第2話:三つの命
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第2話:三つの命
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気づけば朝だった。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
手にした絆ポイントと、初期ボーナスをどう使おうか悩みながらシステム画面とにらめっこしていたのだが、興奮と疲労のせいか、意識が途切れたんだろう。
まるで前世の眠りスマホをしてしまったかのような感覚
こんなにワクワクした寝落ちはいつぶりだろうか
ここ最近は心が苦しくなる肩身の狭い思いの連続だったから、こんな事にまで新鮮さと喜びを感じてしまう
――ふよん
それにしても、地面で寝ているというのに、妙に寝心地が良い
意識は覚醒してるのだが体が起きるのを拒否してしまう
――ふよん
柔らかくて、温かくて。まるで最高級のベッドで眠っているような気分
あまりの気持ちよさについフカフカの地面に頬ずりをしてしまう
すると鈴の音の様な綺麗な声の持ち主が、クスクスと笑っているのが聞こえた
「あら、わらわの胸はそんなに寝心地が良かったかしら?」
目を開ける
視界いっぱいに広がる、白い曲面。
そして、真上から見下ろす深紅の瞳。
つまり、そう、俺が地面と思っていたのは彼女の――
「うわああああっ!?」
慌てて飛び起きる。
あろうとことか俺は女王の胸の谷間で眠っていたのだ
比喩でも何でもなく、女王の胸上で寝る
なんというパワーワードだろう
「す、すみません!え!?何で俺!?え!?」
「ふふ、謝ることはないわ。わらわがそうしたかったのだから」
「はい!?」
動転する俺を優しく地面に卸しながらすこし頬を赤らめる女王様
蛇の尻尾の先端が犬の尻尾よろしくブンブンと振られている
「限られた記憶とはいえ、わらわの体をこんなに贅沢に使った者は存在しないと断言できるわ」
深淵女王が妖艶に微笑む。
「こ、光栄...です?」
「そうよ、光栄に思いなさい、わらわを裏切ろうなんて欠片も思えなくなるくらい、わらわに依存しなさい」
可愛いしぐさと音色で、さらっと背筋が凍りそうになる発言をする
深淵の女王
何度も天使に見えた彼女は、やっぱり悪魔なのだろう
彼女は楽しそうに俺の頭を優しく撫でる。
その手はひんやりしながらもどこか暖かく、心地よかったが――
(人間に撫でられる子犬ってこんな気分なのかな...)
愛されてるのか、愛玩されているのか、判断に迷う笑顔
まだ知り合って間もないけど、まったく掴めない女性だ。
でも...
(不思議と、悪い気はしない。)
やはり、彼女の俺を大切に思う気持ちが本心だと、魂で伝わってくるのが心地いからだろうか
俺が心地よい気分であるのと同じように、彼女もまた、俺が彼女を大切に思う気持ちを心地よく思ってくれていることを願った
◇◇◇
ひとしきり撫でられた俺は、次第に冷静さを取り戻し改めて彼女を見る。
朝日に照らされた姿は、昨夜よりもさらに神々しい。
光に反射する美しい素肌や、その身にまとうボンテージの様に艶やかな鱗がキラキラ輝いている
「そういえば、君は一体何者なんだ?どうしてガチャに?」
彼女――深淵女王は、少し首をかしげる。
「さぁ...詳しいことは、よく思い出せないの」
「思い出せない?」
俺が転生前後の事を思い出せないのと同じような感覚なのだろうか
「ええ。わらわは長い間、虚無界に落とされていた。それだけは覚えているけれど」
「そういえば虚無界と繋がったとかなんとか...虚無界って何?」
「神に逆らい、有害と判断された者が落とされる、光も、音も、感覚も...全てが無い無限の地獄よ」
その言葉に、俺は昨日の自分を思い出す。
心が死んだ、あの虚無感。
「それは...辛かったね」
「どうかしら、辛いかどうかも、感じる事はなかったわ。ただ...そこに漂うだけ」
深淵女王が遠い目をする。
「わらわは何千年も...ただ一人で...」
その声は、あまりにも寂しげだった。
「でも、そなたに呼ばれて...久方ぶりに、誰かと話せる。そして魂で繋がったこの感覚は...」
彼女が俺をじっと見つめる。
その瞳には、何か強い感情が宿っていた。
「...もう、手放したくないわね」
美しい悪魔が、俺にそっと触れる。
その手は優しくもどこか――もっと奥底に触れたがっている、そんな力強さがあった。
「時がたつごとに、そたなを愛おしいと思う気持ちが膨れ上がっていくわ、こんなこと初めてよ」
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【深淵の女王】との絆が深まりました
絆pt +3
絆lv1→2
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(!)
視界の端に、メッセージが浮かぶ。
「絆ptが増えた!」
昨日に引き続き会話でのポイントゲット
特別なイベントではなくても、心の通った会話をすればポイントがもらえるという事だろうか
まるで前世でよく見た恋愛趣味レーションゲームのような感覚
つまり、時間をかけて仲良くなれば、ポイントが手に入る。そして手に入れたポイントで仲間を増やし、ガチャで強くなるシステム
(だったらポイントは温存よりどんどん使ったほうが良いな)
俺は再びシステム画面を開く。
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【絆ガチャシステム】
現在の絆pt:106 現在の絆石:0
【絆ptガチャ】5pt/回
【インベントリ】卵×9
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絆ガチャでは絆石の他に様々なアイテムや、強化用の特別な絆石が手に入ります
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(そういえば絆石ってなんだ?)
今までよくわからず放置していた項目だが、絆ptについて少しわかったことで、気になっていく
絆石の項目をタップすると新しいウィンドウが出てきた
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【絆石】
召喚対象を世界に維持するのに必要
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現在の絆石:0
【維持コスト】
深淵女王:10絆石/日
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(え...?維持コスト...?)
その文字を見て、血の気が引く。
「10絆石...毎日...?」
さらに詳細を開く。
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【維持コストについて】
召喚キャラは召喚から1日経過ごとに絆石を消費します
・LR:10絆石/日
・SSR:3絆石/日
・SR:2絆石/日
絆石が不足すると、卵化します
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「卵化って...元に戻るのか!?」
「どうしたの?」
「あ、いや...実は、君の召喚を維持するのに、絆石っていうのが毎日10個必要らしくて」
「絆石...?」
「俺もよく分からないんだけど、ガチャで手に入るアイテムみたいでそれを今日の夜までに10個稼がないと君が卵に戻っちゃうみたいなんだ」
「卵に...戻る」
その言葉に常に余裕のある表情を浮かべていた深淵の女王のほほえみが凍った
卵の中というのは、もしかしたら虚無の世界と同じ空間なのかもしれない
だとすればそんな世界に再び戻されるというのは恐怖以外の何ものでもないだろう
得たつながりに安らぎを感じていた彼女を、再び絶望させるわけにはいかない
(今、手持ちは0個でガチャによる期待値は...分からない)
半日かけた会話で手に入ったのはたったのガチャ1回分。
初期ボーナスで100ptあるとはいえ、絆石の出る確率は?1回で複数出るのか?
そもそも卵化したとして、また孵化させるのに100pt稼がなきゃいけないのか、それとも二回目は無料なのか
そもそもガチャ対象が皆卵に戻ってしまったらどうやって絆ptを稼げばいいのか
答えの出ない自問自答に焦りが募る。
「そなた、落ちついて」
深淵女王が、俺の肩にそっと手を置く。
巨大な手だが、優しい。
「あわてても仕方ないわ。まずは状況を整理しましょう」
「...そうだな」
深呼吸。
「今の問題は、絆石が足りないこと」
「...ええ」
「絆石はガチャで手に入る。ガチャには絆ptが必要」
「絆ptは、わらわと絆を深めれば手に入る...問題はどの行動が絆を深める行動と認められるか、その頻度とポイント数が未知な事ね」
「そうだ、会話のほかに、共闘や共同生活も考えられる」
「試さなければならないことがおおそうね...」
俺は考える。
「でも、君一人だと...絆ptを稼ぐのにも、その為の実験をするのにも限界がある」
「..えぇ、とても残念だけど、そうなるわね。このサイズ差じゃ共同作業も限りがあるわ」
「だから...」
俺は、インベントリの卵を見る。
残り9個。
「仲間を増やすべきだと思う」
「先にある程度のガチャを回る手もあるとは思うけど?」
「それも考えたけど、初ガチャを回すという事を一つのイベントとして考えると、そこで絆ptが手に入る確率は高い。だったら頭数を増やした状態でイベントを行った方が最終的にガチャを回せる回数が増えると思うんだ」
深淵女王が、俺の判断を肯定するように頷く。
「母数を増やして同時に絆を深めてポイントを多く稼ぐ...理にかなった判断ね」
「でも、維持コストも増えるのは間違いない」
「コスト管理に失敗すれば...」
「君をまた一人の空間に送ってしまう事になる...」
孤独を恐れ、俺との絆を愛してくれる彼女にとって、それは受け入れがたい事だろう
「あらあら?心配してくれるの?かわいいわね。でも...万が一そうなっても待ってられるわ」
「え?」
だからその予想外の言葉に思わず変な声を上げてしまう
そんな俺の様子を見て、深淵の女王は面白そうにクスリと笑う
「だって必ずもう一度孵化させてくれるでしょう?」
怖いけど、信頼してる
言外にそういわれた気がして
そんな不安を払しょくさせるように、俺は安心させるように叫ぶ
「あぁ!勿論だ!」
「あらあら、本当にかわいいご主人様だこと」
最初は少し怖かった存在だけど
愛情を向ければそれ以上に深い愛情で返してくれるその様は
とても愛おしく思えた
だからこそ、彼女をもう一度一人にしてしまうなんて事はあってはならない
たった一日だけど、彼女は俺にとって居なくてはならない存在になってる
何が何でも絆石を稼ぐんだ
「頼りにしてるわね、ご主人様」
深淵女王が微笑む。
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【深淵女王】との絆が深まりました
絆pt +3
絆lv2→3
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情けでも、同情でもない、俺を信じるが故の温かい言葉。
胸が、熱くなる。
「そうだ、名前をつけてもいいかな?」
俺は、深淵女王を見上げる。
「名前...?」
「『深淵女王』って呼ぶのも、なんだか堅苦しいし」
「ふふ、確かにそうね」
彼女が楽しそうに笑う。
「では、そなたに好きな名をつけてもらうとしましょうか」
俺は少し考える。
深淵...闇...でも、優しい。
「アピサル...っていうのは、どうかな?」
「アピサル...?」
「深淵を統べる、という意味を込めて」
「アピサル...」
彼女――アピサルが、その名を口にする。
「悪くないの。気に入ったわ」
そして、俺に微笑みかける。
「では、今日からわらわはアピサル。よろしくね、ご主人様」
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【深淵女王】に名前をつけました →【アピサル】
【真名の契約】が行われました
絆Lv +5
絆Lv3→8
絆pt +5
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「やった!5ptも!」
これで、合計113pt。
絆lvっていうのも気になるが今はとにかくガチャを回すためのptだ。
俺は、インベントリを開く。
9個の卵。SSR×1 SR×6 R×2
手元にあるポイントで孵化させる上限はSSR一つか、SR二つか、SR一つとRを二つ
絆を稼ぐ頭数を増やすのならばSSRは論外だ
「それにランクやサイズが小さい方が...維持コストも低いはず」
維持コストを稼ぐための召喚で維持コストを増やし過ぎてはいけない
俺はとりあえず小さい卵から確認しようと銀色のレア卵を取り出すと、それは
「ちっさ」
わずか3cm程の小さすぎる卵だった
「コストが安くても、この危険な灰の平原で戦力にならない存在が生まれても困るしな...」
ガチャキャラが死んだ場合の救済処置があるかどうかもわからない
「よし、決めた」
俺は立ち上がる。
「SRとRの卵を2つ孵化させて、ガチャも回そう」
「ふふふ、楽しそうね」
「あぁ!今日はたくさん交流して、絆ptを稼ぐんだ」
「その意気よ。どの卵を選ぶの?」
俺は3cm程の銀卵をしまい、次に大きかったRの30cm程の銀卵と、SRの1mほどの金卵を取り出し手をかざす
浮いた25ptはガチャに回すことにしよう
【孵化させますか? Y/N】
「頼むぞ...」
Yをタップ。
するとアピサルの時と同様卵にヒビが入り、卵が割れる
1mほどの卵が先に割れ中から優しい光が溢れ出し俺を包み込んだ
「え?」
温かく、慈愛に満ちた光
まるで母親に抱かれているような安心感
「これは...」
そして卵から出てきた存在に俺は息をのむ――
「......美しい」
思わず言葉が漏れた
そこにいたのは、可憐な天使だった
身長160センチほどの小柄な体に、純白の羽根
透き通るような白い肌と、淡いピンク色の髪
深い青の瞳は、まるで空の色を映したよう
俺が今まで見てきたどんな女優よりも美しく、神々しかった
「君は...天使なのか?」
「私?...私は...」
天使が頬に人差し指を当て、首をかしげながら近づいてくる
その仕草があまりに可憐で、俺は思わず見とれてしまう
彼女の白く美しい肌に、光を反射しほのかに光るぷっくりとした唇に、魂まで吸い込まれそうになる感覚を覚え、思わず吸い込まれそうになって――
カプ!
「痛っ!?」
――何かが俺のほほに噛みついた
慌てて横を見ると、そこには
「ピー?」
「ひよこ?」
全身に光り輝く立派な鎧を纏った、30センチほどの大きなぬいぐるみサイズのひよこがいた
「ピーピー!」
そのひよこはまるで俺を重大な危機から救ったとでも言わんばかりに胸を張っている
「ピッ!」
なんというか...癒される
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名前:【雛勇者】
ランク:英雄級
HP:1,200 MP:800
属性:光
保有スキル 雛光魔法 他(一部ロック中)
維持コスト:2絆石/日
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「ひな...いや、ひよこ勇者...かな?ひよこなのに勇者?」
小さくてかわいいけど、ランクは英雄級。頼りになるのは間違いないだろう
もしかしたらさっきインベントリにしまった3cmの卵からもすごく強いキャラクターが生まれる可能性もあるのかもしれない
「ピー」「あの...」
天使とひよこがそのかわいらしい上目遣いで遠慮がちに声をかけてくる
何だこの癒しコンビは
絶世の美女天使×癒しモフモフ
いや、天使の羽もモフモフと考えたら
絶世の美女×モフモフ天使×癒しモフモフ
モフモフがフィーバーしててもうキュンが止まらない
「私たちに、名前をいただけませんか?」
「ピーピー!」
「いいのか?...」
可愛いおねだりに即座にイエスといいたかったが、召喚スキルによる強制思考ではないかが不安になり、つい確認してしまう
魂で繋がっているからか、彼女たちが本心からそれを望んでいることを察しているのに
一度臆病になってしまった心は中々治らないらしい
「...君たちは俺に従ってくれるか?」
「もちろんです!」
「ピッピィ!」
孵化したてのアピサルは、こちらを品定めするような態度だったのだが、この1匹と1人はそんなこともなく、純粋でキラキラした瞳で俺を見つめてくる
悪魔と天使と勇者、その違いなのだろうか?
確認という無粋な行為をした自分の愚かさも浄化されていくほどのまぶしさだ
(勇者に天使...その肩書に偽り無しか)
改めて天使を見つめて
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名前:【戦天使】
ランク:神話級
HP:3,500 MP:5,000
属性:聖・光・癒
保有スキル:聖光魔法 他(一部ロック中)
維持コスト:3絆石/日
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「君の名前はマリエル」
「マリエル...」
「君の可愛さと可憐さにピッタリの名前だと思うんだ」
天使が自分の名前を口にして、嬉しそうに微笑む
「素敵な名前を賜り感謝いたします!」
そしてクリクリした期待のまなざしを向けてくる勇者の前に跪き、視線の高さを出来る限り合わせる
「君はピー助だ」
「ピ!?」
「安直かもしれないけど、君には誰からも親しみを覚えられそうな名前がピッタリだと思ったんだ」
「...ピっ!」
最初こそショックを受けたような表情だった雛勇者だったが俺が理由を説明すると、そういう事ならと嬉しそうに飛び跳ねる
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【戦天使】【雛勇者】との絆が芽生えました
絆pt+6
絆lv0→1
【戦天使】に名前をつけました →【マリエル】
【雛勇者】に名前をつけました →【ピー助】
【真名の契約】が行われました
絆Lv +5
絆lv1→6
絆pt +10
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読み通り、アピサル一人の時よりも早い速度でポイントが加算されていく
頼もしい仲間も増えて、不安だった心に光がさしていく
というか英雄級のピー助や神話級のマリエルがHP4桁前半なのに、HP 5桁後半に突入してるアピサルってどんだけ強いんだろう
「ありがとうございます、主様。神とつながりが途絶え、道を見失った私に新たなる道をくださった事心から感謝いたします。」
物思いにふけっている俺の眼前で、マリエルが膝をつく
「これからリュウト様を世界の終わりまで神と称え、お支えすることを誓います」
「神!?いや、そんな大それたこと思ってくれなくても!?」
俺の困惑をよそに、マリエルは姿勢を崩さない
「ピ~ピ~!!」
ピー助はやるじゃないかこのぉ~とでも言わんばかりの、そのモフモフには似つかわしくないゲスっぽい表情で翼を起用に折りたたんで、俺の脛をつついてくる
「ピー助!からかうなよ」
「ピピィ♪」
俺をからかったと思ったピー助だったが、今度は自分の番と言わんばかりに、俺の前でちょこんと足をたたみ、剣で十字を宙に刻んだ後、剣のつかを差し出してくる
「ピィ...」
(騎士の忠誠ってやつかな、ここまで真剣に...)
二人の瞳を見る。
真っ直ぐで、迷いがない。
(...拒んだら、失礼だ)
召喚者だからって、傲慢にふるまうべきじゃない。
二人の意思を、尊重したい。
「...わかった、俺も二人の主として恥じない人間として生きることを誓うよ」
「慈悲深き主の御心に感謝いたします」
「ピィ~」
そして次の瞬間――
「では、誓いの口づけを」
マリエルが俺の頬にそっと唇を寄せた
「え?」
軽いキス
でもそれは前世で受けたどんな愛情表現よりも脳をとろけさせるほどの衝撃で...
「マリエル?ってうわぁぁぁぁぁ!?」
混乱してる俺の体に何かが巻き付き、俺を勢いよく持ち上げた
それはアピサルの長い尻尾で俺の体を瞬く間に胸元へ抱き寄せる
「うわぁっ!?」
凄い衝撃だったはずだが、あまりのクッション性に俺にダメージはない
「そこの悪魔!主様に何をなさるのですか!?」
「何を言うのこの淫乱天使。絆を深める為と思って仕方なく見守っていれば、わらわですらまだ踏む込まぬ領域に土足で踏み込むとは!」
「何が淫乱天使ですか!?そういうあなたは淫魔そのものではないですか、なんですかその破廉恥な姿は」
「わらわを淫魔と同列に語るとは、死にたいようね、小娘」
アピサルの声が、今までと違う。
冷たく、鋭く――本気で怒っている。
(アピサル、マリエルに嫉妬してる!?)
「わらわの主は、わらわだけのものよ。横から出てきた小娘が、主を奪おうだなんて――」
「上等です、天使が悪魔から主を御救いいたします!」
マリエルが、ピー助を抱え上げる。
「行きますよ、勇者!」
「ピィ!?」
「天使と勇者のタッグで、悪魔を滅っするのです!」
突然繰り広げられる痴話げんかと、巻き込まれたヒヨコ。
数瞬の後、地面には黄色い羽だけが散らばっていた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【アピサル】【マリエル】【ピー助】との絆が深まりました
絆pt +9
━━━━━━━━━━━━━━━
「...賑やかになったな」
俺は、苦笑する。
でも――さっきのアピサルの言葉
(わらわだけのもの...か)
彼女も仲間召喚に納得してくれていたけど
仲間が増える事で自分が裏切られ、捨てられる
そんな不安を覚えさせてしまったのかもしれない
(死のうとしていた俺を包み込んでくれたアピサルを不安にさせるなんて、俺はなんて配慮が足りない屑野郎なんだ...)
目の前でじゃれ合う悪魔と天使。そして散る黄色
(でも――)
皆が感情をぶつけながら生き生きとしている様子が、俺は素敵なものに思えた
(――アピサルにとっての拠り所が、俺だけじゃなく、仲間皆になるのが一番の理想だよな)
温かい気持ちと、少しの不安。
性急な変化は良くないかもしれない、だけれどゆっくり、確実に絆をつくっていきたい
「頑張らないとな」
絆を深めて、絆石を稼いで、みんなを守る。
それが、俺の使命だ。
━━━━━━━━━━━━━━━
第2話 了
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