第5話圧倒的じゃないか、我が軍(のゴミ)は

魔王領と人間界を隔てる「断絶の谷」。

 そこには、王国が誇る精鋭三千の軍勢が集結していた。先頭に立つのは、かつての仲間――聖勇者レオンだ。

「いいか! 目的は無能鑑定士ルトの身柄、および奴が盗み出した『王国の資産』の奪還だ! 逆らう魔族は根絶やしにせよ!」

 レオンが掲げる聖剣は、どこか輝きが鈍い。俺という「メンテナンス担当」を失い、細かな刃毀れが蓄積していることに彼はまだ気づいていない。

 一方、谷の反対側。

 迎撃に立つ魔王軍の数は、わずか五百。だが、その装備は異様だった。

「ルト様、準備完了です。この『筒状の鉄屑』……本当に火を吹くのですか?」

「ああ。火薬の概念と魔力を圧縮して飛ばす、現代流の『長距離砲(レールガン風)』だ。元は折れた門柱だけどな」

 俺が指示を出すと、魔族の兵士たちが一斉に「筒」を構えた。

 レオンたちは鼻で笑う。

「ハハハ! あんな棒切れで何ができる! 突撃――ッ!」

 王国軍が谷を駆け上がろうとした瞬間。

 俺は合図を送った。

「全門、放て」

 ドォォォォォン!!

 轟音と共に、魔力で加速された鉄塊が王国軍の最前列を粉砕した。

 爆発ではない。「貫通」だ。盾も鎧も、俺が再定義した「高硬度のゴミ」の前では紙同然だった。

「なっ……なんだこの威力は!? 魔法ではないのか!?」

「次、ゼノビアさん。例の『飛ぶゴミ』をお願いします」

 空から現れたのは、巨大な翼を広げた魔族たち……ではない。

 彼らが背負っているのは、俺が壊れたボイラーと送風機を組み合わせて作った『魔力推進式バックパック(ジェットパック)』だ。

「ふふ、空からの眺めは最高だな、ルト!」

 ゼノビア率いる飛行部隊が、上空から「魔法の種(実はただの不発魔石を安定化させた手榴弾)」を雨あられと降らせる。

 空を飛ぶ術を持たない王国歩兵は、ただの標的だった。

「バカな……ありえない! あんなもの、文献にもない未知の古代兵器だぞ!」

「いいやレオン、全部お前たちが『修理代がもったいない』って捨てたガラクタだよ」

 俺の声は、拡声魔法で戦場全体に響き渡る。

 レオンは顔を真っ赤にして叫んだ。

「ルトォォ! 貴様、よくも王国を裏切ったな! その技術は王のために捧げるべきものだ!」

「王のため? 笑わせるな。俺は『価値のわかる客』にしか売らない主義なんだ」

 王国軍は、一度も接触することなく半壊。命からがら撤退を開始した。

 だが、これはまだ序の口だ。

 俺は戦場に散らばった王国軍の「壊れた武器」を眺め、ほくそ笑む。

「……よし。いい素材が大量に手に入った。これでもっと『店』を大きくできそうだ」

 戦場を片付ける魔族たちの中で、俺は次なる商品の構想を練っていた。

 王国は次に、伝説の「神殿騎士団」を繰り出してくるだろう。

 なら俺は、さらにデカい「粗大ゴミ」――あの巨大ロボットを完成させるだけだ。

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