ヒーローになれる暇がない
蓮太郎
第1話 荒田益男は被害者である
「くそったれめえええええ!本当にいい加減にしろよバァァァァカ!」
俺、
実家は放火で焼け落ちる。家族は不倫やら借金やらで離散。そんな混迷の中で俺は就職も難しくてフリーター。
人生ハードモード頑張っている俺のご褒美はコンビニで売ってる少し高めのプリンくらい。
ゲームでもやってたら課金とかしてたかもしれないが、あいにくバイトで疲れたら飯食って風呂に入って寝るくらい。
そんな俺がなんで叫んでるかって?
「何だよコレ!化け物かよ!?」
「俺が知るかよ!ゴブリンみたいな見た目しやがって!」
「それ俺に言ってるのか!?」
「お前がゴブリンみたいな見た目じゃなかったらな!」
「「「GYAGYAGYAGYA!!!」」」
バイトの帰り道、夜なのに突然空が真っ赤に染まって紅くなったと思ったら、ゴブリンみたいな化け物がうじゃうじゃと湧いて出るわ殴って潰してもどんどこ現れるわで逃走中。
その途中で全く知らない人と合流したのはいいものの、ただ逃げているだけでゴブリンもどきには全く手奇行出来ていない。
そのためか擦り傷やひっかき傷だらけだ。
「ああもう!無限に出てきやがって!もしかして、俺って統合失調症だったりするのかなぁ!?」
「じゃあ俺は幻覚だってのかよ!」
「うわあああ!?た、助けてくれぇ!?」
各々が応戦、逃げ惑う中で俺は拳でゴブリンもどきの顔面を粉砕していた。
思っているよりも弱いが群れを成してるのがウザい!
真っ赤な空のもとで走りながら突き進んでいくが、知っている住宅地ということ以外は全く突破口が無い。
真っ直ぐに進んでいくしか道はない。その道もゴブリンもどきに塞がれているのだが、殴っていけば問題ない!
「こっちくんな!うわ、うわああああ!」
「あ、馬鹿!そっちは!」
一緒に巻き込まれた一人が俺達の集団から外れて別の道へ走っていく。
あそこ、一見すると何も無さそうだが奥の方にゴブリンもどきが詰まっているのを一周だが見えてしまった。
要するに。
「あ、ああああああああああ!?」
数の暴力であっという間に制圧される。
背中で断末魔を聞きながら、しかし一度も振り返れず走りぬく。
仕方ないだろ!俺は俺で手一杯なんだよ!助けられるほど余裕はない!
嫌な音が聞こえる中で俺たちは駆け抜けた。
無我夢中でどれほどの時間が経ったのか分からないが、徐々に空の色が黒に変わっていく気がした。
「走れ走れ!もうすぐ抜けられそうだ!」
完全に勘ではあったが、地獄のような場所から逃げられるのはありがたいとしか言いようがない。
全力で駆けていくうちに追いかけてくるゴブリンもどきの声が少なくなっていき、そして気づけば俺は月明かりの下に居た。
「はあ、はあ、おい、やった…………」
振り返って一緒に逃げてきたはずの男に声を掛けようとしたが、振り返った先に誰も居なかった。
先ほどの化け物どもも、一緒に逃げてきた男も。
最初から厳格だったのかと思わざるをえないくらい静寂だった。
「…………
実のところ、この現象に巻き込まれるのは初めてじゃない。
何度も巻き込まれて、ようやくどこらへんで逃げ切れるかというのが分かって来ただけだ。
もしかしたら、さっきの男は別の所から出たのかもしれない。そう願うしかない。
ただの言い訳に過ぎないが、俺は俺のことで手一杯なんだ。
ちくしょう、忘れたいってのに忘れさせてくれないのはめっちゃキツイ。
明日もバイトがあるってのに、生きていくのに大変ってのによぉ!
そのような沈んだ気持ちと疲れた体を引きずり、俺は自分が住む寂れたアパートへ足を進めた。
幸いにも、買ったプリンだけは落とさなかった。
報告書・VV市にて多発している小規模異界について
・自然発生における小規模異界は少なくないが7日に一度起こる時点で異例であり、観測だけで30日に7回以上発生している異常事態である。
・異界内に発生する怪異は小鬼程度であるが、一般人が対処するにあたり数が非常に多く行方不明者が多発している状況である。
・一定時間の経過、もしくは異界内で死亡した人数が3人以上になった場合に異界が解除され発生した怪異も共に消える仕様となっている。
・発生について事前に予測できない事が多く、現地の祓魔師の急行が間に合わない場合が多く、到着前に異界が消失した際は異界発生時の近隣住民で行方不明者が出ていないか調査し被害を調べる必要あり。
・本件において多発している異界に対し、新たに2級祓魔師の派遣を行う。
・多発する異界に対し、人の守り手である我らは対処せねばならない。それだけを留意するように。
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