第2話 第一の転校生、丹鍬 璐衣
ホームルームが始まった頃になってようやく、私(
「えー、みんな気が付いていると思うが、転校生を紹介する」
担任の言葉に続いて、黒髪の少女が名乗る。
「初めまして。神奈川から来ました、
そう言ってぺこりとお辞儀した彼女の髪は、ツヤツヤ、ツンツンしていた。(※22)
「皆知ってる通り、基本的にこのクラスでは全員が何かしらの委員会に所属してもらう。ちょうど図書委員会に欠員が出ていたはずだから、特に異存がなければそこに入ってもらおうと思う。本人には事前に話してある」
特に意見は出なかったので、そのまま自然承認された。
この日の放課後、私は彼女を図書室へ案内した。
「……というわけで、やることは大体そんなところかな。再来週の図書委員会で皆集まるから、詳しくはその時にでも。ここまで聞いて、何かやってみたいこととかある?」
「ええと……やってみたいっていうのとはちょっと違うけれど、静かなところで黙々とやれる作業は得意かなって思う(※23)。例えばさっき教えてくれた、棚に戻す本の整理とかかな」
なるほどそれでは、ということで試しにやってもらった。ちょうどバーコード処理が終わったばかりの本がカウンターの後ろに積まれていたので、戻すべき書架毎に並べてもらうことにした。
県立中央図書館のような大規模な施設であれば、自動返却仕分機という文明の利器を使ってもっと楽に処理できるのだけれど、残念なことにうちの高校の図書室にはそんな素敵なものはない。だから人力で、時に人海戦術で何とかこなさなければならないのだ。財政的には、当面の間は難しいわね……と独り言をつぶやいていると、彼女が肩をたたいた。
「こんな感じ?」
見ると今しがたあった本の壁は切り崩され、渡したばかりの書架配置表に沿って自らの居場所をチェックされた本たちが整然と並んでいた。
「す、すごい……詳しくはちゃんと確認しないと何とも言えないけど、ざっと見た感じ合ってそう。めっちゃ速かったね!」
「私、外乱がない精密な作業は得意みたい」(※23)
私とは違うpros and cons......彼女はそれを自分で見つけているようだ。そういうの、ちょっと羨ましいな。出会ったばかりの転校生に対して若干の心地よさを感じつつ、私はそう思った。
【解説】
(※21)
タンガロイ:日本初の超硬合金。焼結炭化物合金の一種で、タングステン+アロイから命名された。
解説の引用元:株式会社タンガロイ
https://tungaloy.com/jp/about-us/history/
(※22)超硬合金は高速度鋼よりも硬い。
(※23)
超硬合金工具は切削速度や加工精度が必要なケースに向いている。衝撃に弱いのがデメリットの一つ。
解説の引用元:超硬素材・超硬加工ソリューションナビ
https://special-bite-lab.com/column/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%B9%EF%BC%88%E9%AB%98%E9%80%9F%E5%BA%A6%E5%B7%A5%E5%85%B7%E9%8B%BC%EF%BC%9Ahss%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%82%84%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%8B%E3%82%89
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