第19話

📘 第19章:疑念と断絶



🔷 【疑念】


2046年、NOISE拠点。


冷たい蛍光灯の下、主要メンバーが会議テーブルを囲んでいた。


「……で、本当に信じるのか?この男を。」


真田が腕を組み、鋭い視線を甲斐に向ける。


甲斐は俯き、返事をしなかった。


「確かに……甲斐さんが持ってきた情報で、光生さんの最期は分かった。でも……」


灯が声を震わせる。


「どうして……甲斐さんは生きてここに来られたんですか?

記録改訂で全部忘れさせられても、おかしくないのに……」


「……だよな。」


真田が低く吐き捨てた。


「情報統制局が野放しにするはずがない。」



🔷 【透也の葛藤】


会議テーブルの奥、透也は拳を握りしめていた。


(……分かっている。

甲斐が“向こう側”の人間である可能性……)


だが。


(今は……こいつしか手がかりがない。)


「……なぜだ。」


透也が低く問う。


「なぜ……光生は殺されなくてはならなかった。

記録改訂者である翔真に……何が起きた。」


甲斐は、硬い声で答えた。


「……改訂の失敗……です。」


「失敗?」


「彼の前の人格は……」


甲斐は言葉を詰まらせ、唇を噛んだ。


「……山下泰輔。殺人、暴行、複数の前科持ち。

改訂制度第1号被験者……そして……」


「そして?」


「……理想の社会復帰モデルでした。」



🔷 【広がる疑念】


テーブルを囲む全員が、息を呑んだ。


「そんな奴が……光生さんを……?」


灯の声が震える。


透也は額に手を当て、思考を巡らせた。


(制度の失敗……

いや……それだけじゃない。)


(なぜ甲斐は改訂されずに、ここに来れた?

……向こうの狙いは何だ?)


「もしかしたら……」


佳乃がタブレットを叩きながら呟いた。


「向こうはわざと甲斐さんを泳がせてるのかもね。」


「……どういう意味だ。」


「この状況で情報持ち込んでくるってことは……」


佳乃の水色の瞳が、冷たく細められる。


「……こっちに仕掛けてる可能性が高いってこと。」



🔷 【真羽の所在】


透也は顔を上げ、甲斐を睨みつけた。


「……真羽は?光生の娘はどこだ!!」


甲斐は肩を震わせ、ゆっくりと首を振った。


「……分かりません。」


「……っ……」


透也の拳がテーブルを叩く鈍い音が、部屋に響いた。



🔷 【佳乃の決意】


重い沈黙の中、椅子を蹴って立ち上がる音が響く。


「……ったく。」


佳乃だった。


銀髪を指でかき上げ、鋭い笑みを浮かべる。


「悩んでばっかで進むわけないでしょ。」


彼女はタブレットを持ち直し、透也を見下ろした。


「そろそろ――私の出番なんじゃないの?」


その瞳には、冷たい炎のような光が宿っていた。



🔚 第19章・完

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