第2話 優しくなんてない。
「なあ、北見」
「うん?なんだ?」
ホームルームが終わり、桜木が声をかけて来た。
「席変わってくれねーか?」
「え、いやだ」
「まあ、そうだよな。こんな幸運逃したくないよな」
「いや、恨まれたくないから」
「うん?誰にだ?」
「佐藤さん」
「なんで萌が出てくるんだ?」
「あのな、佐藤さんはお前のことが」
「私が何かな北見君?」
鬼の形相の佐藤さんがいた。
「いえ!何もないであります!」
どストレートに暴露作戦は失敗。
「???」
桜木はなんのことか分かってない。
「でも、席の件ありがとう」
そう言って席に戻っていく。
「おい萌どうしたんだ!?」
その後を桜木は追っかけていく。
「はあ、怖かった」
俺はため息を出す。
「ふふ、北見君優しいだね?」
するとやりとりを見ていたのか羽馬さんが声をかけてくる。
「優しくなんてないぞ」
現にあんたを負けヒロインにしようとしてるんだしな。
「不器用なんだね?」
「あのな、勘違いだ。ただ恨まれたくなかっただけだ」
「はい、はい」
「本当にわかってるのか?」
「うん!北見君が優しいってことがね」
「もういいよ。それで」
さすがメインヒロインだ。人の話聞かねー。
そうして時間は進み昼休みになった。
「ねえ、羽馬さん校内を案内しようか?」
桜木が羽馬さんに声をかけていた。
「うーん。気にしないで1人で大丈夫だよ」
「いや、1人だと迷子に」
「桜木。無理強いはよくないぞ?」
「そんな気無かったんだけど。まあ、そうか」
「ああ、それに佐藤さんと昼は一緒に食べる約束なんだろ?」
「そ、そうだった!」
桜木は慌てて佐藤さんの元に走って行った。
「ありがとう!北見君」
「気にするな。無理強いは良くないからな」
そうして俺一安心して学食に行こうとした。
すると裾を掴まれた。
「うん?なに?羽馬さん」
「えっと、学食行くの?」
「そうだけど?」
「一緒に行ってもいい?」
顔を赤くして聞いてくる。
さっき1人で大丈夫と言った手前恥ずかしいのだろう。
「いいぞ」
「ありがとう!」
まあ、俺が桜木を追い払ったからだし仕方ないな。
そうして2人で学食に行くことになった。
「わあ、ここは広いね!」
「ああ、ここは改装したてだからな」
羽馬さんは最近のカフェのように広くて綺麗な食堂に驚いていた。
「素敵だね!」
「そうか?俺は落ち着かない」
昔からこういう陽キャ達が集まりそうなところは苦手だ。だか、母は忙しくて弁当を作れないから仕方なく学食に通っているわけだ。
「えー綺麗なのに」
「人それぞれだろ?」
「むう!」
ほっぺをリスみたいに膨らませていた。
メインヒロインみたいだな。
いや、メインヒロインか。
「まあ、とにかくあとはあの食券機で買って頼むだけだ」
食券機を指差して説明する。
「ふむふむ」
「大丈夫そう?」
「たぶん大丈夫!」
なんだその自信は。
俺は放っておけないと思い言う。
「なら、俺の後ろについて見てて」
「いいの?」
「どうせここまで一緒だしいいよ」
「感謝いたしまする」
少しふざけて感謝される。
「はいはい」
そうして列に並び食券を買う。
羽馬さんも真似をして買う。
「同じ鯖の味噌煮で良かったのか?」
「うん!私好きだよ?」
「ならいいんだが、渋い趣味だな?」
「ふふ、それを言うなら北見君だってでしょ?」
まあ、俺は中身がおっさんだからな。
「まあ、いいならいいか」
「そうそう」
「で、いつまでついてくるの?」
「え、一緒に食べるんじゃないの?」
「え?」
「え?」
2人して顔を合わせして固まる。
「いや、男と2人っきりはよくないぞ?」
なんとか硬直を解いて言う。
「北見君なら大丈夫だよ?」
上目遣いをする羽馬さん。
くそ!さすがメインヒロインだ。なんで破壊力だ。桜木でなくて良かった。
「はあ、わかったよ」
「わーい!」
まあ、俺のせいで負けヒロインになるかもしれないしな。これくらいは付き合うさ。
それに推しの幸せのためならこれくらい安いもんだ。
「いた!北見と羽馬さん!」
急に食堂に現れる桜木。
「どうしたんだ?桜木」
すると肩を組まれて小声で言われる。
「どうしたじゃないだろ?抜け駆けは良くないぞ!」
「いや、たまたまこうなっただけで下心はないぞ?」
「そんなバカなことあるか!羽馬さん相手に下心ないなんて男じゃないぞ!」
「て、言ってもな」
俺負けヒロインが好みだしメインヒロインは好みじゃないし。
「俺も混ぜろよ」
「いや、お前佐藤さんはどうしたんだ?」
「爆速で弁当食って終わらせて来た!」
こいつはデリカシーとか感謝の気持ちはないのかよ。
「説教したいわけじゃないがな桜木。せっかく佐藤さんが作ってくれた弁当をそんなにして食うのは失礼だろ?その時の佐藤さんどうだった?」
「えっと、呆然としていてそのあと怒っていたような?」
「ほらな、当たり前だ。一生懸命お前のことを考えて作ってくれたんだから感謝して食わなきゃダメだろ?」
「うっ!?母ちゃんみたいなこと言うな北見は」
中身おっさんだからな。
「まあ、とにかく謝ってこいよ」
「そ、そうだな。ありがとう北見!」
そう言って桜木は佐藤さんの元へ行った。
「ふふ、やっぱり優しいね北見君は」
「気のせいだ」
話しかけられるかもと思っていたが、意外なことに静かに食事に集中して食べられた。
「ご馳走様」
「早いね?」
「男だからな」
「そりゃそうだね」
「意外だった」
「うん?何が?」
「もっと話しかけてくると思ってた」
「私食事中は集中してるから話さないんだ」
珍しく俺と同じ人がいるんだな。
「そうか」
「嫌だった?」
「いや、嬉しかった」
「なら、良かった」
そうして静かに2人で食事をしたのであった。
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