第39話
📘 第39章:揺らぐ理想
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(この手で、守りたい。この手で、壊してしまう。――俺は、誰だ。)
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🔷【2051年2月末 深夜 – 改訂者専用区域】
廊下の奥に響く、無音に近い足音。
真田率いるNOISE武装班が、暗視ゴーグル越しに月陽の居室ドアを確認した。
「解除確認、突入まで3、2、1……!」
電子錠が解除されると同時に、二人の隊員が前進し、室内クリアリングを開始。
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居室奥、ベッドの上で月陽が泣き叫んでいた。
「いやっ……やめて……パパぁ……!」
真田が無線で短く指示を飛ばす。
「初代おっさん、月陽確保。」
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🔷【灯 – 母の代替として】
灯が駆け寄り、月陽を抱きしめた。
「大丈夫……大丈夫だよ。ママがいるから。」
腕の中で震える小さな身体。
(……光生さん……私……やっと……あなたに……)
月陽がすすり泣きながら、灯の白衣を握り締めた。
「ママ……?」
震える声。
灯の瞳に涙が滲む。
(思い出して……でも、思い出さないで……)
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🔷【沙耶 – 命令者の影】
廊下奥から、沙耶が無表情で歩いてくる。
「何をしているの。月陽はここにいるべきよ。」
その声は冷たく、しかし微かに揺れていた。
「新太。止めて。家族を守りなさい。」
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🔷【新太(翔真) – 崩壊する理想】
リビングの暗がり。
そこに、新太が立っていた。
ぼんやりと虚空を見つめ、「……誰だ……何してる……」と呟く。
灯が恐怖に息を呑んだ。
その時、月陽が震える声で叫ぶ。
「パパ……!」
新太の顔が月陽へと向いた。
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(守らないと……この子を……)
脳裏に、誰かの声が響く。
(――逃げて。真羽を連れて……)
優しく震える声。女性の声。
(……誰だ……?)
頭痛と耳鳴りが襲い、膝をつく。
ECHO警報ランプが赤く点滅し始めた。
🔷【NOISE班心理】
真田がすぐに銃を構え直した。
(来る……理想父親の仮面じゃない……“翔真”が……!)
透也が後方で唇を噛み締める。
(光生……あいつは……お前を殺した男だ。それでも……)
透也が短く指示を出した。
「真田、月陽を連れて退け。」
真田は振り返り、低く問い返す。
「……新太はどうする?」
透也は目を伏せ、僅かに声を震わせた。
「今……あいつを連れて帰るのは危険だ。」
真田は唇を噛み、銃を握る手に力を込めた。
そのやり取りを聞きながら、灯が小さく呟いた。
「……でも……光生さんなら……絶対……諦めなかった……!」
透也の拳が震えた。
🔷【甲斐 – 医師の祈り】
甲斐は震える手でECHO抑制剤を握り締めた。
(泰輔……頼む……思い出すな……いや……思い出してくれ……!)
矛盾した祈りが、心臓を締め付ける。
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🔷【ルカ – 無力の絶望】
通信回線越しにルカが泣きそうな声を上げる。
「月陽ちゃん……お願い……無事でいて……。」
モニターには、拳を握り締める新太の姿が映っていた。
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🔷【ECHO発現 – 章ラスト】
新太の瞳から一筋の涙が零れる。
しかし次の瞬間、その瞳は冷たく変わる。
(泣き止むまで……やめないからな……)
幼い真羽を殴る過去の映像。
握り締められた拳が震えた。
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(この手で、守りたい。
この手で、壊してしまう。
――俺は、誰だ。)
🔷【作戦タイムリミット】
無線が鳴る。
『佳乃より全班。廊下セキュリティ、残り稼働時間3分。繰り返す、残り3分――!』
透也が短く息を吐き、決断した。
「真田、月陽を連れて撤退開始。医療班、バックアップルートへ移動!」
真田が灯を見た。
「行け。」
灯は涙を拭い、月陽の手を握った。
「……パパも……一緒に……!」
月陽の泣き声が響く。
新太は、その声に微かに笑った。
「……そうだな……行こう……。」
だが、その瞳には、どこか遠い焦点の狂いがあった。
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🔷【奪還の行方】
(この奪還は、救いか――破滅か。)
暗い廊下を走る灯と月陽の背後で、
新太の静かな笑い声が、壊れた空気に滲んでいた。
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🔚 第39章・完
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