3つの約束

クライングフリーマン

3つの約束

 3つの約束

 ============= フィクションです =============

 ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ。

「おい、何さっきから、ぶつぶつ言っている?不満があるなら言ってみろ。」

「だって、だって、だって、こんな姿、誰にも見られたくない。」

「ちゃんと、服着ているじゃないか。」

「元の生活に戻りたい。僕は何も悪いことしていないのに。」


 事の発端は、交通事故に遭いかけた、親娘を助けたことだった。

 僕の名前は、松平恵美(まつだいらえみ)。えみなんて名前にしたから、いつもイジメられていた。

 親が役所に届けた時は、『蝦夷(えみし)』だったのだが、役所で勘違いして『恵美氏』となり、松平恵美氏と、敬称付きで届けたのだろう、また勘違いして戸籍に登録された。

 キラキラネームも、後で揉めるが、適当な名前も後で揉める。

 こう言っちゃなんだが、「人手不足」を理由に、役所での『異民族バイト』が多すぎる。

 そして、「よきにはからえ」的な、坊ちゃん管理職も。

 ともかく、僕は中学に進級できなくなった。

 ていうか。正月を迎えたばかりなのに、『行方不明』になった。


 事の発端は、交通事故に遭いかけた、親娘を助けたことだった。

 きーーーーー。

 街中に急ブレーキの音が響く。

 僕は、咄嗟にダンプカーの前に飛び込んだ。


 気が付くと、僕は病院のベッドの上に寝ていた。

「気が付きましたか、まつひらえみ、さん。」

 看護師が、医師を呼びに行った。

「気が付いたかね。お母さんは、残念ながら救えなかった。でも、君は奇跡的に助かった。肩の瘤も時間をかければ、治るよ。」


 医師は、鏡で肩の瘤を見せてくれた。

 確かに瘤はある。でも、僕は女の子になっていた。

 僕は声を上げて泣いた。


 医師と看護師は、気を利かせて、病室を出て行った。

 誰だ?何故、ダンプカーは事故を起こしたのかって?

 問題は、そこじゃない。


 ふと窓際を見ると、黒ずくめの男が立っていた。

「すまん。手違いだったんだ。まさか、同じポイントで『似た名前』の人間がいたなんて。」

「オジサン、だあれ?」

「マーダラー。3ヶ月の講習受けて、やっとなったと思ったら、このザマだ。」

「・・・死神?」「だから、そう言ったでしょ。」「マーダラーって言った。」

「そうだっけ?」

「元に戻して。」「無理。死亡フラグを目印に、時間と場所指定されて、業務をこなすのが仕事だから。」

「仕事、大失敗だね。死亡フラグ立ってたのは、この体、まつひらえみちゃんだよね。でも、心は、僕、まつだいらえみ、だよね。僕は死んだの?僕の体は?」

「どう言えばいいかな?肩の瘤、押してみて。」

「あれ?何?私・・・お母さんは?あんた、誰?」


 少女は、窓に映った自分を見た。

「やだ。。男の子になってる。まさか・・・ある・・・ない。」

「まるで、昔流行ったドラマみたいって、思った?」

「思った・・・てか、どういうこと?」

「肩の瘤、触ってみて。」

「そういうこと?俺さあ、女子時々男子になったの?」


 事の発端は、交通事故に遭いかけた、親娘を助けたことだった。

 そして、おっちょこちょいの死神によって、男子でも女子でもジェンダーでもない体と心になった。


 平伏した死神によると、所謂『仮免』状態らしい。

 死神は、魔法使いではないので、消えた僕の体を修復は出来ないらしい。

 肩の性切り替えスイッチは、応急処置らしい。


 ショックから立ち直れないまま、死神は『神様からの手紙』を持って来た。

 手紙には『3つの約束』が書かれていた。

 1つ。死神見習いは解雇。

 1つ。まつひらえみちゃんは、普通に生きる。

 1つ。まつだいらえみは、死神見習いになる。


 僕は、3階の窓から飛び降りた。


 ぶつぶつ、ぶつぶつ、ぶつぶつ。

「おい、何さっきから、ぶつぶつ言っている?不満があるなら言ってみろ。」

「だって、だって、だって、こんな姿、誰にも見られたくない。」

「ちゃんと、服着ているじゃないか。」

「元の生活に戻りたい。僕は何も悪いことしていないのに。」


 事の発端は、交通事故に遭いかけた、親娘を助けたことだった。


 死神見習いになった僕は、同じ失敗をした。

 死亡フラグの1人の人間を死に導く筈が、2人が合体した。


 あの死神は、おっちょこちょいじゃなかった。

 システムに『バグ』があったのだ。

 僕は辞職を願い出た。


 ―完―






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