第40話

📘 第40章:覚醒と破滅



(救いたい。

それなのに――この手で、壊してしまう。)



🔷【2051年2月末 深夜 – 改訂者専用区域】


廊下に鳴り響く警報音。


淡い赤色が、無機質な壁面を血のように照らしていた。



沙耶の声が無線越しに響く。


「新太……家族を守って。泣かせないで。」



リビング。


新太は膝をつき、震える手で頭を抱えていた。


「……誰だ……誰が泣いてる……?」


頭痛と耳鳴りが激しく脳を叩く。


(逃げて……真羽を連れて……)


女性の声が、記憶の奥から滲み出してくる。



「……誰だっつってんだよ……!」


新太が叫び、床を殴りつけた。


その瞳がゆっくりと上がる。


冷たい灰色の光。


理想父親の仮面は剥がれ落ち、そこには“翔真”がいた。



🔷【過去フラッシュバック】


――泣き叫ぶ幼い少女。


――血の匂い。


――震える声。


(泣き止むまで……やめないからな……)



🔷【NOISE班 – 戦慄】


真田が咄嗟に銃を構え直した。


(来る……理想父親じゃない……不破 翔真だ……!)



透也は背後で唇を噛み締めた。


(光生……あいつは……お前を殺した男だ。それでも……)


彼は声を震わせながら指示を出す。


「真田、月陽を連れて退け!」



真田は後退しながら叫ぶ。


「……新太はどうする!?」



透也は目を伏せ、苦渋の声を絞り出した。


「今……あいつを連れて帰るのは危険だ。」



🔷【佳乃(通信越し)】


ホログラム越しに佳乃が叫ぶ。


「でも……ECHOは改訂法崩壊の証拠になる……あいつを回収すれば……!」


その指は震えていた。


(助けたい……でも……殺さなきゃいけない……?)



🔷【ルカ – SNS回線】


ルカは別室で泣きそうな声を上げる。


「パパ……お願い……月陽ちゃんを、叩かないで……!」



🔷【沙耶 – 命令崩壊】


ナースステーションモニター越しに、沙耶が微かに震えながら呟く。


「新太……お願い……家族を……」


しかし、翔真は冷笑を浮かべた。


「……誰だよ……テメェは……」


灰色の瞳が、カメラ越しの沙耶を射抜いた。


「……望……!」


叫んだ声は、凍り付くほど冷たかった。



🔷【甲斐 – 決断】


甲斐は震える指でECHO抑制剤の投与針を構える。


(泰輔……頼む……思い出すな……いや……思い出してくれ……!)


矛盾した祈りが、心臓を締め付ける。



「ごめんな……新太……」


静かに呟き、投与針を前に出した。



しかし。


翔真の手が素早く伸び、甲斐の手首を掴んだ。



🔷【章ラスト】


冷たい瞳が、真っ直ぐに甲斐を見据えていた。


そして、静かな声で呟いた。


「……邪魔すんなよ。」



(救いたいのに。

この手で……壊してしまう。

――俺は、誰だ。)



🔚 第40章・完

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