第4話 氷室先生の身体検査
5時限目が始まる直前、1年A組の教室に冷徹な足音が響いた。
現れたのは、白衣を完璧に着こなし、銀縁眼鏡の奥で鋭い瞳を光らせる保健教諭・氷室(ひむろ)先生だった。
「授業の前に失礼。直人くん、今から保健室へ来なさい。国家義務に基づいた『特別身体精密検査』を行うわ」
その言葉に、教室内の空気が凍りついた。
(……身体検査!?)
(氷室先生、職権乱用だわ……! あの密室で、直人様に何をするつもり!?)
西園寺かぐやが、震える拳を机の下で握りしめ、氷室を睨みつける。
しかし、氷室はそれを鼻で笑い飛ばした。
「残念ながら、これは学園長、ひいては厚生労働省の直命よ。成長期にある希少男性のバイタルデータ収集は、女性たちの『安全』のためにも不可欠なの」
「あ、はい。分かりました」
直人は、自分の体がどれほど重大な「国家機密」であるかも分かっていたが、敢えてのんきなフリをして席を立った。
「じゃあ、行ってくるね。麗香さんまた後でね。」
「ひぇっ!? ……あ、ああ、おう……行ってこいよ!」
直人の去り際のウインク(本人は単なる笑顔のつもり)を浴びた麗華は、その場で机に突っ伏してショートした。
一方、残された三十八名の精鋭たちは、直人が保健室という名の「魔窟」へ連れ去られるのを、断腸の思いで見送ることしかできなかった。
……
保健室は、一般の学校のそれとはかけ離れていた。
最新の医療機器が並び、完全に防音された室内。そこは氷室先生の「絶対領土」だ。
「さあ、そこに座って。まずは服を脱いでくれるかしら?」
氷室の声は事務的だが、直人には分かった。
彼女の手が、わずかに震えていることに。そして、彼女の白衣の下から、尋常ではないレベルの「女の匂い」が漂ってくることに。
(……おいおい、いきなり脱げってか。さすが男女比1:1000の世界、展開が早いな)
直人の中の「猿」が、期待に胸を膨らませて騒ぎ出す。
だが、彼はあくまで「純朴な少年」を装い、素直に制服のボタンに手をかけた。
「……あの、全部脱ぐんですか?」
「……ええ。パンツ一枚になって。恥ずかしがる必要はないわ。私は医者……これはただの『検分』よ」
直人は前の世界の感覚があるので、美人保健教諭の前で男が半裸になる事に、なんの躊躇いもない。
だか、実際のこの出来事を前の世界風に表現すると、性欲旺盛なおっさんが、密室で女子高生をパンツ一枚にしようとしているという状況だ。
「……よし、準備はいいわ。そこに立ちなさい」
保健室のカーテンの向こう側。氷のような銀青色(アイスブルー)のボブヘアを揺らし、氷室先生が事務的に告げた。銀縁眼鏡の奥の鋭いツリ目は冷徹そのものだが、直人は気づいていた。彼女が手に持つカルテが、微かに、だが絶え間なくカタカタと震えていることに。
そして、この密室を満たしている、抗いようのない匂い。
清潔な消毒液の香りを塗りつぶすように漂ってくるのは、熟した果実のような、あるいは発情した獣のような、濃密な「メスの匂い」だ。
(……すごいな。100年かけて男を誘惑するために進化した『メスの本能』か。1:1000の比率じゃ、俺が服を脱いだだけで、先生みたいなクールな大人でも限界寸前なんだな)
直人は、パンツ一丁の姿で「純粋な少年」を演じながら、内心では自分の中の「猿」をニヤつかせていた。
この世界の一般的な男は、自堕落で締まりのない体型をしている。だが、前の世界から来た直人の身体は、若々しく、適度に引き締まっている。それだけで、氷室先生にとっては「国宝級の芸術品」を目の当たりにしているようなものなのだ。
「先生、なんだか顔が赤いですよ? 部屋、暑くないですか?」
「……黙りなさい。バイタルに影響が出るわ。……次は、肺活量と……その、直接肌に触れての『異常確認(触診)』よ」
氷室先生が震える指先で、直人の滑らかな肩に触れる。その指は驚くほど熱く、湿っていた。
……
「おっと……っ!」
直人は、わざとらしく足元のコードに足を引っ掛けた。
「危ない!」という氷室の声と同時に、直人の身体が彼女の方へと倒れ込む。
「きゃっ……!?」
直人は、ほぼ裸の状態で氷室先生に正面から抱きついた。
その瞬間、腕の中に押し付けられたのは、白衣の上からでも分かる驚異的な弾力の感触だった。
(……うわ、柔らかっ! 1000人に1人の男を奪い合うために進化した、最高級のボディだ……!)
確信犯的に、直人の手は彼女の背中を回るふりをして、タイトなスカートに包まれた安産型の豊かなヒップと、脇から溢れる柔らかな膨らみをしっかりと捉えた。
「あ、すみません先生! 立ちくらみがしちゃって……」
直人は顔を彼女の首筋に埋めながら、わざと熱い吐息を吹きかける。
氷室の身体がビクンと大きく跳ねた。彼女のうなじからは、さらに強烈な、理性を狂わせるフェロモンが溢れ出す。
「直、直人くん……離れ……っ、ああ……」
氷室の口から、艶っぽい吐息が漏れる。彼女の手は直人を突き放そうとしていたはずが、気づけばその若々しい背中の筋肉を、むさぼるように愛撫していた。
しばらくの間、二人は密着したまま動けなかった。
静かな保健室に、ドクドクと早鐘を打つ二人の鼓動が共鳴する。
そして、氷室先生は気づいてしまった。自分の下腹部に押し当てられている、熱く、硬く、凶暴なまでに自己主張を始めた「それ」の存在に。
「……直人くん、貴方……これ、は……」
氷室が潤んだ瞳で直人を見上げる。眼鏡がずれ、冷徹な女医の顔はどこにもなかった。
この世界の男は、4日に一度の射精が限界の「低スペック」ばかり。当然、女性に抱きつかれた程度でこれほど力強く、生命力に溢れた反応を見せる男子など、氷室は見たことがなかった。
直人はここぞとばかりに、これ以上ないほど「無垢な」表情を作って、彼女の目をじっと見つめた。
「……あの、すみません先生。先生に抱きついてたら、なんだか……自分でもびっくりするくらい、大きくなっちゃいました。……これ、病気じゃないですよね?」
「っ…………!!」
氷室先生の脳内で、理性のダムが完全に決壊した。
「病気」どころか、それは彼女たちが渇望してやまない、世界で最も価値のある「国家資源の暴発」そのものだ。
「……ええ、病気じゃないわ。正常よ、あまりにも……男の子として、正常すぎるわ……っ。通常の個体よりも、かなり大きいっ……!」
氷室は直人の腰を抱き寄せ、その「規格外の反応」を確かめるように自分の身体を押し付けた。
彼女の鼻先が直人の胸板に触れ、荒い呼吸が直人の肌を焼く。
(……よし、釣れた。1:1000の飢餓状態にあるメスに、1日10回可能な俺が『反応』を見せれば、こうなるわな)
「……先生? もしかして、先生もドキドキしてますか?」
直人が耳元で囁くと、氷室はハッと我に返った。
彼女は弾かれたように直人を突き放し、膝をついた。股の間を強く閉じ、崩れ落ちるように床に手をつく。
「……もういいわ。着替えなさい。検査は……終わりよ……」
「え? でもまだ触診が……。ここ、まだ硬いんですけど、どうしたらいいですか?」
「いいから! 帰りなさい! これ以上は……私の職務権限どころか、厚生労働省の倫理規定(私の理性)が崩壊するわ!」
氷室は顔を両手で覆い、荒い呼吸を整えようと必死だった。
直人は心の中で「惜しかったな」と思いつつも、満足げに制服を身に纏った。
「ありがとうございました、氷室先生。……なんだか、先生の匂い、すごく好きになっちゃいました。他の男の人は学校に来ないみたいですけど、俺は毎日来るんで。また明日も、検査に来てもいいですか?」
直人が去り際に投げかけた、トドメの一撃。
扉が閉まった瞬間、保健室からは「うあぁぁ……っ!!」という、氷室先生の耐えきれない悶絶と、何かが決壊したような叫び声が響き渡った。
廊下に出た直人は、ズボンのポジションを直しながら、一人でニヤリと笑う。
(……ふぅ。氷室先生、クールに見えて中身は一番ヤバいかもな。さて、次はクラスの美少女たちが待ってるか)
直人の中の「猿」が、この世界の底知れぬ「ご褒美」と、自分だけが持つ「最強の資源」をどう使い倒してやるか、歓喜の咆哮を上げていた。
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