第3話

 ちょっとおっかないことに、俺はクイーンサイズのベッドに縛り付けられてしまった。

 流石に少しは抵抗しようとしたが、いつの間にかかけられていた謎の魔法のせいで身体がふらつく。タイトルはええと……『氷の爆笑』だったっけ。何かそんな洋画に、こんな感じの展開があった気がする。というかあれは刃物で滅多刺しにされるような展開でなかったか? もしやこいつ精液を搾り取ったら殺すとかいう異常性癖の持ち主では? それを思うと流石に怖くなった。


 すると傍らで嗜虐的な笑みを浮かべるのが約1名。こいつ本当に顏と身体以外はゴミだな。

 それから程よい大きさの腰に手を当て、心底楽しそうに、下着をゆっくり下ろしていく。地球上だとこいつは多分、強姦魔がジッパーを下ろすような動作に相当するのだろう。露わになった女性器から、バルトリン腺液が盛大に糸を引いていて、こちらもなかなか興奮してくる。脱ぎ捨てたのが何故か水玉パンツだったのが、幾許か興ざめではあったけど。


「さあ、楽しい楽しいお馬さんごっこを始めましょう」


 なるほどこのイカレた異世界の女達は、騎乗位が好きなんだろうな。

 理由は何となく察せてしまう。上に乗る方が視点が高くなるので、相手に対して上に立っている気分になるとか、優越感に浸れるとか、大方そんなところだろう。


 そうしてイリーナは双眸を獰猛に煌めかせながら、自分の上にヒョイと跨ってくる。

 垂涎の巷となっていた、ニンフォビッチの割には綺麗なサーモンピンクの大陰唇。そんなものを堂々と見せつけながら、


「あなたも男に生まれたからには、素敵な姫方とウブな恋をして、契りを結んで初夜を迎え、可愛い子の顔を見てから果てたかったのでしょうけど……残念ね。愛しさも切なさもなく、ただ情欲の赴くままに、私があなたの童貞を食い散らかしてあげますわ」


 なんて台詞を吐いてくる。どどど童貞ちゃうわ。

 というかまあせいぜい、見下している男の上で腰を振ってくれたまえ。そんなことを思っていると、艶やかで物欲しげな尻が降りてきて、垂涎の巷となっていた雌の穴に、我が逸物はすっぽりと収まった。おう苦しゅうないぞ、なかなかの締まり具合ではないか。接合部より伝わってくる快楽に浸っていると……刹那、膣が電撃でも受けたかの如く痙攣する。


「あ、あ、あはーッ!」


「は?」


 精液を一滴残らず絞り出すとか堂々宣言していたサイコ女の、実に情けない姿がそこにはあった。

 ピクピクと身を震わせ、歯を食いしばって悶えるイリーナは、あろうことか既に達していた。呆然唖然。新たにこぼれ出たる生暖かな体液が、こちらの皮膚に滲みてくる。


 自分のものでこうも乱れてくれるというのは、男として嬉しい限り。

 とはいえ「私の戦闘力は53万です」とばかりの雰囲気が、開幕直後にかくも容易く吹き飛んでしまうとは。「驕れる人も久しからず」と平家物語に詠まれているが、こいつは驕っていただけで久しさが欠片もない。


「えっとその、早過ぎね?」


 苦笑を堪えつつ、俺はボソリと呟く。


「入れたばっかじゃん。そんなに良かった?」


「お、お、お黙りッ!」


 屈辱に顔を紅潮させ、息を荒げながら、イリーナが余裕のない面持ちで凄む。

 可愛いところもあるじゃないか。俺は「愛い奴よのう」とばかりににやつき、それが余計に癇に障ったようだった。


「こ、このところ男日照りでしたの。少しばかり油断しただけのことよ。肉張形が如きに遅れを取るようなこおほッ!」


「雑魚過ぎだろお前」


 下から軽く突き上げながら、もはやギャグとしか言いようがないと俺は思う。

 もちろん性的な意味では、出来は上々で申し分のない仕上がりだ。ラノベのヒロインがあまりにもチョロいとかでチョロインなどと蔑称されることがあるが、敏感になった膣内を刺激されてまたも絶頂しているニンフォビッチ家次期当主様(笑)は、チョロく堕ちることだけを目的として開発された究極のチョロインといった感じである。


 それから行為を続けているうちに、喋らなければ非の付け所のない裸体を、こちらも好きに楽しみたくなってきた。

 身動きが取れないのが困りもの……と思っていたら、拘束が何時の間にか、イリーナの貞操観念並に緩くなることに気付く。繊維を魔力か何かで補強するタイプで、術者が汁塗れのバカ面アヘ顔を晒すようになった結果、強度が大幅に低下したのかもしれない。軽く手足をバタつかせたら、瞬く間に縛りは解けてしまった。


「さて、と」


「ふあっ」


 半ばエビ反り状態で痙攣する女体を、今度はこちらから押し倒した。

 ちょっと思うところがあって、カチンコチンになった我が13.5㎝主砲をいったん引き抜く。イリーナは目を白黒――いやこいつの場合は白と金か――させながらも、滅茶苦茶もの欲しそうに逸物を見つめてきた。なかなかにそそられる光景だ。粘液に濡れ輝きたる砲身が、自ずと仰角を上げていくのがわかる。


「ところでさ」


 ガクガクと震える白くしなやかな脚を掴んで持ち上げ、


「今度は俺の番だろ」


「え、あ、そのちょっと待……」


「待たない待たない」


 河川の源流が如くバルトリン腺液の湧き出でるところを、渾身の力を込めて貫通せしめる。

 やっぱりこちらが自由に動けるに越したことはない。イリーナは言語能力を完全喪失し、突く度に「あー」とか「おぉんあぉん」とか、発情期の野獣みたいに喘ぐばかり。ピストン運動に伴う下品な粘着音が響くごとに、理性が半分になっていく感じだ。とすれば27回目に1億3421万7728分の1かと暗算し、尻はもう少し安産型に近い方が好みかもなどと考える。女とくんずほぐれつしながら何の計算してるんだと言われそうだが、目の前の状況が状況であるが故。何処かの神父が素数を数えるようなものだろう。


 それから先程より、背中がちょっと痛い。

 微妙に鋭利な爪が、ぐさりと皮膚に食い込んでいるのだ。とはいえ背の引っ掻き傷は、以前のそれは飼い猫によるものばかりだったとはいえ、男にとっては勲章みたいなものに違いない。意識が明後日の方角にすっ飛んでいるイリーナは、不規則で荒い呼吸を繰り返しながら、世間の平均から大して離れてもいないはずの我が肉体に、四肢を絡ませしがみ付いてきている。ちょいとばかり顔を唇を舐めてやったら、汗と涙と唾液と鼻水が入り混じってか、微妙にしょっぱい味がした。


「でもって」


 そろそろ俺も限界だ。

 イリーナが体を震わせる度、膣壁が別の生き物のように蠢くので、俺の息子も濡れ放題の刺激され放題。


「そろそろ俺も射精させてもらうからな」


「ふぇっ」


「このまま膣内にぶちまけるぞ。俺の精液を一滴残らず絞り出すんだろ、いいよな!?」


「え、あ……もちろんですわよ。あなたのもの、すべて私に寄越しなさいな」


 うん、些か必死な気配だが、こいついきなり正気に戻りやがったな。

 ただまあ言葉の通り、こちらにも余裕はほとんどない。ゆっくりと腰を引き、最後に大きく一突き。イリーナが短く喘ぎ、首筋に噛みついてくる。その痛みも感じぬほど、自分の神経は亀頭に集中していた。刹那の後、出会って間もない物言う花――いやこいつの場合は物言うラフレシアか――の奥底に、男の欲望を全力でぶちまけた。


「ああー、たまらねえぜ」


 川を昇り切って繁殖の機会を得たシャケの気分が、少しだけわかったような気がした。

 ここで命果てたとしても、我が人生に一片の悔いなし……とまで言えるかは分からないが、少なくとも今までの人生で最高の瞬間であったようには思える。そうして精液を吸い上げんと蠕動運動するイリーナの膣肉の余韻に暫し浸り、逆上せた思考のまま舌を絡めての接吻などした後、大きな溜息とともにベッドに転がった。


「うふふ、やったわ」


「う、うん?」


「お腹の中、あなたの子種でパンパンでしてよ」


 イリーナの声はどうしてか、以前の嗜虐的な色に戻りつつあった。

 そして不敵な面持ちで、自らの腹部を愛おしげにさすった後、両手でVサインなどして見せる。伝説のアヘ顔ダブルピースとは微妙に違う、最後に逆転勝利をしてやったとばかりの気色。どこぞの対魔忍も同然にバカ面晒し、イキ声を部屋中に轟かせまくっておいて、いったいどういうことなのだろう? こいつのどどめ色の脳味噌の中には、相手に射精させたら勝ちみたいな奇怪ルールでもあるんだろうか?


 ただそうした疑念を問いただす前に、猛烈な睡魔に襲われた。

 先程まで体を重ねていたのは、初対面の相手にいきなり薬を盛って拉致監禁してくる超危険人物ではあった。でもまあ無茶苦茶な展開で男女の仲となり、お互いがお互いの肉体を飽くまで貪り合っていたのだから、多分大丈夫だろう。俺はそんな風に楽観し、力尽きたほっちゃれのシャケのように眠りに就いた。

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