第6話粗大ゴミ、大地に立つ
王国軍の敗退から数日。魔王領の境界付近には奇妙な光景が広がっていた。
敗走した王国兵の一部が、剣を捨てて「店」の前に並んでいたのだ。
「頼む、ルト様! 俺たちを雇ってくれ! あんな魔法みたいな生活、一度見ちまったらもう王国には戻れねえ!」
「……ルト、どうする? こいつら、人間界の最新情勢(在庫情報)をたくさん持っているようだが」
ゼノビアが呆れ顔で尋ねる。俺は彼らにスコップと洗剤を渡し、こう告げた。
「いいだろう。ただし、まずは店の裏にある『アレ』の汚れを落としてもらうぞ」
店の裏、巨大なブルーシートが剥がされる。
そこには、かつて「呪われた鉄の山」として放置されていた、全長20メートルの古代遺物――【魔導巨像・ギガント】が鎮座していた。
『鑑定対象:古代決戦兵器・ギガント(破損)』
『真価:大陸横断型・移動要塞』
『修復:動力源の欠如、およびOS(制御術式)の未実装』
「ルト、これは伝説の神殺し……。だが、動くはずがない。心臓部である『太陽の魔石』は1000年前に失われたと……」
「そんな高級なもんいらないよ。要はエネルギーを回せばいいんだろ?」
俺が取り出したのは、現代の「ハイブリッドエンジン」の知識を応用した、『魔力・廃油ハイブリッド駆動炉』だ。
燃料は、魔族たちが捨てていた「魔物の脂」と、そこら中に漂う「瘴気」。ゴミをエネルギーに変えるエコ設計だ。
そして、制御システムには、前世で遊んだロボットゲームのUI(操作画面)を魔法で投影するように定義した。
「よし、インストール完了。……起動するぞ」
ゴゴゴゴゴ……!
大地を揺らす咆哮と共に、巨像の目に灯りがともった。
その瞬間、監視していた王国のスパイたちが悲鳴を上げて逃げ出す。
「ば、馬鹿な……。数千人の魔導師が生贄にならなければ動かないと言われた巨像が、あんな『得体の知れないエンジン』一つで……!」
俺は巨像のコクピット(という名の、リクライニングチェアを改造した操縦席)に座り、マイクを握った。
「こちら、フィアット・アンティーク。これより『動く店舗』として営業を開始する」
俺は巨像の腕を操作し、店の横に積み上げられた「王国軍の遺棄武器」を巨大なバケツに放り込んでいく。
「素材の回収効率が上がって助かるな。……さあ、次は王国まで『出張販売』に行くとしようか。レオンたちが買い叩いたツケを、利子付きで回収しにな」
巨像が一歩踏み出すたびに、地響きが王国の方角へと伝わっていく。
それは、世界で最も巨大で、最も危険な「リサイクルショップ」の誕生だった。
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鑑定スキルが「古物商」だったので、追放された先の魔王領で人間界のゴミを伝説の武器として売り捌く たらこの子 @mentaiko327
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