第5話 :戦闘訓練

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第5話 :戦闘訓練


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 朝日が昇る。


 アピサルの胸の中で目を覚ました


 アピサルの腕に寄りかかるように寝たはずなのだが、寝てる最中に移動させられたらしい


 アピサル曰く、俺の寝息を直に感じられて心が温まるのだとか




 正直このままいくと共依存という不健全な関係になりそうだし、それでなくても俺がダメな大人になりそうな気がして、やめるように言う事を決心すると、とたんにアピサルが寂しそうな顔をするため言い出す事が出来ないで居る


 前から思っていたが、アピサルは俺の感情に対する感度が異様に高いように感じる




 最初は絆lvの差かと思っていたが、アピサルのlvをマリエル達が越しても、アピサルほどの感度はないし、俺もアピサルの感情をそこまで読み取れるわけではないので、やっぱりアピサルが特別という事になる




 数千年を生きた人生経験といわれればそれまでなのだが、やはり、主従という線引きをしっかりと持つマリエルやピー助と違い、アピサルは心の隙間を埋める為の存在として俺を大きく認識しているというか


 たまに一つになることを渇望しているような感覚が伝わってくる


 勿論肉体的にではなく精神的な願望なのだろうが、長い孤独と戦い、愛を注がれたことで、既に依存に近い精神状態になっているのかもしれない




 昨日、狩りをしている間、少し離れただけでそのあとは俺にべったりくっつき続けたのもそのせいだろう




 遺跡に来た初日は、離れた位置で見張りをしてくれていたり、魔王討伐軍の動向に目を光らせてくれたりとしていたのだが、日がたつにつれ、俺とアピサルの絆が深まるにつれ、アピサルの心が底なし沼のように俺を求めるようになってきている気がする




 勿論アピサルの心を満たしてあげるのは望むところだし、俺を求めてくれるのもうれしいのだが、なんというか、よくない精神状態のように感じてしまい、なんとかアピサルの精神を健全な道へ導けないものかと葛藤してしまう






(いつかおかしなことが起きてしまうかもしれない、その前にアピサルの心を安定させられるようになりたいな)






 俺は自分がやるべき目標の一つにアピサルの心を本当の意味で救うというものを追加した




 名残惜しそうなアピサルを背に、地面に降り立った俺は、まずメニュー画面を開いた。




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【絆石残高】80個


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「80個か...」






 昨日の段階では94個だった。


 昨日の夜にアピサルのコストが-1されて9個


 そして今朝のタイミングでマリエル3個、ピー助2個の絆石を消費した。


 多少の時差はあるが、現状で合計14個が1日で消えていく。






(このペースだと、あと5日ちょっとで底をつく)






 焦りが胸を締め付ける。


 だが、焦っても仕方ない。


 昨日みたいに無理をすれば、マリエルに止められるだけだ。






「それより――」






 俺は昨日の戦闘を思い返す。


 アーマーオークのフェイント。


 あの時、完全に騙された。


 幼少期から剣術の修練は積んできた。


 基礎はある。型も叩き込まれている。


 でも、実戦経験が圧倒的に足りない。


 無能となった10歳の儀式以降、徐々に矢面に立つことは減り、後方支援に徹していたせいで、敵と直接刃を交える機会がほとんどなかった。


 あのまま戦い続けても、また同じミスを繰り返すだけだ。






「...特訓、しなきゃな」






 俺は決意を固め、寝ぼけ眼のピー助と、既に起きて俺の為に米を炊いてくれていたマリエルに声をかけた。






「二人とも、頼みがあるんだ」






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【遺跡前・空き地】




 マリエルの炊いてくれたご飯を塩おにぎりにしてみんなで食べた後


 俺は遺跡の外でマリエルに頭を下げた






「...特訓、ですか?」




「ああ。昨日の戦いで、俺の実戦経験の無さが浮き彫りになった。このままじゃ足を引っ張り続けるだけだ」






 マリエルは少し困ったような顔をする。






「主様の安全は私たちが――」




「マリエル」






 俺は優しく、でもはっきりと遮った。






「俺は守られるだけの主で居たくない。強くなりたいんだ、皆を守れるくらいに」






 その言葉に、マリエルの表情が変わった。






「それは――」






 ――無理




 そんな心の声が聞こえた




 ガチャキャラの中で一番戦闘力の低いピー助ですらメニューが示す戦闘ランクは英雄級。


 英雄といえば、この世界では加護lv3を達成したランザや聖騎士団長といった傑物を刺す


 そんな存在の足元にも及ばない俺なんかが、神話級や創成級といった存在を守りたいなど、分不相応にもほどがあるのだろう






「それでも、あきらめられない。強さが無ければ、いざという時に、皆の体も、心も、守れない」






 必至な俺の決意を感じ取ったのだろう。


 マリエルはため息を一つついたあと、笑顔を浮かべ頷く。






「わかりました。どこまでできるかはわかりませんが、私が全力でお手伝いさせていただきます」




「ピー!」






 ピー助も盾を掲げて賛同してくれた。






「あらあら、こんかいもわらわは役に立てないのね」






 二日連続で絆を深める行動に参加できないアピサルはしばらく考え込んだ後






「少し出てくるわ」






 止めるまもなく遺跡の外へ出ていった


 昨日のように魔石を集めてくることで褒めてもらおうとしているのだろうか


 のけ者にしているようで心苦しいのだが、これはアピサルを守れる主人になる為に、いつかアピサルとも共闘の絆を作るためにも、必要なことだ


 俺は心の中でアピサルに謝った後、マリエルに視線を向ける




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「主様のおっしゃる通り、主様に足りないのは戦闘経験です。昨日のアーマーオークのフェイント程度であれば、私がかけたバフで十分に対応できたはずです」






 可愛い顔でキリッっとした表情で話すマリエルのギャップに少し癒されながら思考する


 確かにアーマーオークのフェイントは全部認識する事が出来た


 死を直感した張り手に関しても、そのすべてを把握できていた


 ただ、突然のことに驚き、体が硬直してしまっていただけなのだ




 動こうと思う事さえできれば、十分に動くことができたはず






「なのでまずは、バフを受けた状態になれましょう」






 身体能力が向上しても、頭が付いていかなければ、全ては無駄になる。


 それを実感した俺はマリエルの言う通り、バフを受けた状態になれることから始める。




「では、参ります。聖光魔法【天使の祝福】」






 マリエルから発せられる祝福が全身を包む。


 瞬間、昨日と同様、身体が軽くなり力がみなぎる






「うわっ」






 軽く跳んだつもりが、2メートル近く跳躍してしまう。


 着地に失敗して尻餅をつく。


 昨日は無我夢中でわからなかったが、あまりの効力に唖然としてしまう。


 出力だけなら、ランザの加護を超えているかもしれない








「ピィィ~」






 ピー助が呆れたように首を振る。






「笑うなよ...!」




「私の使う聖光魔法は、人間が使う通常の光魔法等とは違い、神性を帯びる存在が使用する上位スキルです。たとえ能力が制限され、魔法レベルが低下していようとも、スキルの階位は変わりません。おそらくこの世界の神の加護と、基礎能力の向上という点だけを見れば同じものでしょう、神の加護とは違い、属性や特殊特性の付与までは出来ませんが、主様の基礎能力の増幅幅は、この世界でもトップクラスになっているはずです」






 やはり今の俺は、加護を発動したランザと同じか、それ以上の基礎能力を有しているはずなのだ


 勿論、俺には戦闘スキルが無いので実際の戦闘力には天と地ほどの差があるだろうが、基礎力だけで勝負する場面においては対等に渡り合えるはずだった






(俺にも出来るはずだ、スキルはなくとも、俺を捨てた皆以上の働きが!)






 俺は何度も転び、傷を作っては、マリエルに癒してもらいながら、跳躍や反復横跳びを繰り返した。




 そして少し慣れてきたら、今度は走る。止まる。方向転換。




 諦めずにコツコツと、何度も何度も挑戦し、バフを受けた状態での動作を、身体に染み込ませていく。




 思い通りに動く


 言葉にするとただそれだけの行動を成立させるのに、1時間程の時間を必要とした


 完璧とは言えずとも、ようやくイメージに近い動きが出来るようになってきた






「今日は止めないよな、マリエル?」




「はい、昨日の精神疲労と違い、筋肉痛などの肉体的損傷は私が治療できますし、訓練であるならば精神疲労状態はむしろ歓迎すべきです」




「精神疲労を歓迎?」




「えぇ、戦いは万全な状態でできる事の方が珍しですから」






 可愛い顔をしているが、マリエルは戦天使


 こと戦というジャンルにおいては、妥協を知らないタイプなんだろう






「よし、それならピー助、打ち込みの相手を頼む!」




「ピッ!」






 ピー助が盾を構える。


 そして突破できるものならやってみろ、といわんばかりに翼をクイクイ動かし挑発してくる






「上等だ!!」






 俺は向上したステータスを頼りに、すさまじい勢いでピー助に肉薄する


 そしてピー助に攻撃を叩き込む






「ピィ!」






 甘い!


 そういわれた気がした


 そう思った瞬間には、俺はピー助が放つ金の波動にカウンターを食らい、昨日のアーマーオークと同じように後方に吹き飛んだ


 しかも奴ら同様、下から突き上げられるように衝撃を受けたことで、脳震盪を起こし、体がいう事を聞かない


 このままでは頭から落下し、致命傷を負ってしまう




 しかしそうなる前に、俺の体をマリエルが空中でキャッチし、ゆっくり下ろしてくれる






「やめますか?」






 マリエルが俺を試すように、悪魔のささやきをしてくる






「絶対あきらめない!」






 俺は再びピー助に向かって飛びかかっては跳ね返される


 何度も何度も、ピー助に斬撃を叩き込んでは吹き飛ばされることを繰り返した


 次第に、ピー助が俺に向かって波動を飛ばすタイミングがわかってきた


 そして、何十回とみたその反撃の動作をようやく見切り、俺はピー助に攻撃を振り下ろす瞬間、増幅された筋力で無理やり剣の軌道を止め、斜め前方に向かってステップを踏む


 ピー助の衝撃波は、俺が先ほどまでいた位置を襲っており、俺は衝撃波の内側、ピー助の斜め後ろという攻撃に絶好のポジションにいた






(もらった!!)






 勝利をつかむ絶好のタイミング


 俺はピー助に一本入れようと全力で剣を振るう


 しかし、やっと衝撃波を乗り越えたことで、気が緩んでいたのか


 ピー助の横にあった小さな石につまずき、バフが生み出す超人的な脚力が生み出す爆発力の勢いのまま


 ピー助の後方に吹き飛んでいった






「ピィ~」






 ピー助の呆れた鳴き声が空間に響いた








 ガキン、ガキン、ガキン。


 金属音が響く。


 それから何度も攻撃を繰り返し、何度も衝撃波を乗り越えたのだが、ピー助の防御は突破できない


 確実に突破したと思っても、次の瞬間には俺の剣とピー助の間に、盾が差し込まれ、攻撃を完璧にパリィされ、弾かれてしまうのだ。






「はぁ...はぁ...」






 そのあまりの難攻不落さに戦意が折れる


 ピー助の難攻不落さは尋常じゃない


 あの小さな体のどこにこんな力があるというのか


 マリエルの言う通り、凡人の俺が英雄に並び立とうとするなんて無理な事だったのかもしれない






(前にもこんな絶望を覚えたっけ)






 それは祝福の儀式を経てしばらくした日の事


 加護の力と戦闘スキルによって著しく能力が向上したランザに、一矢報いる事すら困難になった日の絶望


 それまで自分の背中を追いかけてきた存在に、あっという間に抜き去られ、二度と手が届かなくなってしまった喪失感




 あの時は俺にも加護とスキルさえあれば、そう思っていた






(でも、今の俺にはマリエルのバフがある、そしてピー助が使ってるのは最初の衝撃波こそスキルだろうけど、そのあとのパリィはどう見てもテクニックだ、あまりの難攻不落さに勘違いしそうになるけど、効果も動作も毎回違う。あれはピー助の努力の結晶だ――)






 嘗てと違う状況なのに、嘗てと同じ絶望を覚える


 つまり






(結局自分に見切りをつけてたのは俺ってことじゃないか)






 俺が凡人だからあきらめざるを得なかったんじゃない


 俺があきらめたから凡人になったんだ




 戦闘訓練も、仲間に貢献するための努力もしてきたつもりだった


 でもそれは、頭の中ではもう追いつけないことを確信した上で、その現実を見たくなかっただけの現実逃避だったんだ。




 そりゃ、向上心溢れるメンバーにとっては厄介者だ。


 俺は捨てられて当然の屑だったんだ。






(何で前世の記憶があれば優位に立てるとか思ったんだ。変に大人だった分、がむしゃらな努力も、無謀な挑戦も出来ない、ただ小利口な小さくまとまっただけじゃないか)






 俺は剣を握る手に力を籠める






(変われ、変わるんだ、今この瞬間――)






 膝を柔らかく保ちつつ腰を落とす






(――なりたかった自分に、なりたい自分になるんだ)






 そしてつま先の力を一気に前進へと伝え――






(大好きな仲間と肩を並べられる自分に!!)






 ――駆ける






「ピィィ!!」






 そして次の瞬間にはピー助に弾き飛ばされてた






(でも...!)




「あきらめねぇぇぇぇ...!」






 吹き飛ばされると同時にバフの力に任せて強引な受け身を取り


 まるで四つん這いの獣ののように四肢の力全てをつかって跳躍する






「うああああああああああ!!」






 そして放たれるカウンターの衝撃波


 それを地面を転がるように避け、抱えた剣の切っ先をピー助に向ける






「もらったぁぁぁ!!」






 ピー助は少し期待に膨らませていた目に少しの絶望をまとわせ


 俺の切っ先を救い上げるように冷静に盾を差し込み




 勢いよくパリィをする








 ――ッカァァン!!








 今まで俺の姿勢を何度も弾き上げたパリィは


 剣だけを中空に巻き上げただけだった






「――ピ?」






 パリィされる直前剣を手放してた俺は、姿勢を崩されることはなく


 剣を持っていた手は拳になり






「チェストォォォォォ!!」






 ピー助の顔を打った




 体重の差から、滑るように地面をスライドするピー助


 流石ディフェンスの達人、叩き飛ばされたとはいえ、その姿勢は崩れていない


 しかし、その頬にある立派な黄色い羽は、少しだけくぼんでいる場所があり


 俺の拳が間違いなくそこに当たったことを証明していた。






「やった――!!」






 遂に成し遂げた快挙に、喜びを表現しようとした瞬間


 頭上から殺気を感じ、慌てて横に転がる






「お見事です!」






 慌ててそちらに視線をやると先ほど俺が居た位置に刺さる光剣が1本


 それが降ってきたであろう上空に視線をやると、光剣を周囲に浮かべたマリエルがこちらに賞賛の笑みを浮かべていた






「戦闘において、一番の隙は攻撃直後ですからね、本番はここからですよ」




「これからが本番?」




「全てを出し切り、成果をもぎ取った、今この状態が一番成長するタイミングです。今攻撃に費やした時間はそのまま、勇者の防御を観察した時間でもあります。さぁ主様、その成果を実らせるのです」






 やはりにマリエルは戦に関しては一切の妥協がない


 俺の強くなりたいという願いをかなえることにだけ全力を尽くすつもりらしい


 ピー助も楽しそうに構え直し、突撃の構えをとってくる




 攻撃の訓練の次は防御の訓練という事か


 下方向からくるピー助の攻撃をさばきながら、上空から飛んでくるマリエルの光剣に対処しろという事だろう






「望むところだ!!」






 俺は目の前に迫るピー助の斬撃を冷静に見極め、回避し、マリエルの光剣を盾で弾く


 ピー助が何度も俺の剣をはじいたように、下から、丁寧かつ素早く、正しい角度とタイミングで




 ピー助は光剣をはじく俺を見るたびに楽しそうな表情を浮かべる


 まるで弟子の成長を楽しむ師匠の様な




 小さくて、いつも茶目っ気たっぷりのピー助を見ると忘れがちだけど、ピー助は世界を守る勇者なんだと改めて実感した




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【マリエル】【ピー助】


 との絆が深まりました


 絆pt +6


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 それから何分経過しただろうか


 5分か1時間か


 集中しすぎて見失った時間の流れを






「グルァァァァァァァ!!!」






 魔物の雄たけびが切り裂いた


 そこに居たのは昨日のアーマーオークを優に超す巨躯の灰色の毛皮に覆われた、狼型の魔物。






「グレイウルフ...!」




「ふふ、最後の仕上げはやはり実践がいいでしょう?」






 そしてその後ろで、遺跡の入り口をふさぎながら優雅にこちらを見るアピサルの姿があった






「わらわもそなたの力になりたくて連れてきたわ。どの子も脆くてすぐ死んじゃうから、生け捕りに時間がかかってしまったのだけれど」




「アピサル!?流石にこのクラスの魔物は俺一人じゃ――」




「何を言ってるの?その子たちと共闘をする訓練もしなくちゃいけないでしょ?」






 そうだった、俺が戦闘を行う一番の理由は皆と絆ptを効率的に稼ぐためだった


 成長しようが、少し技術が向上しようが何だろうが、一人で最上位の魔物と渡り合えるとうぬぼれるほど愚かではない。




 だけど、マリエルとピー助が一緒なら渡り合える


 今日一日で、ピー助の動きもマリエルの動きも沢山観察してきた


 昨日のようにただ助けてもらうだけの、名ばかりの連携にはならないはず






「マリエル!ピー助!行くぞ!力を貸してくれ!」




「はい主様!」




「ピィィ!!」








 マリエルが光剣をグレイウルフに向かって飛ばす


 それをくぐるようによけながら突進してくるグレイウルフ




 俺はその顔を正面に捕らえながら、剣先に全神経を集中させていく


 狙うは脳天




 無防備に構える俺を噛み砕こうとグレイウルフがその大きな咢を開く


 俺はその瞬間跳躍し、切っ先をグレイウルフより少し上の空間に狙い定める


 勿論グレイウルフは中空で回避不能となった俺を仕留める為に再度、口先をこちらに向けてこようとするが






「ピィィィ!!」






 ピー助がその顎を下から救い上げるように衝撃波を放つ




 口を上に向けようとした瞬間、あごの下から救い上げられるように放たれた衝撃波によって、グレイウルフの口腔内は無茶苦茶に破壊される


 そしてその勢いのまま跳ね上げら、俺の正面にお膳立てされたグレイウルフ






「ナイスピー助!!」






 その眉間に向かって俺は渾身の突きを放った






「ガッ――」






 ――ドンッ!!




 豪快な音を鳴らしながら、上級の魔物であるグレイウルフはあっさりと絶命したのだった






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【ピー助】【マリエル】と共闘を行いました


 絆pt+6


【ピー助】と完璧なる連携を行いました


 絆pt+2


【マリエル】に戦闘補助を受けました


 絆pt+2


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 それからグレイウルフを解体し、幸運にも魔石を手に入れた俺は


 早速ポイントに変換することにした




 今の段階で絆ptは86


 ガチャ10回分を超え余裕が出来たので、俺はガチャを回すことにする


 10連ガチャでレアアップはないので5pt入るごとに回せばいいのだが、こればかりは前世で染みついた癖みたいなものなので仕方ない




「頼むぞ......10連ガチャ!!!」






 光が弾ける。


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【N】ドライフルーツ詰め合わせ


【R】絆石×1、香辛料セット(サフラン・ナツメグ)


【SR】絆石×3、ダッチオーブン


【N】ハーブセット(ローズマリー、タイム、オレガノ)


【R】絆石×1、キャンピングチェア×2脚


【SR】絆石×3、ポータブル電源


【R】絆石×1、寝袋×2個


【N】アルミホイル×1本


【R】絆石×1、折り畳みテーブル


【SR】絆石×3、高級日本酒(獺祭・十四代)


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(SRが三個!これはかなりの幸運じゃないのか!?日本酒もアツい!!やはりガチャは10連に限る!)






 1日消費14個の絆石に対して、今日のガチャでは絆石13個


 絆ポイントのストックも使ったし、まだまだ赤字ではあるが、修行がメインの一日でこれだけの絆石が手に入ったのはすごくうれしい




 ポータブル電源は、それ自体に充電する事が出来ないので使い捨てだとは思うが、今後家電製品が出た際に無駄にせず済むという点では期待が膨らむアイテムだ


 折り畳みテーブルやキャンピングチェアも素晴らしい


 石椅子&地面生活ともおさらばだ




 そして日本酒も捨てがたいが、なにより素晴らしいのが




 ダッチオーブン。


 そして、香辛料。




「今夜は...最高のディナーにしよう」




 俺のために頑張ってくれた皆に最高のご飯を作ることができそうだ


 まだ夜ご飯には時間があるが、早めに支度にとりかかるとしよう






 ◇◇◇◇






 昨日と同じ要領で飯ごうでご飯を作りつつ調理を開始する


 アピサルに相応しい量を用意するため、今日は何度も炊きなおしをし無くてはならないので、飯ごうはフル回転




 ダッチオーブンに、昨日捌いたオーク肉をたっぷり詰め込む。


 グレイウルフの肉もあるのだが、前世の知識からか、ウルフ種の肉を食べるのは気が進まず、また犬科独特の臭みが強く、処理も難しい為、いつか人間の里に行ったときに現地の人用に売ろうと思っている




 やはり正義は豚肉にある




 ローズマリー、タイム、オレガノを振りかけ、塩胡椒で味を整える。




 固形燃料に火をつけ、割りばしで火力を調整。じっくりと焼き上げていく。






「...いい匂い」






 マリエルが小さな鼻をひくつかせる。






「ピィ...」






 ピー助は完全に正気を失っている。


 親鳥が卵を見守るように飯ごうを見つめている。


 昼間の訓練の時とは別人?別鳥?もはや食の勇者である




 やがて、十分に火が通ったであろうころ合いでダッチオーブンの蓋を開ける。




 ジュウゥゥゥ...




 肉汁が弾ける音が響く。


 完璧に焼き上がったオーク肉。


 多数の香草の香りが食欲を刺激する。






「できた...!」






 アルミホイルを駆使し、簡単な器を作り、そこにご飯と豚肉を載せる


 最後にハーブと塩を軽く振りかければ、豚汁あふれるアーマーオーク丼の完成だ




 そして手に入った折り畳みテーブルとキャンピングチェアーを出し豚丼を並べる


 少しずつアイテムがそろい、生活が豊かになっていくのがうれしい






「いただきます」


「「「いただきます」」」






 一口、口に運ぶ。






「――!!」






 ジューシーで、柔らかくて、香草の風味が最高で――






「主様、美味しいです...!」






 マリエルが感動に目を潤ませている。






「ピィィィィ...!」






 ピー助が完全に昇天している。






「そなた...これは...」






 アピサルも、言葉を失っている。






「美味しい、か?」




「ええ...とても」






 二日連続で共闘出来なかったことで、少し沈んだ顔をしていたアピサルだが、共に囲む食卓、においしい料理で少しは心がほぐれたみたいだ


 アピサルが浮かべた優しい笑顔を見て、俺の胸も温かくなった。




 本当なら手に入れた日本酒も飲みたいところだけど、さすがにいつ戦闘になるかわからない状況での飲酒は控えるべきだろう


 何時か安全な拠点を作ったとき、皆で楽しい酒を飲みたい






「また作るよ。みんなが喜んでくれるなら、何度でも」




「...ええ、楽しみにしてるわ」






 温かい夜。


 疲れた身体に、美味しい食事が染み渡る。


 幸せだった。






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【アピサル】【マリエル】【ピー助】


 との絆が深まりました


 絆pt +9


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「おやすみ、みんな」




「ええ、ゆっくりお休みなさい」




「おやすみなさいませ、主様」




「ピィ~...」






 俺は、アピサルの尻尾に包まれながら、深い眠りについた。





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 第5話 了


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