第20話

📘 第20章:ハッキングの女神



🔷 【佳乃の提案】


2046年、NOISE拠点。


冷たい蛍光灯の下、張り詰めた空気を切るように、佳乃が声を上げた。


「スパイだろうが何だろうが、こっちが行動する前に、はっきりさせちゃえばいいでしょ?」


真田が目を細める。


「……どういう意味だ。」


「スパイって分かれば、出てって貰えばいいし、スパイじゃないなら、強力な味方になるでしょ?」


灯が小さく息を呑んだ。


「で……でも、どうやって……?」


「え?何するって?」


佳乃は小さく笑い、指先でタブレットを弾いた。


「このおっさんが使ってたPCに侵入するよ。」



🔷 【反対と沈黙】


透也が眉をひそめる。


「……佳乃、ここは犯罪集団じゃないぞ。」


「なー、真田。」


真田は無言で腕を組み、目を閉じた。


「市民を巻き込まなければ、反対はしない。」


灯が手を挙げた。


「はい!はい!私、潜入してきます!」


その声に、場が静まり返る。


透也と真田が佳乃を見つめた。


「……佳乃一択だな。」



🔷 【佳乃の準備】


佳乃は肩をすくめると、軽い口調で言った。


「新しいPC、1台欲しい。」


「あー。」


透也が、返事をする。


佳乃は既に端末を接続しながら笑った。


「うん、だからこれは今日でバイバイ。早い方がいいでしょ!」


「えっ!?新しいPCは?」


灯が聞く。


「うん、それはこれの変わりに!」


「必ず辿られるからね。」



🔷 【侵入開始】


薄暗いモニターに、無数のコードが流れ始める。


佳乃の指先が軽やかに動き、端末に接続された解析プログラムが甲斐の端末を侵食していく。


「……セキュリティ甘すぎ。元医療班って、こんなレベル?」


舌打ち混じりに呟きながら、数分後。


「……っ……」


佳乃が声を詰まらせた。


「何だ?」


透也が身を乗り出す。


佳乃はゆっくりと甲斐に顔を向け、銀髪をかき上げた。


「おっさん……これは……?」


モニターには、膨大な暗号化データと、


【R_KAI_MEMO.EXE】


“改訂プロトコル”と名付けられたファイル群が浮かび上がっていた。


甲斐は、わずかに震えた声で呟いた。


「……それは……俺の記憶だ。」



🔷 【真実の扉】


沈黙が支配する会議室。


その中で、佳乃の瞳だけが静かに燃えていた。


(これが……この国の、記憶の檻……)



🔚 第20章・完

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