祠
土を盛ったはずのうちの敷地。
確かに何処からか運んだであろうやや赤っぽい同じ土が平らに入れられている。
イチョウのかきねはその状態でまだ根も、その切り口も地上に出ている。
根本には苔の生えた古い土がそのままになっていた。
という事は、今イチョウが植わっているところは、以前もっと高い土地だったか、土が盛られていたことになる。
何千年単位の話じゃないんだから、土地自体が高かったとは考えられない。
土が盛ってあったのだ。
土塁みたいに?・・・でも、もともと同じ敷地だったその中に、土地を分断するようなものがあるのは・・・考えすぎかもしれないけれどおかしい。
北側にはなにがあったのだろう?
引っ越しの日、うち以外の残り3区画のうち、うちの北側と隣の区画は、買い手がついたようで工事が始まっている。
その先の1番西側の区画は、南に竹藪があり日が当たらないうえに、その竹藪のせいで区画にかかる前に、道路が南に折れていた。
結果出入りは、北側の車もすれ違えない細い砂利道だけになり、利便性が悪い。
将来的に竹が敷地内に入り込んできたりしたら面倒だ。
多分なかなか売れないだろうと思う。
建設中にもよく自転車で前を通っては、何かしら話していった五十がらみの男性が、先ほどから座り込んで引っ越しの様子を眺めている。
缶入りのお茶を持って挨拶に行くと、何も言わずに黙って受け取りこう言った。
「なに前原さん、今日が引っ越しだったんかい」さっきから見てたんだから分かるだろうと思ったが、いつもそんな話始めだった。
「はい、よろしくお願いします」いまは表札が出てるから分かるが、建築の最初のころから普通に前原さんと呼ばれていた。
よく誰誰邸建築予定地なんて、看板が立ってたりすることがあるから、それを見る機会はあっただろうが、少し違和感はあった。
「よろしくって言っても、うちは隣組が違うからなぁ。あんまり一緒になることはないなぁ、神社の集まりぐらいかな」
神社・・・そうかそういうのもあるのか、参加しないと駄目なものなのかな?
「あの・・・ちょっと聞いていいですか?」
「うん、なに?」
「あの~うちじゃないんですけど」そういって私は指さした。
こっちの北側のお宅が立ってるところ辺りには、以前何かあったんですか?
「なにかって?」
「うーん、何か特別な建物とかそういうものです」
「あぁ、なんかの祠があったな、周りを高い
「生垣って、これですか?」私は、敷地の北側に残されたイチョウのかきねを指して言った。
「そうそれ前はもっと高かったのよ、祠の上まで届いてたから」
「えっ、あの祠ってお稲荷さんみたいなものじゃなくてですか」
「いや、人が中に入れるちゃんとしたやつ、俺がまだ子供の時分の話だけど」昔の話と聞いてちょっとホッとした。
「ずっとここのばあさんが世話してたよ。それもいつの間にか無くなって、その後はずっと空き地だな」
「火事があったとかそういうのですか」
「いや、そんな覚えはねぇなぁ・・・普通に解体したんじゃねぇかなぁ」
私はかえって旦那にその話をした。
「祠ってことはさ、何かの宗教がらみじゃない普通・・・」
「うん、だから?」旦那は、ダンボー箱を開けて中の食器をテーブルに並べながら気のない返事をする。
「空き地だったっていうんだから、その後使う予定は無かったんだよね・・・今度みたいに土地を更にして売るんなら取り壊すのも解るけど、使う予定も無いところにある・・・言ってみれば神様の住まいじゃない祠って」
「うん・・・」旦那は手を止めて私の話を聞いた。興味を持ったのか、しつこいなぁと思ったのかは表情からは判らない・・・そういう人なのだ。
「意味もなく壊すもの?」
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