第2話 土御門永治は別の視点で見ると主人公である
ピピピピ、とスマホから設定した昔ながらのアラーム音が部屋に響く。
その後で俺は目が覚めて薄い布団から起き上がる。
俺の長所はすぐに起きる事ができる事だ。タイマーの音が聞こえたら1発で目を覚ます事ができる。
このおかげで今まで遅刻したことは無い。無遅刻無欠席の記録を常時更新し続けている。
なお、ここ最近はバイト側の都合で人材が不足しがちなので急に駆り出されることが多い。
ちくしょう、何人も行方不明になっているもんだから本当にキツイ。
あれもこれも、ここ最近に頻発しているアレのせいだ。
道を歩いていたら空が真っ赤に染まる現象は誰も聞いたことが無いという。
ネットや自分の足でいくら調べても知らないばかりしか返答もない。つまり、八方ふさがりという訳だ。
どうせならネット上に投稿してやろうか?そう思いながらトーストを焼いて時間を潰す。
朝からバイトというしみったれた生活だが、生きるためには仕方なく働かなければならないのだ。
貯金だって生活費を切り詰めてギリギリ溜まるかどうかだし、万が一のことがあれば一瞬で吹き飛ぶような懐の少なさだ。
カリカリに焼けるでもなく、ちょっと生焼け気味な食パンをトースターから取り出し、一気に食いつくす。
できたら目玉焼きも欲しい所だが、最近の卵はちょっと高騰して手が出しづらい。
あ、そうだ。今日は燃えるゴミの日でもあるから朝食後のゴミを纏めて出さないと。
準備自体は昨日に済ませてあるので、今ゴミ箱にゴミが入っていないか確認してゴミ袋へとまとめる。
さっさと捨てて身支度しよう。歯磨きもしてバイトに向かえる準備をしないと。
がちゃり、と安アパートの扉を開いてゴミ捨て場へ向かおうとした。
「…………あ、ども」
「ああ、おはようございます」
どうやら隣の住民も今から出かけるようだった。
確か、最近ここに引っ越してきたばかりの土御門くんだったか。
服も昔ながらの学ランでいかにも学生と言った風貌であるが、びょこびょこと跳ねた髪と若干悪い顔色が不摂生さをものがたっている。
若いのに苦労している気がしてならない、俺のようにはならないで欲しいがしっかり夜も寝て欲しい。
もしかしたらしっかりと寝ているのかもしれないが、ずっと疲れた顔をしている気がしてならないんだ。
簡単な挨拶を済ませたら並んでごみを捨て、土御門くんはそのまま何処かへと歩いていく。
よく見たら近くの高校の学生鞄を背負ってるな。という事はやはり学生だったか。
ご近所とはいえ付き合いは少ないし、何よりも彼の親御さんを見たことが無い。
すると彼はあの年で一人暮らしをしているという事か。
大変だろうなぁ、働きながら色々と合間に買い物やら出来る俺とは違って午前午後の大半を学業で拘束されながら生活しているのは。
…………俺の学生時代も似たようなものだったか?大した友達もおらず、いじめは無くとも一人ぼっちのようなものだった。
頑張れ土御門くん、君の学生生活を心の中で応援しているぞ。
さて、俺はバイトに向かうとしよう。
今日の生活費を頑張って稼いで、頑張って生き延びるぞー!
今日こそはあの赤い世界に取り込まれないようにする!もう巻き込まれてたまるか!
「土御門
土御門永治は祓魔師である。
日本なら陰陽師と呼ぶのではないかと疑問に思うかもしれないが、日本が開国して以来、海外からの怪異等が多く入り込んできたせいで祓魔師の技術を取り込まざるを得ない状況が続き、いつしか陰陽師よりも祓魔師と呼ばれるようになってしまっていた。
そう呼ばれている、と言っても彼等は国が抱える秘密組織であるため一般人には認知されていない。
「うっわ!うじゃうじゃと小鬼が湧いてきやがって、こんなんじゃ一般市民が耐えれるわけが無い!」
鞄の中に手を突っ込み、そこから放り投げたのはいくつもの札。
ただの紙切れなら投げた拍子であらぬ方向へと飛ぶが、この札は普通の髪とは違い特別製。
「炎よ燃えろ、氷よ刺され、土よ埋めろ!」
炎が荒れ狂い、氷が襲い掛かり、土が小鬼らの足元を抉る。
焼かれ、貫かれ、転んでは後ろから続く仲間に踏みつぶされ死んでいくが、どの個体も悲しむ様子はない。
「単純に人を喰らうだけの機構か!」
そう、土御門永治が言うようにこの子鬼どもは人の肉を喰い散らかすだけの存在。
いくら周りが死のうと関係なく、力関係も理解せぬままに襲い掛かる一種の恐怖が形となったもの。
こんなものは普通では現れない。
コスパという観点から敵を殺すにしてもあまりにも微妙であるが、罪なき人を一方的に虐殺するには向いている。
そう、つまりこれはただ自然発生したものではない。儀式となる何らかの術式なのだ。
「何で誰も気づいてないんだよ!ああもう、ぶち転がすぞ!」
土御門永治は学生という若い身でありながら優秀な祓魔師である。
数百、数千の小鬼程度なら難なく滅することが出来るほどの才能を持っている。
それ故に若いながら酷な任務を課されたりするため一晩で疲れが取れるほどでもなく、特にここ最近は連日出動要請がかかっているためハードワークが続いている。
「畜生!やめてやる!絶対に辞めてやる!家も継ぎたくねえよ!姉さん達の方が優秀なのに女だからって継げないのは可笑しいだろおおおおおおおおおお!」
もはや八つ当たりの部類に入るシャウトを放ちながら、その異様さにも一切怖気づかない小鬼たちを相手取る。
既に発生している量から迷い込んだ一般人は死んでいるだろう、そう予測しながらも彼は戦い続ける。
彼が突入した真逆の方に今、まさに逃げきろうとしている人間が居るとは気づかずに。
「なんだよ、またかよおおおおおおおおお!」
その人間が拳一つでこの状況を突破しているという異常行動を起こしているとは知らずに。
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