにがあったとして、今の私たちには関係のない事だ。
怖いと思えば古い街灯でも怖いし、気味が悪いと思えば、引っ越す前のアパートの、2階に住んでいた一人暮らしの中年も気味が悪い。
私たちは、幸せだ。
こんないい処に一軒家が持てたんだし・・・そう思えると思っていた。
この時は・・・・
1カ月が過ぎて、相変わらず一番西の区画は買い手がつかないようだが、隣と北側の家は完成して、もうすぐ引っ越してくるようだ。
うちを建てている時も思ったが、基礎の段階ではそれなりに時間がかかったが、
ほんの1カ月ちょっとで出来上がってしまう。
なんかプラモデルでも作ってるような感じで、見に行くたびにどんどん家らしくなった。
隣の家は、うちと同じような2階建てで、たぶん広さも変わらないだろう。
北の家は、敷地のわりにこじんまりとした平屋で、リビングのほか1部屋あるのかなぁという感じで、たぶん夫婦二人だけなんだろうという造り。
北のイチョウの垣根のすぐそばに、何かの建築材料にブルーシートが掛けられて置いてある。
家はどう見てももう完成しているようなので、何に使う資材なのか気になって見ていた。
ある夜、隣で寝ていた旦那が、不意に起き上がって言った。
「何かが這ってるような音がする」いつもぼやっとしているようで、外からの刺激に対してはやたらに敏感な旦那。
「ほら、草むらを大きな蛇が這ってるような音がしない?」外は強い風が吹いていた。
「そう、私にはわかんないけど・・・」実際、風の音が強くて聞き分けられない。
旦那は立ち上がって、枕もとの腰高窓を開ける。
「これなら?」
・・・・
する。
蛇が這ってるかはわからないが、何か大きなものを引きずってるような音がする。
たとえば、大きな麻袋に入れたソバの実かなんか・・・
「するねぇ」私も立ち上がって窓に寄ったが、やはり風の音が勝ってその在処までは判らない。
暫く2人で黙って耳を傾けていたが、いつの間にか私は眠っていた。
翌朝目が覚めると、隣に寝ていたはずの旦那の姿が無かった。
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