【10連ガチャ】『追放されたので絆ガチャ回したら、虚無界に封じられていた深淵女王がSSRで出てきて俺に依存してきた件』
竜将
第1話:虚無の淵から
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第1話:虚無の淵から
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「リュウト、悪い。お前を、クビにする」
「え?」
それは幼馴染で、頼れる親友。ついには国の英雄級と成った、俺たちのパーティーリーダー、彗星のランザから発せられた一言だった。
共に生まれ育ち、互いに切磋琢磨し、15歳の成人で故郷を出てパーティーを組んで活動して4年間、俺たちは様々な苦難を一緒に乗り越えてきた。
それなのに、どうして。
「ここからの旅に、お前は連れて行けない。お前は……」
ランザの顔が苦悩にゆがむ。
その時、パーティーメンバーがランザの言葉を引き継いだ。
「足手まといなんだよ」
「おい!?」
「ランザ、はっきり言ってやった方がこいつの為だ。加護も得られない雑魚は、俺たちのようなS級パーティーにはふさわしくない」
加護。
それはこの世界において、戦闘職に必須とされる神の祝福。
俺たちが所属するヴェルディア王国では4人に1人の確率で守護神ガルド=イグノア神の加護を授かることができる。
効力は基礎ステータスの向上、怪我の治癒、そしてガルド=イグノアのつかさどる炎を自在に操る力を得る事
そして敬虔な信徒であればあるほど、優秀な戦士であればある程、加護のlvが増していく
ランザの加護はLv3
lv3ともなれば、聖騎士団長等の確固たる地位につくのがふさわしい英雄として扱われる
冒険者でありながら、先日は国王にも謁見を許された。
確かに俺は加護もスキルも授からなかった。それでも、俺を見捨てることなく、親友として共に歩んでくれたランザの助けになろうと、これまで戦闘以外の面で、前世の知識もフル活用し、彼と、パーティーメンバーを支えてきた
「確かに加護のない俺は戦闘では役立たずだ。だけど皆を支えるためにサポートに徹し、チームに貢献してきたはずだ、それなのに――」
「貢献?」
戦士の一人が、鼻で笑う。
「寄生の間違いだろ、お前のやってることなんざ誰でもやれる」
「そうですね、簡単に変わりが見つかるようなことしかできないような人間は、S級のパーティーメンバーに、英雄の相棒に相応しくありません」
「ランザの幼馴染だからでパーティーの初期メンバーだからって調子乗りすぎ、本来ならランザを悩ませることなんかしないで、さっさと自分から辞めるべきだった」
苦楽を共にした仲間たちから
冷たい言葉が、次々と突き刺さる。
「ガルド=イグノア様の加護を得られない異端が、いっちょ前に手柄アピールか」
「こいつのせいで、俺たちが神に見捨てられたらどうするんだ」
「ランザはLv3の加護を得たんだ。それに相応しい仲間と、相応しい振る舞いをすべきだ」
憎悪と冷笑があふれる空間で
ランザは、つらそうな、苦しそうな顔をする。
でも、何も言わない。
「リュウト...実は神殿から神託が公表された」
地面を見ていたランザが、俺の目を真っすぐ見る。
「魔王が、復活するらしい」
魔王。
灰の平原といわれる大陸中央部に現れる、災厄の化身。
「聖騎士も、冒険者も、戦闘階級は魔王討伐に参加することが義務付けられた」
「それならなおのこと、俺がみんなをサポートして!」
「リュウト!」
ランザの声が、部屋に響く。
それは空間を震わせ、俺に敵意を向けていたパーティーメンバーの表情をも凍り付かせる
加護の力を使うと、身体能力などが向上するが、lv3の加護を得てからのランザは、正直人間離れしすぎている
これが国が認める英雄クラスの実力...
下級の魔物相手でも命をかけなければならない俺なんかとは、世界が違う
「魔王なんだ...国中の英雄たちが集結する戦いだ...永遠に続く戦いに終止符を打つための戦、お前には、何もできない」
そんな英雄たちが集う魔王討伐戦
現代知識があろうが、多少人よりも気配りができようが
それがいったい何の役に立つというのか
「だからお前の旅は、ここまでだ。リュウト」
はっきりとした、別れの言葉。
国の英雄の仲間入りをした親友と、何物でもない俺との立場の差。
本当はわかってた
何年も前から
視界の端に、いつものステータスウィンドウが浮かぶ。
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【リュウト】
年齢:19
職業:冒険者(無所属)
加護:地球神ガイアlvMAX(領域が異なります)
【スキル】
・絆ガチャ(ロック中)
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(なんだよ...絆ガチャって...生まれた時からあるくせに、一度も効果が出たことがない)
転生した直後からスキルの使い道を探し出来る限りのことをやってきた
(親をどれほど愛したって...ランザほどの親友ができたって...何も起きないゴミスキル)
転生時からある加護やスキルのせいか、この世界で何も得られなかった9年前の儀式から
ずっと
俺はこの世界になじめない
この世界で俺は、何物にもなれない
(昔は、違ったのにな……)
昔はランザとも対等だった。いや、それ以上だった。
この世界に異世界転生した俺は、物理法則が違うこの神と魔法のある異世界で知識チートこそできなかったが、前世の経験値から、幼少期は神童ともてはやされた。
俺は村の英雄で
ランザはそんな俺をキラキラした目でおいかけていた
精神年齢の上だった俺は最初は可愛い弟分としてランザを認識し
そして共に切磋琢磨する日々の中、俺たちは親友になった
そして10歳の時。
全国民が受ける、祝福の儀式。
皆が何かしらのスキルを授かり
さらに神に選ばれし敬虔なる信徒は加護も授かる
有用なスキルと加護を授かれば大成する事間違いなしとされる重要な日
ランザは神の加護と、強力な戦闘スキルが発現した。
なのに、俺には、何もなかった。
いや、スキル自体は生まれた時からあったのだが...何の役にも立たないゴミスキルだった
そこからだ。
俺とランザ、追いかける立場が入れ替わり、そして決して追いつくことができないほどの差が開いていったのは。
ランザに何とか食らいつく、15で成人し共に村を旅立ち、ともに歩いた4年の旅
普通であればそれだけ神の為に戦い続ければ加護を授かってしかるべき
それでも俺にはなにもなかった
不信者、異端、異教徒
そんな蔑みを受ける俺を、ランザはいつまでも友として受け入れてくれた
だから、彼の為に出来ることを、精いっぱいやってきたつもりだった
でも
(ランザとなら、俺もいつか...そんな夢を見るのは、もう終わりか)
ランザはいい奴だ。
どこまでも真っすぐで、俺の自慢の幼馴染であり戦友であり親友
そんなランザが、俺のせいで苦しんでる。
だったら俺は、もう我がままを言うべきではない。
異世界転生という奇跡に夢を見るのは、もう終わりにすべきなのだろう。
「わかった。ランザ、今まで俺を見捨てないでくれて有難う」
一生の友と思っていた者に向ける、別れの言葉。
「魔王討伐の成功を、祈ってる。」
共に歩めると思っていた未来との決別
なるべくスマートに言うつもりだった。
でも、どんな声で言ったのかも、どんな表情を浮かべてたのかも、まったく思い出せないくらい、一瞬で心が空っぽになってしまっていた。
◇◇◇
それからどれだけ歩いただろう。
1日か、3日か。
王都にも、近くの村にも居たくなかった。
かといって、故郷に戻る場所もない。
両親は過去に起きた戦争で既に死んでいる。
聖戦に参加すれば俺に加護が宿ると信じ、参戦し、死んだ
俺にはもう何も残ってない
とにかく何もかもから逃げるように、ひたすらに歩き続けた。
かつての友の活躍を耳にする可能性が怖くて、人を避けて道なき道を進んだ。
次第に付近にいる魔物が手ごわくなり、俺のようなスキルも加護もない雑魚では逃げるのも難しくなってきて、怪我も絶えなくなってきた。
(ポーションが切れたら...二度目の人生も終わりだな)
そして気が付けば、国境を越えていた。
灰の平原。
大陸中央部にある、諸国が覇権を争うための戦場。
曰く、神の望む聖地
曰く、魔力汚染の進む不毛の地。
曰く、魔王が誕生する、呪われた土地。
そして、神への信仰心を命を持って証明する狂気の地
加護のない俺のような人間が足を踏み入れたら、生きては帰れぬ絶望の場所。
しかし、それでも俺は、足を止めなかった。
(もう、疲れた...終わりにしよう)
異世界転生を知った瞬間から、自分は特別な存在になれると思っていた。
もう、毎日自分に期待し、毎日自分に裏切られる日々に疲れ果ててしまった。
だから、こんな人生には幕を下ろそう。
視界の先に、魔物が見える。
ランザであれば難なく倒すであろう、中級の魔物。
しかし俺では、どうあがいても太刀打ちできない。
(あれと戦って、華々しく散ろう)
俺は自分の装備に手を伸ばそうとした。
しかし、手が動かない。
(...そうか...もう自分の終わり方にすら、どうでもいいくらい...心が、枯れたんだな)
頭では冷静に自分を分析できるのに、心が、体が、もう自分の意思とは関係のない挙動をしていた。
上位の魔物のあふれる灰の平原で、ただボーっと立つだけ。
(これが、虚無ってやつか...)
死ぬその瞬間まで、穏やかに呼吸をするだけの存在。
(...もう...どうでもいいや)
焦点の合わぬ視界がうっとおしくなったのか、瞼は閉じられ。
呼吸すら煩わしくなったのか、胸も上下しなくなる。
かすれゆく景色。
消えゆく鼓動。
...もう何も感じない。
その時。
――ピロン
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【虚無界】と接続しました
スキル『絆ガチャ』の封印を解除します
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(え...?)
うっすら目を開けると、視界に淡い光のウィンドウが浮かんでいる。
文字が、流れる。
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【絆ガチャシステム】
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地球神ガイアより授かりし、絆の力
解放条件:地球神ガイアが指定した領域との接続
→ 達成
地球神ガイアの加護が一部発現します
絆ptシステムを開放します
絆ガチャシステムを開放します
インベントリシステムを開放します
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(何だ...これ...)
死にかけていた心に、小さな光が灯る。
どれだけ願っても解放されなかったスキルが、死を決意した瞬間に解放される
(やっと...?死にたくなるほどの虚無になる必要が...あった...?)
ふざけるな、何をいまさら
そんな気持ちが沸き上がるが、俺の手は自然と中空のウィンドに伸びた
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【10連ガチャ】(使い捨て)
【絆ptガチャ】(5pt/回)
現在の絆pt:0
現在の絆石:0
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(これが俺のスキル...?)
「っは...なんだよこれ...」
苦笑が、こぼれる。
(こんなスキルも加護もなければ、もしかしたら俺もこの世界でスキルを授かって、もしかしたら、まだ、ランザと戦えていたのかもしれないのに...)
――でも
(これが、有力なスキルなら...また、ランザと肩を並べられる?俺も、この世界で、生きていける?)
先ほどまで消えかかっていた鼓動がうるさいくらいに高鳴る
俺は深呼吸を何度も繰り返し震える指を【10連ガチャ】の文字に重ねようとする
しかし、指が、押すことを拒否している
(期待するのが怖いのか...?また裏切られるのが...怖いんだ)
「でも!!これを知らずに死ぬことなんかできない!」
俺は震える指をもう片方の手で抑え込む
「いくぞ!!」
そして叫ぶ
「じゅうぅぅぅれんっっ!ガチャアアアアアアアアアア!!」
叫び声と共に文字をタップした瞬間、足元に淡い光の線が走った。最初は細い一本の線だったそれは、まるで生き物のように這い回り、複雑な幾何学模様を描いていく
その魔法陣に内包された圧倒的魔力量に、遠巻きに見ていた魔物たちが蜘蛛の子を散らしたように逃げていく
光の線は円を描き、その中に星型を、さらにその中に古代文字のような謎の記号を刻み込んでいく
直径3メートルほどの魔法陣が完成すると、淡かった光は急激に強さを増し、俺の影を長く地面に投げかける
「うわっ!」
魔法陣が突然拡大を始める。3メートルから5メートル、8メートル、そして遂に直径15メートルの巨大な魔法陣となった時、その外周に何かが浮かび上がってきた
「これは…卵?」
2個、3個、5個…最終的に10個
鈍い銅色に光る、人の頭ほどの大きさの卵が宙に浮いている。
「これが召喚!?」
とんでもない光景に声が裏返るが、しかし、それで終わりではなかった
シャラン
という鈴の音のような音色と共に、銅色の卵全てが地面にたたきつけられ、その衝撃で表面に亀裂が走る
そこから溢れ出した光に包まれる、卵は美しい銀色へと変化していた。これはまるで――
(まるでソシャゲのクラスアップ演出!懐かしすぎる!!)
俺の胸は突然訪れた超常現象への驚きと懐古の念とでぐちゃぐちゃになる
再び、あの鈴の音が鳴る
シャランッ!
今度はさっきよりも甲高く、より衝撃的に卵がたたきつけられる
そして10個の卵のうち、8個が眩い金色へと変化した。まるで太陽の欠片のように輝く黄金の卵たち。
「8個も金枠!?え?これってどうなの!?」
これは運がいいのか悪いのか、頭を悩ませていると、止まると思われた魔法陣が急に再稼働し、激しく発光しだす
「生まれるのか!?」
そして、三度、あの音が
シャラァァァンッッッ!!
今度は数段高く、情熱的な鈴の音
「まだランクアップするのか!?」
俺の驚きをよそに、金色の卵のうち2個がさらなる変化を見せ始めた。
虹色の光が螺旋を描きながら卵を包み込み、表面に七色の輝きを宿していく。
「虹色の卵...」
先ほどの金色とは違い、間違いなく、最高のレアリティだと確信できる色
それが2個
「これは間違いなく期待していいんだよな!?」
そして、そんな興奮する俺の目の前で卵はさらなる変化を遂げていく
ゴゴゴゴゴ…
地響きのような音と共に、虹色の卵がゆっくりと巨大化していくのだ
人の頭大から人の背丈、そして小屋ほどの大きさへ
「え...?」
気づけば俺は見上げるような姿勢になっていた
2個の虹色の卵は成長を止めることなく、高さ10メートルを優に超える大きさになる
魔法陣の光がさらに強くなり、あたり一帯を照らし出す。遠巻きにこちらをうかがっていた魔物たちが一斉に逃げていく中、俺だけが茫然と立ち尽くしていた
「これを...俺が召喚したのか」
卵の召喚が終わったのか、俺の視界にお知らせが浮かび上がる
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【孵化システム】
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卵を孵化させるには絆ptが必要です
・SSR:100pt
・SR:50pt
・R :25pt
・N :5pt
※初回孵化のみ無料
※初回特典:絆pt 100を付与
※孵化させなかった卵はインベントリにて保存可能です
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「え?孵化って無料じゃないの?」
迷う。
クラスアップ演出の回数からして最初の
銅色がN(ノーマル)
銀色がR(レア)
金色がSR(スパーレア)
虹色がSSR(スペシャルスーパーレア)
だと思う
虹色の卵はでかいし強そうだけど、ゲームじゃないからご飯なども必要だろう
その辺の事情はどうなっているのだろうか
システム画面を色々見てみるが、詳しい説明はどこにもない
(絆ptの稼ぎ方とか詳しい説明ないのかよ!?ガイア不親切すぎんだろ!?)
でも。
(...考えてもしょうがない、どうせ無料ならSSRを選んだ方がいいな......でも、ご飯問題があったときに困るから、少しでも小さい方を選ぼう)
俺は、虹色卵のうち、少し小ぶりな方を選び手を当てる
【孵化させますか? Y/N】
迷わずYをタップする
するとそれ以外の卵たちは消えていく
一瞬焦ったが、どうやらガチャと共に解放されたインベントリシステムに収納されたようだ
パキッ、パキパキッ…
虹色の卵に亀裂が入り、その亀裂は蜘蛛の巣のように広がり、やがて卵の表面全体を覆い尽くす
そして次の瞬間――
ドロリ…
卵の隙間から、漆黒の何かが溢れ出してきた。
深淵とでも呼ぶべき絶対的な黒が、世界を侵食していく。
ただでさえ薄暗かった空がさらに黒く染まり、灰色の大地が漆黒へと変わる。
まるで創世神話を逆再生するように、光ある世界が闇へと塗り替えられていく。
「俺は一体、何を召喚してしまったんだ...」
脳裏に浮かぶのは己の力以上の悪魔を召喚し、悪魔に食べられてしまう愚か者の物語
もしかしたら俺はそれ以上のとんでもない事をしでかしてしまったのかもしれない
そんな不安の中、最も深い闇、深淵と呼ぶにふさわしい渦の中から、何かが這い出してきた
最初に見えたのは、艶やかな黒髪。
まるで夜空そのものを編み上げたような美しい髪が、重力を無視するようにゆらめいている。
次に現れたのは、白磁のような肌と赤く輝く目
月光よりも美しく、雪よりも純白な肌と、雪原に埋め込まれたルビーのように輝く瞳が闇の中で淡く光を放っている。
そして――
「...大きい」
現れたのは女性の上半身だった。しかし、その大きさは人間の常識を遥かに超えていた
上半身だけで10メートル近くはある
首をほぼ垂直に傾けて見上げなければならないほどの圧倒的なスケール
そのあまりの迫力に、俺は思わず息を呑んだ
そして――
「...大きい」
圧倒的なサイズの上半身。
そしてそこには、圧倒的なサイズの双房が。
俺が埋もれることも、横たわることも余裕だと確信できるキングサイズのベッド。
そんな比喩が脳裏に浮かんだ瞬間、俺は慌てて視線を逸らした。
(いかん、何を考えているんだ)
邪念を振り払い改めて現れる存在を注視する
やがて現れたのは腰から下
それは人間ではなく、巨大な蛇の下半身だった
艶やかな鱗に覆われた蛇身は上半身の倍はあり、深淵を這うように動いている
一言でいうなら、上半身がサキュバスのラミア、だろうか?
ぱっと見ただけで30mは超えるであろう圧倒的な存在が、世界に顕現し、あたりを見渡している
やがて巨大な悪魔が、ゆっくりと周囲を見渡す。
(これはすごい存在を引き当てた気がする)
じっくりと注視していると、俺の視界にステータス画面が浮かんだ。
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名前:【深淵女王】
ランク:創成級
HP:50,000 MP:30,000
属性:闇・毒・魅惑
保有スキル 深淵魔法 他(一部ロック中)
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「創成級...?」
ランクの詳しい概念はわからないが、その単語からしてとんでもない存在であることは間違いない
属性もスキルも如何にも危険そうで、そのステータスから感じ取れるヤバさに言葉を失っていると――
――目が合った
深い赤の瞳
キリっとしたアイラインが性格のきつさを表しているようだが、ぷっくりとした唇に、左目の下と口の下にある二つの黒子が女性の柔らかさを示しており、可愛いと美しい、色気と艶を全て内包した神話的美に心奪われる
「あらあら...貴方が、わらわを呼んだのかしら?」
どんなオペラ歌手でも出すことができないであろうα波を内包した癒しと
どんなスター女優でも出すことができないであろう色気が混在した魔性の音色。
それを聞いた瞬間、俺の思考が――止まった。
(頭が...クラクラする...)
「そなたの孤独が魂を介して伝わってくる...大丈夫よ、わらわにすべてを委ねなさい、わらわが支配し、愛してあげる、わらわに支配される限りそなたが孤独におびえる必要はないわ」
(この美女に...従いたい、支配されたい)
「そう、良い子ね、永遠の服従こそが永遠の愛、そなたは永遠に――」
(支配されて、また――)
『お前をクビにする』
――必要とされなくなる
嘗ての親友の言葉を思い出し俺の意識は一瞬で覚醒する
「――っは!っはっは...お、おれは...今!?」
そんな俺の状態に違和感を感じたのか、目の前の強大な存在が首をかしげる。
「わらわの魅了を受けて理性を保ってる...?力が封印されてるのかしら?それでも人間にあらがえるようなものではないはずなのだけれど」
深淵の女王は自分の体をペタペタと触りながら、瞳の奥に深い憎悪を宿していく
「出せるのは3割...2割かしら...記憶にも封印があるわね...それにそなたに宿る神の気配...これもふざけた神の遊戯というやつかしら...本当に、憎たらしい」
その様は先ほどとは打って変わって、魔王や魔神と自己紹介されれば一瞬の躊躇なく納得できる程恐ろしいもので、今まで自分の中で人外レベルMaxに君臨していたランザの加護発動状態が可愛く思えるほどの存在感があった
関節という間接がガタガタ音を立てて震える
サキュバス的な上半身や先ほどの脳がとろけそうなほどの魅力のせいで勘違いしそうになっていたが、深淵の女王というのは、SM的な女王様ではなく、深淵世界を支配するガチの女王という事なのかもしれない
そんな恐怖の存在が、ふと柔らかい空気を発しながら、俺を優しい目で見つめてくる
「そなた。大人しくわらわの魅了を受け入れたほうが、幸せになれるわよ?」
「――幸せに?」
「そう、わらわは決して裏切らない、そなたがわらわに支配される限り、わらわは支配する者を愛し続ける。これは永遠の愛の儀式なの」
「永遠の愛――」
「そなたも、裏切られるのに疲れたのでしょう?わらわと永遠の愛を紡ぎ、楽になりたいと思わない?」
甘い声色で、この世の幸せを説く説法者のように、不穏な言葉を吐き続ける悪魔
それでも、召喚スキルによって魂が繋がっているからなのか、彼女が真剣に愛を伝えてきているのがわかった
彼女は騙そうとか、召喚主から支配権を奪ってやろうとか、そういう利己的な考えではなく、本心から傷つき虚無へとつながった俺の心を救おうとしているのだ
悪魔・深淵の女王
彼女は俺などでは計り知れぬ程の長く生き、そしてその分、裏切られてきたのだろう
俺を見限った親友
親友に追いつけなかった惨めな自分。
自分と親友
たかだか2度裏切られただけでも、俺は絶望を感じた
甘い声で、とろけるような目で、永遠の愛を求め、支配にこそ真実があると断言する彼女の生涯にはどれほどの裏切りと絶望があったのだろう
それを思うと、目の前の存在が急に、雨の日に捨てられた子犬のように
今すぐ抱きしめ、愛してあげなければならない存在のように思えてきた
見るからに強大な力を持つ悪魔が、心の部分では、誰よりも脆く繊細で孤独というギャップ
本当に救いを求めてるのは、俺ではなく、彼女の方な気がした
だって彼女もまた、俺が絶望の末リンクしてしまった【虚無界】を通じてこの世界に召喚されたのだから
「大丈夫だよ」
「え?」
「俺は、大丈夫、俺は君を消して裏切らない。裏切られる辛さを知ってるからとか、そういうんじゃなくて、ついさっきまですべてを諦めようとしてた俺にとって、君は、希望であり救世主なんだ、だから俺は君を裏切らない」
悠久の時を生きたであろう悪魔に対し、何と声をかければ今この胸を占める思いが伝わるのかわからないけど、それでも思いの丈の1割でも伝わってくれと願いを込めながら言葉を紡いでいく
「19年かけても世界に馴染めず、友にも追いつけない、ゴミみたいな俺なんだけど、誰からも必要とされない辛さは痛いほどわかる、一人の苦しさもすごくわかる。だからさ、君みたいに孤独を恐れる子を、ほっとくなんて絶対にしない、自分が死ぬほど苦しかったことを俺に希望を届けてくれた恩人にさせるなんてことは絶対にしない。とにかく俺は、君を絶対に裏切らない。支配なんてしなくても、されなくても、俺と君は一緒だ」
「...あらあら、随分と大きなことを言うのね」
「あぁ、でも嘘はついてない」
「...そうみたいね。わらわの魂がそなたの魂と紐づいているせいか、感情が真っすぐ伝わってくるわ...ちょっと慣れない感覚だけれど...これはこれで悪くないわ」
「そういってくれてうれしいよ」
俺は、彼女のやわらかな雰囲気にすごくホッとし、胸をなでおろす、しかし――
「そなたが裏切ろうとした時もすぐにわかりそうだしね?」
まるで前世でスマホにGPS監視を入れられたかのような感覚に、今世ではかいたことの無いタイプの冷や汗がながれる
「ふふふ、ま、ひとまずはご主人様と認めてあげるわ。よろしくね?すぐに死んじゃだめよ?」
先ほどまで死のうとしてた俺は、その問いに自信をもって答える事が出来なかった
でも――
「...頑張ってみる」
小さく、でも確かな声で答えた。
彼女が、ふっと微笑んだ。
「ふふ、期待してるわ。ご主人様」
その微笑みは、悪魔よりも天使の笑顔そのものに見えた
━━━━━━━━━━━━━━━
【深淵女王】との絆が芽生えました
絆pt +3
絆lv0→1
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(絆pt...?なるほど、絆を深めてガチャを回して強くなれ...そういうことか?)
この世界に絶望し他タイミングのスキル開花
まるで異世界転生した異端の俺が絆を紡ぐべきは、この世界の住人ではなく、同じく異世界の存在とでも指示されているような感覚
(地球の神ガイアってのは、俺に何を望んでるんだ...)
生憎俺には前世の死因も、何故転生したのかの記憶もない
この世界にやってきた理由も、前世の知識を保持してる理由も、スキルを与えられた理由もわからない
それでもこれだけはわかった
俺の転生人生が今この瞬間、本当に始まったのだと――
◇◇◇
――深淵女王の視点
(支配なんてしなくても、一緒だ...?)
嘗て深淵の女王として深淵界の全てを支配下に置いた巨大な悪魔は、己の眼下で寝息を立てる小さな人間の言葉を反芻する。
(そんなこと...あり得るのかしら)
数千年の孤独。
数え切れない裏切り。
支配こそが愛。
それだけが真実。
(でも...)
今は閉じられた、彼の真っすぐな瞳を思い出す。
(この感覚...悪く、ないわね)
魂の紐づき。
寝ている今でもなお、信頼、愛情、まっすぐな感情が伝わってくる。
嘘のない、純粋な言葉。
(ふふ...支配に染まった心からは伝わってこなかった温かい感情...これが本当の愛とでもいうのかしら?)
深紅の瞳が、月明かりに照らされる。
それは期待なのか、それとも――
(心地が良いのは間違いないけれど、脆いのもまた事実...寝てる無防備な間にたっぷり時間をかけて、念入りに魅了してしまおうかしら)
満たされるが脆い愛か、満足する事はなくとも壊れることの無い支配か――
「うぅ...」
(そなたも裏切られたのだったわね...親友に...そして自分に)
気持ちよさそうに寝ていたかと思えば、突如うなされ苦しそうな顔をする男
(自分の辛さを棚にあげて、わらわの為に言葉を尽くし、心砕いたそなたを、まずは信じてみようかしらね?)
深淵の女王は何もない平原で、苦しげに寝そべる矮小な存在を、壊さぬよう優しく尻尾で救い上げ、己の胸元へといざなう
悪魔のひやりとした肌は、天使のようにぬくもりを与える事はないけれど
それでも、まっすぐに愛情を伝えてくれた存在に、少しでもお返しがしたくなった
そんな、ギブアンドテイクの様な感情も、長く感じる事がなかったもので、とても微笑ましく感じてしまう
「いい夢を見てくださいな、わらわの愛しいご主人様」
◇◇◇
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