第22話

📘 第22章:心は誰のものか



🔷 【ファイル展開】


2046年、NOISE仮拠点。


ホログラムモニターに、解読されたデータが次々と浮かび上がる。


《RE:CODE改訂プロトコル – V1.07》

《被験者一覧 – 極秘指定》


灯が震える指でスクロールする。


「これ……全部……記録改訂された人の……」


画面には、年齢、氏名、犯罪歴、改訂日、改訂後氏名、社会復帰状況が並んでいた。


「……こんなに……」


灯の声が掠れる。


透也は無言でデータを見つめ、拳を握りしめた。


(……これが……この国の“理想”の裏側……)



🔷 【翔真の記録】


【第1号被験者:山下泰輔(改訂後:不破翔真)

改訂内容:暴力衝動抑制・社会適応シナリオ埋め込み

経過観察:ECHO兆候あり】


「……この人が……」


灯が呟いた。


透也は硬い声で続ける。


「……光生を殺した男だ。」



🔷 【揺れる信念】


沈黙が降りた部屋で、灯は強く息を吐き出した。


「……でも。」


皆が彼女に視線を向ける。


「こんな状況でも……光生さんは、“それでも人を信じたい”って……言っていました。」


声が震える。


「理想論だって笑われても……それでも、信じることを諦めなかった。」



🔷 【透也の落胆】


透也は瞳を閉じ、静かに呟いた。


「……それでも……」


その声は低く掠れ、苦痛に満ちていた。


「……光生は、命を奪われた。」


その言葉に、灯の瞳が揺れた。



🔷 【真羽への希望と恐怖】


「でも……!」


灯の声が鋭く響く。


「真羽ちゃんは……生まれました!

光生さんの血も……意思も……きっと継いでる……!」


しかし、その言葉を吐いた自分の胸に、冷たい何かが刺さった。


(でも……それは同時に……)


翔真――山下泰輔の血も引いている。


あの暴力と支配の血が。


(……でも……)


もし、これからの成長で、それを変えられるとしたら。


記憶によって、人格や行動傾向を変えられるとしたら。


(……それは……)


結城維人の理論の肯定。


「……血や遺伝子は、記憶で変えられる……」


灯の呟きに、甲斐が顔を上げた。



🔷 【甲斐の葛藤】


「記憶で……人格を変える……」


甲斐の瞳が震えていた。


「記憶も……遺伝子も……医療も……誰かが手を加えていい領域じゃない……。」


苦しげに唇を噛む。


「でも……治療と称すれば、臓器の移植でさえ許される……」


「……記憶も……?」


透也が低く問うた。


甲斐は答えない。ただ、苦悶に満ちた表情で俯いた。



🔷 【灯の問いかけ】


「……でも!」


灯が一歩、前に出る。


「記憶も遺伝子も……影響し合うのは分かります。

でも……感情は?」


佳乃が目を上げる。


「感情?」


「はい……感情は……誰かが作れるものなんですか?」


涙で滲む瞳に、必死の光が宿っていた。


「光生さんが……よく言ってました。

人には……心があるって。」



🔷 【甲斐の沈黙】


甲斐は顔を上げられなかった。


灯の問いに、答える資格などないと知っていた。


(……俺は……何を……してきた……)



🔷 【ルカの言葉】


その時、部屋の隅でルカが小さく笑った。


「ふふ……心ねぇ。」


透也が振り返る。


ルカは端末を弄りながら、平坦な声で続けた。


「でもさ、私のVTuber配信だって、人の感情動かしてるんだよ?」


灯が振り返る。


「……ルカちゃん……?」


ルカは無表情のまま、小さく肩を竦めた。


「記憶に残るでしょ?感情も動くでしょ?

おかげで、私たちの活動資金も潤ってる。」


佳乃が鼻で笑った。


「……確かに。

感情も記憶も、繋がってる。」



🔷 【透也の決意】


透也は皆を見渡し、静かに呟いた。


「……だが、誰かがそれを“操作する権利”などない。」


拳を握り締める。


「俺たちは……NOISEは……そのためにあるんだ。」



🔷 【流転の日々】


2046年から2047年。


NOISEは、特定を避けるため、市民区域の廃ビルや地下シェルターを転々とした。


冷たい夜風が吹き抜ける路地裏。


灯は空を見上げ、胸に手を当てた。


(光生さん……)


(私は……人を信じ続けます。)


その想いは、夜空を突き抜ける微かな雑音のように、しかし確かな光を孕んでいた。



🔚 第22章・完

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