第6話 幸せな時間

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第6話 幸せな時間

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 今日も一日が終わろうと、日が沈んでいく

 特訓を始めてから、3日が経った。


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【絆石残高】47個

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 この3日間、俺たちは狩りと会話に明け暮れた。

 マリエルとピー助との連携も、日に日に磨かれていき、連戦の回数も増えた。

 1戦1戦にすさまじい集中力を使うので、多くて3連戦だが、それでも十分な手ごたえを感じている


 アピサルは相変わらず、狩りには参加できず寂しそうにしているが、俺が狩りから戻ると定番となった独占タイムが、彼女の心を満たしているようだった。



「今日も頑張ったのね」


「ああ、おかげで大分動けるようになってきた」



 俺はアピサルの胸でこの3日の出来事を振り返る


 初日の夕暮れに所持ptが50に到達したので10連ガチャを回した

 手に入れたのは

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【N】カップ麺×3個(醤油・味噌・カレー)

【N】レトルトカレー×5袋

【N】色鉛筆

【N】乾電池(単三)×10本

【N】粉セット(パン粉・薄力粉・片栗粉)

【N】パスタ乾麺500g + パスタソース×3袋

【N】お茶漬けの素×8袋

【R】絆石×1、米10kg(新米)

【R】絆石×1、調味料セット(醤油・味噌・砂糖・塩・酢)

【SR】絆石×3、伊勢海老×10尾、タラバガニ5kg


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 大量の食糧

 そして何より


「カップ麺だ...!」



 ピー助が、俺の足元で跳ねている。



「ピィィィィ! ピィィィィィ!」



 完全に狂喜乱舞している。



「ピー助、落ち着け」


「ピィィィ!」



 マリエルが苦笑しながら、ピー助を抱き上げる。



「主様、今夜はカップ麺でしょうか?」


「いや、今日はもっと特別なものを作るよ」



 カップ麺が食べられないと知り、ピー助が絶望した顔をしている

 そんなピー助を見ながら、俺はカップ麺を手に取り、ニヤリと笑った。



「カップ麺チャーハンだ」


 ピー助の雄たけびが灰の平原に響いた


 俺は飯盒で炊いた米と、カップ麺を使ってチャーハンを作り始めた。

 カップ麺を砕き、米に混ぜる。


 フライパン代わりのダッチオーブンで炒め、香ばしい香りを立たせていく。

 狩りで疲れているから塩加減を強める為醤油を少しプラスする



「ピィ...ピィ...」



 香ばしい匂いにピー助が、完全に正気を失っている。

 涎が止まらない様子で、俺の足元をうろついている。



「できたぞ」



 アルミホイルの器に盛り付ける。

 カップ麺の香りと、米の香ばしさが混ざり合った、最高のジャンクフード。

 欲を言えばニンニクチューブが欲しいところだったが、今後のガチャに期待だ



「いただきます」



 そして炭水化物×炭水化物という最高のジャンクを一口、口に運ぶ。



「――うまい!」



 懐かしい味。

 前世で俺を虜にした、あの味。

 キャンプにカップ麺を持っていくことを否定する人も多かったが、この味だけは譲れなかった



「ピィィィィィィィィ!」



 ピー助が、完全に昇天している。



「主様...これは...罪です、今すぐに懺悔が必要だと思われます。私はもう、この味の虜になってしまったかもしれません」



 マリエルは恐ろしいものを見るかのようにカップ麺チャーハンを見つめている。

 確かに炭水化物×炭水化物というハイカロリー飯はマリエルの様な可憐な少女にとっては大罪だろう。


 しかし、罪を背負ってでも食す価値があるメシというものがあるのだ



「そなたの世界の料理は、わらわの魅了並に強力だわ...」



 アピサルもジャンクの味に恐れおののいている


 気が付いたら思い出す、ふとした瞬間に食べたくなり、一度思い出したら食すまで飢えが止まらない

 ジャンクにはそれだけの魔性がある


 皆に喜んでもらえて何よりだ



「調味料セットのおかげで、味付けの幅も広がったしな。これでオーク肉メインの食事でも、飽きることはなさそうだ」



 俺は、作る喜びをかみしめていた



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 2日目。


 この日は、狩りだけでなく食事も充実していた。


 米を待ちきれず、炊飯中というのに飯ごうの蓋を開くという大罪を犯したピー助に辛口カレーを与え――



「ピィィィィィ!」



 ピー助が火を噴いたり

 絆を深める為に、共同作業料理を作ろうと、マリエルと一緒に豚肉を割りばしに刺し、串揚げにして――



「主様、こうですか?」


「うん、上手だよマリエル」


「ありがとうございま――」


「............」


「...アピサル様、視線がきついです」



 アピサルが、俺とマリエルが楽しそうに料理をしているのを見て、拗ねたことで、そのあとのアピサルタイムがいつもの倍の時間かかかり、久々のアピサルベットで寝ることになったりと、本当に充実した日だった。


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【アピサル】

 との絆が深まりました

 絆pt+3

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 3日目の共闘でマリエルとピー助の絆レベルがさらに1上昇し13になった

 だからだろうか、アピサルは俺と会話した後に絆ptが入ったと察するとしきりに自分の絆lvを聞いてくるようになった



「絆lvは上がったのかしら?」


「まだみたいだね...」


「...そう」


「焦らないで、システム上のlvが低くたって、俺のアピサルへの思いが低いわけじゃないんだから」


「ふふ、そなたはそういってくれると信じてるわ...でも、やはり心が落ち着かないのよ。わらわは全てにおいて其方の一番でありたい...」


「アピサル...」


 アピサルと共闘出来ない限り、システム上の絆lvの差は開いていくばかり

 アピサルを追いつかせるためにマリエルとピー助と口を聞かないわけにもいかない

 1日でも早くアピサルと共闘できるように、強くならなければいけない、そう思った




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 そして現在に戻り、修行をしてから3日目の夜。ガチャで消費した分も含め合計84ptを稼ぎ、今日手に入れた魔石3つをptに変換して丁度100pt稼いだ

 切りのいい数字に気分が良くなる


 そろそろもう一度10連ガチャを回してもいいかもしれない

 そんな風に考えているとマリエルが俺に声をかけてきた



「主様、連携もうまくいくようになりましたし、ここ数日は魔王討伐軍の気配も遠のいています。主様はここ数日とても頑張られていますし、今日は...思いっきり自分を甘やかすのはいかがでしょう?」


「あまやかす?」


「はい、主様が待ち望んでいる、お酒をたしなんではいかがでしょうか?」


「お酒か...でも敵が来たら」


「そなはた心配しすぎね、わらわがいるのだから、何も心配する事はないわ」


「でも、自分だけ酔っぱらって、皆を戦わせるなんてことが起きたら...」


「時には主が快楽にふけるのも、配下の喜びになるのよ、そなたはもっとわらわ達に甘える事を覚えるべきだわ」


「そう、なのかな...」



 十分に甘えているつもりなのだが、これ以上甘えてもいいものだろうか


 確かに魅力的なのだが、どこか心苦しい。こういう時、変に大人びて遠慮してしまう前世の日本人根性を恨めしく思う



「ピッピ!」



 ピー助が仕方ねぇから俺も付き合ってやるよと、まるで恩を着せるように酒を飲むジェスチャーをしてくる


 この大食漢は酒も行ける口なのだという事実に驚く

 ヒヨコという事は子供という事だから、酒はさすがにNGなのではなかろうかと思ってしまうのだが、ピー助の酒を飲むジェスチャーをするときの酔っ払い顔が、酒を飲みまくったのん兵衛そのもので「あぁ、こいつ慣れてるんだな」と俺に悟らせる

 もしかしたらピー助の種族は大人になってもヒヨコのままなのかもしれない

 そう納得しながら、飲みにケーションで絆を深めるのもいいかもしれないと宴会を開くことを決意する



「...そうと決まれば。じゃあ、今日は特別なディナーにしよう」



 俺は、インベントリから伊勢海老を10尾と獺祭を取り出した。



「今日は伊勢海老パーティーだ!!」



 アピサルが、目を丸くする。



「そなた、本当にうれしそうね」



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 下ごしらえとして片栗粉と塩で臭みと余計な水分を輩出させ、伊勢海老の持つうまみを凝縮させる

 そして洗い流した後日本酒をたらし焚き火の上で豪快に焼く。


 欲を言えばバターが欲しいが、こればっかりは仕方がない


 ジワジワとうま味汁を出す伊勢海老を塩と醤油で味付けし、更に香ばしい香りを立たせていく。


「ピィィィ~~」


 ピー助は酒の香りとうま味の香りで既に酔っぱらっているのか、文字通り千鳥足でふらふらとエビの周りをうろついている


 そして焼きあがった伊勢海老から殻を取ると、ブリブリの身が姿を現す


 前世なら丁寧に味わいながらチビチビ食べていたところだが、今日は生き抜いた自分へのご褒美でもあり、仲間との絆を深める親睦の場でもある


 けちけちせず豪快に行くべきだろう


 俺は大きく口を開け、盛大にかぶりつく



「~~~~~っっ!!!」



 ブリッブリに引き締まった身が最高にうまい!


 俺はそのままの勢いでインベントリから取り出した獺祭を紙コップに入れる

 好き嫌いがはっきり分かれる酒だが、俺は大好きな高級酒


 生産するための米自体もブランド米で希少であり、店頭から消えやすいレアなお酒でもあったのでの、手に入れた際は、大事にチビチビ飲んでいたが、やはりここは豪快に行くべきとゴクゴクと飲む


「ぶはぁぁぁぁ!!!」


 たまらん!これはたまらんぞ!!

 この世界で飲む酒は大味すぎて、舌に合わず、あまり飲んでこなかったのだが、やはり日本酒は繊細でうまい!

 もう二度と味わう事の出来ないとおもっていた芳醇な香りと味

 日本人の故郷ともいえる米をふんだんに使う事で生み出される奇跡の酒


 俺の目からは自然と涙が零れていた



「主様?」



 伊勢海老の味と、日本酒の繊細な味に驚いていたマリエルが慌てて声をかけてくる

 だが心配はいらない、これは悲しくて泣いているのではない



「マリエル!心配するな!俺は今、感動で泣いているんだー!」



 楽しい!最高の料理と最高の酒!

 久しぶりに飲む酒がなんとうまい事か!


 マリエルはゆっくり飲んでいるようでまだコップは空いてない、ピー助は1口でダウンしてしまった

 やはり子供に酒は早かったのか!


 しかしやはり俺の女!

 アピサルはあっという間に飲み干している!


 これは注がねばならぬ!



「さぁアピサル!もう一杯飲もう!」


「あらあら、酔うとますます可愛いのね、そなたは」



 アピサルは何を言ってるんだ、俺がこれしきで酔うわけないじゃないか



「何を言うアピサル!俺は酔ってない!」



 前世ではどんな飲み会でもつぶれたことがない鉄壁の肝臓を持っていたのだから!



「俺はなぁ!酔っぱらったことがないんだ!」


「うふふ、そうね、貴方は酔っぱらってないわ、さ、コップが開いてるわよ、もう一口どうぞ」


「あぁ!共に呑もう!乾杯だ!ピー助は飲めるか!?」


「ピィ~」


「無理か!にゃら俺が飲もう!」


「あ、主様?羽目を外してほしいとは言いましたが、少し外れ過ぎでは!?」



 本当に心配性だなマリエルは



「ほんとうにしんぴあしうだなあまりえるは」


「あ、主様?」



 俺は酔っぱらって何ていない



「おありゃよったなんてないんだ」


「うふふ、さ、そなた、わらわの胸においでなさいな」


「おぉ!?こりゃがほんおものたにみあざけだぁ」


「この淫魔!?主様になんて破廉恥なことをさせてるのですか!?」


「うふふ、あまりに可愛くて、もうたまらないのよ」


「主様!今お救いします!!」


「そんなこと言わず、貴方も混ざってもいいのよ?」


「!?」


 あぴさつおまりえるはなにをあらそってるんだ



「おれにゃみんだがだうすぎだ」



 だいすきなんだ



「うふふ、貴方も絆で感じるでしょ?酔ったら本性を現すという人間から、愛しか伝わってこない幸せが」


「それは...」


「せっかくこんなに可愛くなってるんだもの、主が酔うとどうなるかを確かめるのも仕える者として必要なのではなくて?」



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【アピサル】【マリエル】【ピー助】

 との絆が深まりました

 絆pt +9

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「...認めましょう、アピサル様の言葉にも一理あります」


「うふふ」



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【アピサル】【マリエル】

 との絆が深まりました

 絆pt +6

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 ◇◇◇


 ――その頃。


「なんだって俺たちが偵察に出なきゃいけないんだ」


 灰の平原の外れ。

 魔王討伐軍から派遣された偵察隊の中、一人の冒険者が不満を口にした。


「今、魔王が湧いたら手柄取り損ねちまうぜ」



 それを聞いていた聖騎士が声をあらげる



「貴様、ガルド=イグノア様の為に尽く為の任務に文句をいう事は許されんぞ!」


「滅相もない、ガルド=イグノア様の為に戦いたいからこそ、魔王の出現位置に待機しておきたかったんですよ」


「...まぁいいだろう、次はないぞ」



 不満を漏らす冒険者は、灰の平原でこんなに軽口を言えるくらい暇である事実に違和感を覚える



「それにしても、魔物が少なすぎませんかね?」


「...確かに、随分と距離を稼げている、妙だな」



 死の土地で平穏を感じる

 その違和感に、偵察部隊はハッとして警戒を強める


 そして――



「...何だ、あれ」



 遠くに、淡い光が見えた。



「遺跡か...?」


「行ってみるか」



 偵察隊は、光に向かって歩き出した。



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 第6話 了

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