第21話

📘 第21章:記憶の鍵



🔷 【緊迫の始動】


佳乃の指先が、甲斐の端末を操作する。


「ファイルは……【R_KAI_MEMO.EXE】……暗号化レベル、最高ランク……」


灯が覗き込み、眉をひそめた。


「解読できるんですか?」


「黙って。」


佳乃が短く言い、端末にコードを打ち込む。



🔷 【時限トラップ発動】


突然、モニターに赤い警告表示が弾けた。


《外部アクセス検知 – 自爆プロトコル作動》


「っ……!?」


佳乃の表情が強張る。


「これ……カウントダウン入った。10分……いや、正確には600秒。」


灯が顔を青くする。


「自爆……って、全部消えちゃうんですか!?」


「そういうこと。」


佳乃は冷たい瞳で画面を睨んだ。


「急ぐよ。fastestのハンドルネームは伊達じゃない!」


見守る灯。


「よし!最深部まで着いたよ。」


🔷 【佳乃の違和感】


モニターを睨みつける佳乃の指が、一瞬止まった。


(help.y?………)


ディレクトリ構造の隅に、奇妙なファイル名が浮かんでいる。


「……は?」


小さく息を吐き、額にかかる銀髪を払いながら呟いた。


「何これ……ヘルプファイル?

いや、拡張子がおかしい……」


ほんの僅かに眉をひそめ、その目に鋭い光が宿る。


「……誘いか、トラップか……」


コードの海に潜る指先が、さらに速さを増していった。




🔷 【生体認証 – 甲斐への接続】


「これ、生体認証も入ってる……甲斐さん、こっち来て。」


佳乃が端末横の簡易スキャナーを差し出す。


甲斐は微かに震えながらも、手をかざす。


【認証エラー】


「っ……なんで……」


佳乃の指が止まる。


「記憶改訂で、生体パターンの自己認識がズレてる……。」


「じゃあ、どうすれば……!」


灯が叫ぶ。



🔷 【透也の揺さぶり】


甲斐が俯いたまま呟く。


「無理だ……何も、思い出せない……」


透也が低く問いかける。


「……なぜ、お前は研究所に入った。」


「……え?」


「答えろ。なぜだ。」


甲斐の指が震える。


「……患者を、救いたかった……改訂で苦しむ人を減らせるならって……」



🔷 【理想と現実】


「じゃあ……今の現実を見ろ。」


透也の声が鋭くなる。


「お前が信じた制度が、光生を殺した。

……それでもまだ、黙っているのか?」


甲斐の呼吸が荒くなる。


(……俺は……救いたかっただけだ……)



🔷 【ECHO発動】


胸奥で、黒く閉ざされていた記憶が軋む。


脳裏に閃く。


――血に濡れた光生の顔

――泣き叫ぶ少女の声

――白衣の自分を睨む、かつての患者の瞳


「……あああああっ……!!」


甲斐の全身が震え、モニターの認証バーが進む。


【認証完了 – 99%】



🔷 【パスフレーズ入力】


《最終復号パスフレーズを入力してください》


甲斐が震える声で呟く。


「……雑音……雑音の中の光……」


透也が頷く。


「……入力しろ。」


佳乃の指が叩く。


【入力:雑音の中の光】



🔷 【ファイル解読完了】


暗号ファイルが次々と展開。

• 記録改訂プロトコル

• 被験者完全リスト

• 【第1号被験者:山下泰輔】の詳細データ


灯が息を呑む。


透也の視線が鋭く光る。


「……これが……制度の真実か。」



🔷 【甲斐の呟き】


静寂の中、甲斐が嗚咽を漏らした。


「……違うんだ……こんなはずじゃ……なかったのに……」


彼の瞳には、理想と現実の断絶を見つめる絶望が滲んでいた。



🔷 【真田と佳乃のやり取り】


重い空気の中で、真田が低く呟いた。


「……しかし、こんなに簡単に解除できるものなのか?」


その言葉に、佳乃がぴくりと眉を跳ね上げる。


「はぁ?何言ってんだ、初代おっさん!!」


真田が顔を上げると、佳乃はコードを叩きながら苛立った声を続けた。


「あたしだから、この時間で解除できてるんだよ!

これを突破できるのは、このシステム作ったやつと……世界中探しても、あたしくらいだからね!!」


灯が思わず息を呑む。


真田は目を細め、そしてわずかに口角を上げた。


「……頼もしいもんだ。」



🔷 【佳乃の警告】


佳乃は最後のコマンドを叩き終えると、ふっと溜め息をつき、端末を閉じた。


「……このPC、破棄しておいて。」


透也が眉をひそめる。


「どういう意味だ。」


佳乃は振り返らずに答えた。


「データは全部移したけど……位置は特定されたかも。」


その場に、冷たい沈黙が落ちた。


灯が不安げに呟く。


「じゃあ……ここも……?」


佳乃は短く頷き、銀髪をかき上げた。


「さぁね。動くなら早い方がいいよ。」



甲斐が接触してから、わずか3日の出来事だった。



🔚 第21章・完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る