第3話開店、魔王領のリサイクルショップ
魔導公爵ゼノビアの全面協力により、俺——ルト・フィアットは魔王領の街道沿いに念願の店を構えることになった。
外装こそ古い石造りの小屋だが、中身は別物だ。
「……ルト、これは一体何だ? この冷たい風が出る箱は。氷魔法の魔石も見当たらないが」
「ああ、それは『魔力循環式・冷風機(ただの壊れた換気扇を改造したもの)』。ここの魔力濃度なら、空気を回すだけで冷えるんだ」
ゼノビアは、俺がゴミ山から拾い上げて数分で直した「ガラクタ」たちが、魔族の生活を劇的に変えていく様子を驚愕の目で見守っていた。
俺の【古物商】スキルは、修復すればするほど熟練度が上がり、今や【概念の再定義】という領域にまで達していた。
「折れた剣」は「超硬度の包丁」へ。
「破れたマント」は「魔法を弾く作業着」へ。
俺が店を開いてわずか一週間。魔王領の兵士たちの間で、「ルトの店のゴミ装備」は最強のブランドと化していた。
「ルト様! この『光る板(スマホの形をした魔導通信機)』のおかげで、前線との連絡が10倍速くなりました!」
「それは良かった。電池が切れたらまた持ってきてくれ」
魔族たちは義理堅い。彼らは「役立たず」の俺を尊重し、適正な対価を払ってくれる。人間界にいた頃よりも、ずっと「商売」をしている実感が持てた。
だが、平和な時間は長くは続かない。
「ルト、客だ。……それも、あまり行儀の良くない客が来ているぞ」
ゼノビアが窓の外を指さす。
店の前には、豪華な装飾を施された馬車が止まっていた。そこから降りてきたのは、かつて俺を追放した王国の下級役人と、数人の衛兵だった。
「ルト・フィアット! 貴様、こんなところで何をしている!」
役人は鼻をつまみながら、魔王領の空気を嫌うように言った。
「王命だ。貴様が勇者パーティーから持ち出した『ガラクタ袋』……あれの中に、王国の国宝が含まれていたことが判明した。今すぐ返還しろ。さもなければ、横領罪で捕縛する」
俺はカウンター越しに鼻で笑った。
なるほど、レオンたちの装備がボロが出始めたか。俺がパーティーにいた頃、無意識にスキルのパッシブ効果で「維持(メンテナンス)」していたことに、ようやく気づいたらしい。
「国宝? そんなもん、レオンが『ゴミだ』って言って俺に投げつけたんだ。今はもう俺の所有物だ」
「黙れ! 無能な鑑定士が何を……っ!?」
役人が俺に詰め寄ろうとした瞬間、店内に鋭い冷気が走った。
ゼノビアが、俺が直してやった『深淵の瞳』を彼らの喉元に突きつけていた。
「私の店の『筆頭鑑定士』に、無礼な口を利くのはどこのどいつだ?」
「ひっ……四、四天王ゼノビア!? なぜ、人間と魔族が一緒に……!」
役人たちは腰を抜かし、無様に逃げ帰っていった。
だが、彼らの目はギラついていた。おそらく次は、軍を出して「強奪」しに来るだろう。
「……ルト、いいのか? これで完全に人間界を敵に回したぞ」
「構わないさ。あいつらは大事なものほど『ゴミ』扱いする。俺は俺の価値を認めてくれる場所に、商品を流すだけだ」
俺は店の奥にある、まだ誰にも見せていない最大の「粗大ゴミ」に目をやった。
それは、レオンたちがダンジョンの底で見捨てた、巨大な金属の巨像。
『鑑定対象:古代兵器・プロトタイプロボ』
『状態:沈黙(※現代の「プログラミング」の概念を流し込めば起動可能)』
これが動く頃、王国は自分たちが何を捨てたのかを、身をもって知ることになるだろう。
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