第3話 第二の転校生、金井 Cerme 陶子

 丹鍬たんが 璐衣ろいと知り合ってから二週間。朝の八時半前に、しっかりとした足取りで教室に入ると、いつもより少し騒がしかった。

 ホームルームが始まった頃になってようやく、私、金目かなめ 小春こはるは異変に気が付いた。またしても一人多い。

「えー、みんな気が付いていると思うが、転校生を紹介する」

 デジャ・ヴュな担任の言葉に続いて、見慣れない異国風の少女が名乗る。

金井かない Cerme 陶子とうこです(※31)。親の仕事の都合で、今月引っ越してきました。どうぞよろしく」

 透き通った声でさらりと挨拶すると、教室の最後列に戻っていった。

「で、まだ図書委員会に欠員が出ているはずだから、例によって特に異存がなければそこに入ってもらおうと思う。本人には事前に話してある」

 例によって特に意見は出なかったので、そのまま自然承認された。


 「……じゃあ皆、再来週までにおすすめの本の紹介ページ作っておいてね」

 司書さんの言葉を最後に、図書委員会は予定通り閉会した。

 その後は適宜クラス単位での活動に移行したので、私と璐衣、陶子の三人で集まった。

「私は今日来たばかりでよくわかってないけど、このクラスではどれぐらいできているの?」

「本を選んで読むのは先週終わってて、おすすめする文章を何となく考えるところまでは昨日やったよ。実際に書いていくのはこれからかな。陶子さんも何かおすすめの本があれば一緒に書こうよ!」

「う~ん、私はゼロから考えて組み立てるのは苦手で……(※32)二人が下書きした文章をペン書きするとかでも良いかな?」

 もちろん、と力強く答えて、私はペンを手渡した。


 ……その速いこと速いこと。下書きは私と璐衣の二人分で、清書は彼女一人。にもかかわらず、私たちの下書きが追い上げられている。何なら「この言葉、こっちの表現に変えてもいいかもね」なんて提案すらしてくれる。それがまた、言われてみるとしっくり来るのだ。ある意味、一種の才能かもしれない。

「私、人がラフな線を引いてくれたタスクの仕上げは得意なのかも」(※32)

 目にも留まらぬ速さでペン先を走らせながら、陶子さんはそう言った。

「でもね、驚くとすぐ躓いちゃうの。それに、0からのタスクだとついつい根を詰めやすくって……」(※32)


 結果、二週間先の期限よりもずっと早く、私たちのクラスは紹介ページを完成させた。


【解説】

(※31)

サーメット:セラミック (Ceramic) とメタル (Metal) を組み合わせた造語。


(※32)

サーメットは高速切削に向いている。どちらかと言うと仕上げ加工に向いている。衝撃に弱い。


解説の引用元:再研磨.COM

https://saikenma.com/service/service-2075/

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