第5話
私が始業時間になるまでの間に自分のデスク周りを整理整頓していると、大学でも後輩だった東保兎華が話しかけてきた。
「おはようございます、先輩。今日は早いですね。なんかあったんですか?」
「おはよう。いや、それが最近良いことがなくてね。あんまり家にもいたくなかったから今日は早めにと思って。」
「へ〜、そうなんですね。あっ、ちなみに、なんで家にいたくないのかは聞いてもいいですか?」
「信じてもらえないと思うんだけど、恐らく動く肉が家にあるんだよ。気味が悪いから捨てたいんだけど可燃ゴミの収集日じゃないから捨てられなくて。」
「確かに、それは信じられないですね。動くお肉なんてあんまり想像つかないですし。」
「でしょ?仕方がないから今は新聞紙で包んでからビニール袋に入れて縛ってるんだよ。」
「そうするのが一番じゃないですか?なんだがよく分からないものなら変な事しないのがいいと思います。」
「そうだよな。気をつけるわ。」
そのあとは始業時間20分前くらいまで普通に談笑し、15分前にそろそろということで会話を切り上げ、自分の席に座る。
朝礼は任意の為、今日は参加しなかった。
そこからは業務に集中する。キーボードの打鍵音が心地よく、気分が良い。ミスが見つかったり、打ち直しがない場合は。
気がつくと昼休憩の時間となっていた。ご飯でも食べに行くかと思って席から立ち上がったところに東保が来た。
「先輩〜、一緒にご飯食べに行きません?朝の話をもっと聞きたいんですよ〜。」
「ご飯食べに行くのは良いけど、もう喋ることないぞ?今のところはあれが全てだし。」
「いいんですよ、僕が興味持ってるだけなんです。同じ話をもう一度聞かせてくれませんか?」
「まぁ、それならいいけど。どこに食べに行くのかは決めてるのか?」
「じゃあ一緒にマ◯ド行きましょう。今ハンバーガーが食べたい気分なんです。」
一度会社から出て、徒歩10分圏内のマ◯ドまで歩く。その間にも東保にはあの肉のことについて聞かれた。東保は昔から怖いものが好きって言っていたので納得はできる。
マ◯ドに着くとあらかじめ決めておいたメニューを注文し、番号が呼ばれるまでは普通に話した。
「なぁ、あの肉について凄く聞いてくるけど、なんか心当たりでもあるのか?」
「心当たりはないですよ。興味があるだけです。」
「興味があるだけなら尚更変じゃないか?朝はそんなんじゃなかったのに。」
「じゃあ分かりました。正直に言います。…先輩の家にあるその肉、今日見に行ってもいいですか?」
「なんで?」
「だって、動く肉って不気味じゃないですか?朝はあんなこと言いましたけど怖くなりそうなものは見てみたいというか…」
「なるほど、好奇心ってやつね。まぁ、見に来るだけならいいよ。部屋は綺麗じゃないかもしれんが。」
「じゃあ、行きますね。会社終わったら、そのまま直行します。」
ちらっと腕時計を確認すると、だんだんと昼休憩終了の時間が迫ってきていたのですぐに食べ切り、ゴミを片付けて会社に戻った。
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