2.画面向こう側の悪意-1
「それで、早速なんだけど見せてもらってもいい?」
ボックス席に座った2人にコーヒーを出し、大樹も向かいの席に腰を下ろす。カウンター席からでも様子が見やすい席に誘導してくれて助かる。
「これです…」
紗枝がスマホの画面を大樹に見せる。
「これは…ひどいね」
「……はい…。突然、こんなことになってしまって何が何だかわからなくて」
「この、アカウントの人は知り合いなの?」
「いえ。友達が繋がっているのと、同じ絵師さんを推しているのでアカウント名は聞いたことがあるんですけど、直接絡んだことはないです。それなのにいきなり私の描いた絵を引用して、“パクりだ”って…」
「その投稿はまだ残っている?」
「これです」
「……確かに似ているね。もちろん、紗枝ちゃんは真似をしたわけではないんだよね?」
「もちろんです!私はこの人のアカウントを見に行ったこともないですし、そもそもこの絵は…っ私が小さい頃、ルナをモデルに描いた絵なんです…っ!」
「あぁ!確かに!見たことある子だなーって思ったらルナちゃんかー。懐かしいね」
「懐かしいですよね…。何だか最近、すごくルナが恋しくて。昔描いた絵を、描き直してみたんです。それをみんなにも見てもらいたかっただけなのに…」
……るな、とは…?
誰なんだ。何だかしんみりした空気になっているが、残念ながらここからは見えない。
だがまぁ、きちんとモデルがいる上に昔から描いていた、というのなら紗枝に落ち度はないのだろう。……なら何故騒ぎになったのか、というところになるが。
*
「――で、どうだったんだ?」
「え?桐生さんも話聞いてましたよね?」
「まぁ聞いてはいたがな、見えないんだよ。どんな絵を描いているのか、どんな言葉をぶつけられているのか。あと、“るな”ってのは誰だ」
「あーすみません、そうですよね。え、とまず、“ルナ”は猫です」
「猫?」
「はい。昔、千代子ばあちゃんが飼っていて。自由に歩き回っていたので、商店街の看板猫みたいな感じの子でした。キレイな三毛猫で、人懐っこくて可愛かったんですよ。で、これが
「あー…確かに似ているな。三毛猫は柄に特徴も出やすいし、この絵の猫はどちらもデコに三日月みたいな模様がある」
「そうなんですよ!その三日月マークがルナちゃんのチャームポイントで。名前も、その三日月からとって“
「そうなのか…。でも何で、その“パクり”っていうのが大ごとになっているんだ?こっちに確実なモデルがいるなら、言いがかりだってわかりそうなもんじゃないか」
「それが、相手が中々フォロワーの多い人だったらしくて。しかも、絵を投稿したのも向こうが先。多勢に無勢みたいな感じで、反論さえ許されない状況だったみたいです」
「それは…キツいな」
「はい…。しかも、今回の件で今まで仲良く話してたはずの相手にまで罵倒されてしまったらしくって。大事な思い出を奪われた挙句そんなことがあって…人と関わることが怖くなってしまったみたいです」
今まで普通に会話をしていた人からの蔑むような視線、陰口。「自分」を否定される疎外感。大人でも精神的に堪えることを、多感な高校生が耐えられるわけがないだろう。……これは、放っておけない。
「まず、今回の案件はSNS絡みだ」
「はい、そうですね」
「俺らは2人とも、SNSには詳しくない」
「まぁ…はい」
「アイツを呼べ」
「……!はい!」
*
「――ということなんだ」
翌日、早速優斗を呼び事情を説明する。
「あーハイ、おっけ。昨日、大樹からも軽く聞いてたけど、これは確かにSNSに明るくないと厳しいかもねぇ」
「持つべきものはインフルエンサーの幼馴染だね」
「それは違うと思うけどね〜でも嬉しいよ、頼ってくれて。そのアカウントのことを軽く調べたんだけど、何かこう、自己顕示欲の塊って感じの人だったかな」
「「自己顕示欲?」」
「そうそう。今の時代すごく多いんだよね、現実で満たされない気持ちをSNSで満たそうとする人が」
「それは具体的にどんな具合なんだ?」
「多いのは、自分の顔を載せてみたり、ブランド物や高級な物、そのときに流行っている物の写真を撮って載せたり。“丁寧な暮らし”って感じで、理想の日常を載せる人もいるよ」
「それは…まぁ、楽しそうなんじゃないか?」
「それが“本物”ならね。理想の自分になるために写真を加工するのは当たり前、それでも満足しなければ整形。ブランド物はレンタルってこともあるし下手したら借金をしてまで買う人もいる。理想の日常に関しては…家族がいる人がやっていたら、それに付き合わされる家族が大変だったりもするんだよ。酷い人は子どものプライバシーもお構いなしにいろいろ載せてる人もいるしね」
「……そこまでいくと、もう病的になってくるな」
「そう、医学的に病名がないだけで病気だよね。で、これはクリエイター界隈でも言えることでね〜そういう人は“自分が作ったもの”を多くの人に賛辞してもらうこと。そこと繋がる『推し活界隈』の人は“推しに認知されること”に命をかけてるんじゃないかってくらいの熱量を費やしてたりすんの。『TO(トップオタ)』って言葉もあるくらいなんだよ」
「まるで理解できない世界だな」
「まぁそうだよね。ちなみに今回の“お相手”は、その両方が合わさった厄介なタイプね」
「両方…?」
「クリエイターとしての自分も認められたいし、推しには『TO』として認知されたい。故に同担拒否ね」
「どうたんきょひって何だ」
「“同担”っていうのは、“同じ担当”。要は、『同じ人を推している人はお断り』ってこと」
「同じ趣味の相手なのにダメなのか?」
「アイドルとかに多いんだよね、こういう子。
「TO気取り、か。中々辛辣だな」
「そりゃあそうでしょ。『自分が1番だ』っていう意味のわからないマウントを取って他のファンに圧をかけるとか、そんなのファンでも何でもないじゃん。ただ“自分”を誇示したいだけの迷惑な輩だよ」
「……やけに感情が入っているが、優斗はそのTOとやらに何かされたことがあるのか?」
何だかプリプリしている優斗を横目に、大樹に小声で聞いてみる。
「あー…優斗もオタクなんで。昔、ちょっと厄介な人に絡まれたことがあるみたいです」
「そうなのか…」
「とにかく!!!!」
ビクッ
「この、yumeっていう子はその手のタイプ。紗枝チャンと同じ絵師さんを推してるし、その絵師さんは紗枝チャンの投稿にコメントを残したりもしているから、そこらへんが動機なんじゃないかなって思うよ」
「そ、そうか。そんな理由で見知らぬ相手を害するなんて到底理解はできないが、そういう世界もあるってことだもんな」
「そう。そういう世界もあるの。で、このyumeの投稿へのコメントは大体が紗枝チャンへの中傷とも言える言葉ばっかり。その中には、今まで紗枝チャンと楽しそうに絡んでいたアカウントもそれなりの数がいるかな」
「それが、紗枝ちゃんの言っていた…」
「ただね、気になることがあって」
「何だ?」
「前までこのyumeと頻繁に絡んでいたアカウントがあったんだけど、それがこのパクり騒動の後からパッタリ絡みがなくなってね。調べてみたら、それが紗枝チャンとも繋がってる子なの。っていうか、たぶんリア友だよ、あの感じ」
「リア友…リアルな友達、か?」
「そうそう。たぶん昔から知ってる感じの友達」
「それは…気になるな。ちょっとその子のアカウントを見せてくれないか?」
「はい、これ。最近は全然投稿してないみたいだけど」
渡されたスマホを大樹と2人で見る。確かに、2週間前を最後に投稿が止まっている。
「“そんなつもりじゃなかったのに…”って何のことですかね?」
「最後の投稿のか?」
「はい。これって、紗枝ちゃんの騒動が起きた頃ですよね?」
「そう、だな…。何か、関係があるのかもしれない。優斗、この子と連絡を取れたりしないか?」
「フフフ。そう言うと思ってねぇ〜…もうDM送っといたよん✩」
「おお!さすが優斗!」
「いやお前…そう言うのは先に言え」
さすがだな。ただ、勿体ぶるなよとは思うが。
「しかももうアポも取ってるんだ〜♪今日はちょうど土曜日で学校休みだし、この後ここに来てくれる予定になってるの」
「それは本当に早く言え!!!」
「え、じゃあここに来てくれるの?その、“Hana”ちゃんが」
「うん、そう。14時の約束だからそろそろかな?」
カランッ
「……こんにちは」
噂をすれば何とやら、少し早いがもう来てくれたみたいだ。
「こんにちは。えっと、“Hana”ちゃん?」
「はい、白咲 華(しろさき はな)です。紗枝とは中学まで一緒だった友達で。私、紗枝にひどいことを…でも、そんなつもりじゃなかったんです…っ信じてください……!!!」
「華チャン、俺たちは華チャンを責めたくて呼んだんじゃないよ?大丈夫だから泣かないで〜ヨシヨシ」
泣き出してしまった「華ちゃん」を、優斗が慰める。ヨシヨシ、なんて言っているが必要以上に近づくことも決して触れようともしないのは昨今のコンプラ的な気遣いだろう。
軽薄そうに見えて意外と繊細だよな、コイツ…。
「まぁ、とりあえず座んなよ。どうぞ、ホットココアでも飲んで落ち着いて」
「は、はい…。ありがとうございます」
優斗の軽さと大樹の穏やかさは、見ているこちらが驚くほど相手の心にスッと入り込んでいく。天性の武器だな…俺はむしろ相手を警戒させてしまうからな、今日もカウンターの隅から見守らせてもらうとするが。
「……少し、落ち着いたかな?」
「はい、すみません…」
「気にしないで。いきなり呼び出されて知らない大人ばっかりいたらビックリしちゃうよね、ごめんね。俺は葉山 大樹。ここ、喫茶こもれびの店長だよ」
「あ、華チャンにDMしたのは俺ね。ykこと、川島 優斗でっす✩よろしくね〜」
「よろしくお願いします…」
「早速だけど、聞いていいかな?紗枝ちゃんにした“ひどいこと”って、どんなことをしちゃったの?」
「あの、最近紗枝が攻撃されるようになった、ルナの絵なんですけど…」
「ん?華チャンはルナを知ってるの?」
「はい。紗枝とは幼馴染なんで…写真もよく見せてもらっていましたし、会ったこともあります」
「そうなんだぁ〜…ごめん、続けて?」
「はい。それで、そのルナの絵を紗枝がSNSに載せる前に見せてもらってたことがあって。すごく可愛いし懐かしくなっちゃって、画像を送ってもらってたんです。ただ…」
「ただ?」
「……それを、yumeさんに見せてしまって…」
「え!?それって…」
「はい…。たぶんそのせいであんなことに…」
「ちょい待ち。華チャンは、あのyumeって子と知り合いなの?」
「知り合いっていうか…元々私はyumeさんの絵が好きでフォローしてたんです。それが、半年くらい前に突然yumeさんからフォロバされて。DMで話すようになったりして、直接会ったのは…1度だけなんですけど」
「そのときに見せちゃったの?その画像」
「はい…。スマホの壁紙にしていたのを見られて、「見せてほしい」って言われて。私が描いたのか、って聞かれたから友達が描いた絵だっていうことも伝えたんですけど…yumeさんと紗枝は繋がっていないから、名前とかは伏せたまま。それがまさか…yumeさんが同じように描いて自作としてSNSに載せるなんて思わなかったんです…」
「そりゃあ思わないよね。クリエイターとして1番やっちゃいけないことじゃん」
「そうだよね…。でもさ、名前も言っていないのに何で紗枝ちゃんの絵だってわかったんだろう?それともたまたま紗枝ちゃんの絵だったってだけ?」
「んー…たぶんだけど、華チャンの“友達”っていう距離感であの感じの絵を描いているのが紗枝チャンしかいないから、かな?紗枝チャンが描いた他の絵とも雰囲気似てるしね。それをそのまま自分の絵のタッチにしての自作発言とか…ちょーっと最低だね?このyumeって子は」
「本当にね。華ちゃん、華ちゃんは何も悪くないんだから、自分を責めないでいいんだよ」
「でも……」
「てかさー、そのこと紗枝チャンには言ったの?」
「いえ、まだ言えてないんです…yumeさんにあの自作発言を撤回してもらおうと思ってDMをしたらブロックされちゃって、もうどうしたらいいのかもわからなくて…」
「うんうん、自分の都合が悪くなったらサクッと逃げちゃうタイプだよね〜あの手の子は。でもさ、紗枝チャン的には何であの絵をyumeが知っているのかもわかっていなくて、今、本当に困惑している状態なの」
「あ、…」
「うん。だからさ、まずは解決より先に、紗枝チャンに現状を説明しよ?」
「そう、ですよね…。私、紗枝に謝らないと…っ今、連絡してみてもいいですか?」
「どうぞどうぞー」
*
カランッ
「華!」
華が連絡をしてほどなく、慌てた様子で紗枝が店に駆け込んできた。
「紗枝……っ、ごめん、私……」
「いいよ、謝ることなんて何もないじゃない。それより、ここ最近華と話せてないことの方が寂しかったよ。華も、他の人みたいに私から離れて行っちゃったんだと思って…」
「そんなわけない!私、ずっと紗枝に謝らなきゃって思ってたのに、怖くて……yumeさんにも、何もできなくて…」
「だから、謝ることなんてないよ。私の描いたルナの絵を壁紙にしてくれてたなんて、嬉しいもの」
「……っ」
いい子たちだなぁ…こんな子たちを悲しませて何がしたかったんだろうな、あのyumeって奴は。
「紗枝ちゃん、いらっしゃい。コーヒーにする?華ちゃんと同じ、ココアにしようか?」
「あ、こんにちは、大樹さん。すみません、騒がしくしてしまって…ココア、いただきたいです」
「了解。華ちゃんと座って待ってて」
「紗枝チャン、やっほー。久しぶりだねぇ。すっかり美人さんになっちゃって」
「え、優斗くん?何で優斗くんがここに?」
「SNSのトラブルだからね。俺らはSNSに詳しくないから優斗に助けてもらってるんだ」
大樹はココアを渡しながら、紗枝に軽く説明した。この商店街で育ったというだけあって、優斗とも面識があるみたいだな。
「俺らって?」
「あのカウンターにいる人。桐生さんって言ってね、俺の相棒だよ」
「あ、前に相談に来たときもカウンターに座ってた…」
「前回は挨拶できなくてすまなかった。桐生 健人(きりゅう たけと)だ、よろしくな」
「桐生さんはね〜自分が顔を見せたら2人を怖がらせちゃうと思ってね、ひっそり見守ってたんだよ。こーんな強面な顔してるけど、実はすごい優しいの」
「おい、お前何を…」
「ふふっありがとうございます。よろしくお願いします、桐生さん」
「よろしくお願いします…」
「ああ、よろしく頼む」
少しだけ強張っていた2人の顔が、優斗の言葉で一気に和らいだ。ありがたいが……少しだけ複雑だ。
「さて、じゃあ改めて。今回のトラブルの内容は、紗枝ちゃんの描いた絵が“パクり”だと言われたことによる誹謗中傷。騒動の発端となった投稿主はyumeというアカウント名の絵師。yumeは、華ちゃんに近づいて紗枝ちゃんの未発表の絵を知り、それを“自作”と偽り投稿。その行動の理由はまだ不明。……今のところ、こんな感じで間違いないかな?」
「はい、間違いないと思います」
「紗枝ちゃん、このyumeって人とは関わりがないって言ってたよね?何かこう…恨まれるような心当たりとかはないの?」
「え、ないですよ!人に恨まれるようなこと…いや、でもわかりません…。もしかしたら知らずに何かしちゃってたのかも…」
「紗枝は人に恨まれるような子じゃないです!そもそも、私は紗枝の名前を教えていないですし、たまたまなんじゃ…?」
「いや、たまたまではないと思うぞ」
「え?」
「俺はSNSに詳しくないがな、何の関わりもない相手が描いた絵っていうのは、そんなに簡単に見つけられるものなのか?紗枝が投稿してから、このyumeってのが見つけて騒ぎ始めるまでが早すぎる気がするんだが」
「あっ…」
「さっすが桐生さん✩そこなんだよね〜まぁ、間違いなくyumeは紗枝チャンを意識していたと思うよ」
「え、何でそんなことがわかるんだ?」
「これ、yumeの裏垢なんだけど、ここにたくさん書いてるもん。もちろん、紗枝チャン以外の子のことも色々ね。本当に……かなり歪んでる感じなんだよね。」
優斗の見せてくれた画面には、誰かのアカウントのページが開かれていて…これでもか、というくらいの罵詈雑言が並べられていた。
「あ、この日!これ、私がyumeさんと会った日です。『まじチョロすぎて笑える〜これでもうアイツは用済みだわ、ブロックしちゃお♪』って…ひどい……」
「ってことは、やっぱりyumeの目的は華チャンの持つ“ナニカ”だったんだね」
「“ナニカ”って…私の…?」
「そうだね。まぁ、新作をゲットできたのは予想外の収穫だったんだろうけどね〜紗枝チャンの弱味になるナニカが欲しかったのは確かだね」
「何で、そんなに私を…?」
「それは…これが原因か?」
裏アカとやらに数多に投稿されている暴言の中にある、『アイツまじムカつく。mayuさんと馴れ馴れしくしやがって。ぜってー潰す』という物騒な言葉を見せる。
「え、mayuさん?何で?」
「yumeは神絵師って言われてるmayuサンのガチ勢みたいだからね〜自分的には認知されてるし、仲良いって思ってるんだろうけど、実際はmayuサンとの交流はyumeからの一方通行のみ。でも紗枝ちゃんはmayuサンからも話しかけられたりしてるし、嫉妬しちゃったんだろうね」
「そんな…ことで…?」
「自己顕示欲が強い子の思考って結構過激なことが多いからね〜yumeからしたら、“そんなこと”じゃなかったんだと思うよ」
「まぁ、どんな心情であれど人を陥れようとするやり方は受け入れられないな」
「そうですね、紗枝ちゃんも華ちゃんも傷ついてるんですから。きちんと撤回してもらわないと!」
「さて、じゃあこの後はどうしようか。yumeの言葉を信じている人たちに紗枝チャンの作品なんだってことをわかってもらえるような、証拠的なものないかな〜」
そう、証拠が必要だ。yumeの言い分を信じきっている周りの奴ら…自分も暴言を吐いた自覚があるなら、それが“間違いだった”ってことを認めさせるには言葉だけでは足りない。誰だって自分の過ちを認めるのは嫌なものだ。
「……ルナの写真はないのか?」
「あります、けど…ルナの写真だけでわかってもらえますかね…」
「よっぽど意固地になってなければ大丈夫そうだけど…」
「肝心のyume本人は認めないだろうね〜。何かしら言い逃れしてきそう」
「そうだな…小さい頃の紗枝とルナが写ってる写真なら――ルナ単体よりは信憑性がありそうだが」
「あ、それならおばあちゃんが持ってるかもしれません。昔よく写真を撮ってくれていたので。ちょっと電話して聞いてみますね」
ルナと紗枝が一緒に写っている写真なら、ルナが紗枝の飼い猫だったことは伝わるだろう。それでも確実ではない……あとはyumeがどれだけ頭の回る奴かっていうところによるが。
「――持っているみたいです!今、何枚か持ってきてくれるって」
「お、さすが千代ばあ。そういうのちゃんとしてそうだもんね〜」
「だね。千代子ばあちゃんはいつも思い出を大事にしてるから」
カランッ
「大ちゃん、紗枝!持ってきたわよー!」
「千代子ばあちゃん、こんにちは。ありがとうね」
「いいのよ〜これがお役に立てたらいいんだけど。あら、優ちゃんもいるじゃない!久しぶりね、元気だったの?」
「千代ばあ、おひさ〜✩元気元気。千代ばあも元気そうで良かったよ」
「私はいつだって元気よぉ。あら、華ちゃんまで!みんな勢揃いね〜楽しそうでいいわぁ。あら、あなたは?」
「今まで挨拶できていなくてすみません。桐生 健人と申します」
「千代子ばあちゃん、桐生さんは俺の相棒なの。元刑事さんで、今は探偵さんなんだよ」
「あらあら、何だか強そうだものねぇ。相棒だなんて素敵ね」
にこやかで人の良さそうな笑顔に心が和む。……人に受け入れてもらえるというのは、何だかくすぐったいがやはり嬉しいものだ。
「あ、紗枝、これ写真ね」
「ありがとう、おばあちゃん。わ、こんなにあったんだね」
懐かしいなぁと紗枝が顔をほころばせながら写真を確認していく。
「どれどれ〜わぁ、ルナ懐かしいな〜紗枝チャンちっちゃぁ~」
「ふふ、もう10年前くらいの写真ですね。本当に、懐かしい…」
「あ、これ!紗枝が持ってる絵、ルナじゃない?」
華が見つけた1枚の写真。そこには、小さな頃の紗枝とルナが写っている。そしてルナと並べるように紗枝が持っているのが…例の作品の元になった絵だな。
「これで……いけるな」
「だね〜これならさすがに何にも言えないでしょ。よし、じゃあこの後の動きを決めよっか」
「動き?」
「うん、動き。まず、俺の方からyumeにDMしてみようとは思ってるんだけど〜どうする?直接会って話す?それとも、DMで撤回するように説得する?」
「直接会うって選択肢もあるんですか?」
「まぁ、yumeが応じれば、だけどね」
「じゃあ、会いたいです。私のこともだけど…華を利用して切り捨てたことを謝ってほしい」
「紗枝…」
「そうだな、できることなら直接顔を見て話した方がいいだろう」
「オッケー。じゃあそんな感じでDM送ってみるねん♪」
「おう、頼む」
「じゃあ、今日はここら辺でお開きにしよっか。あとはyumeからの連絡待ち。連絡が来たら2人にまた連絡するね」
「はい、お願いします。お任せしちゃって申し訳ありませんが、私たちはブロックされちゃっているので…。とりあえず、今日はもう帰りますね。ちょっと、疲れちゃいました…」
「疲れちゃうよね、こんな状態だもん。細かいところは俺たちに任せて、今日はゆっくり休んで」
「ありがとうございます。じゃあ、失礼します」
「失礼します」
「3人とも、お願いね」
カランッ
ペコッと頭を下げて3人が店を出て行く。これで、すんなり解決となればいいんだがな。
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