第18話

📘 第18章:奪われた声



🔷 【行方不明の報せ】


2046年、初夏。


NOISE拠点の空気が張り詰めていた。


「……一家全員、行方不明?」


佳乃がモニター越しに警察発表を睨みつけた。


「馬鹿な……光生さんが?そんなわけ……」


灯は両手を握りしめ、震える声を絞り出した。


「数日前まで……普通に出勤していて……私と話してたんです……」


透也は何も言わなかった。

ただ、壁に貼られた光生の写真をじっと見つめていた。


隣で真田が低く呟く。


「警察は“家庭内トラブルによる失踪”で片付ける気だ。

何の捜索指令も出ていない。」


「……そんな……」


灯の目から、悔し涙が溢れた。



🔷 【回想 -最後に見た光生】


「灯ちゃん、これお願いね。」


笑顔でカルテ整理を頼む光生。

だが、その微笑みの奥に、ほんの僅かな翳りがあった。


(……今思えば、あの時……

光生さん、翔真さんのことで悩んでたような……)


「……何か、翔真の様子が変だったとかは?」


透也の問いに、灯は首を振った。


「分かりません……でも……」


「でも?」


「……光生さん……怖いって、言ってました。」



🔷 【疲弊するNOISE】


連日、近隣への聞き込みが続いた。


「見てないってさ。」


真田が肩を落として戻ってくる。


佳乃も、端末を閉じため息をつく。


「データも監視網も抜けてる……

完全に“消された”としか思えない。」



🔷 【甲斐の接触】


夜。


古い診療所跡地の外階段。

透也は薄い夜風に髪を揺らしながら、建物を見上げていた。


(光生……どこだ……)


「……朝比奈透也さんですね?」


静かな声に顔を上げる。


白衣の裾を翻し、黒髪を後ろで束ねた眼鏡の男が立っていた。


「……あんたは?」


男は静かに名刺を差し出した。


【甲斐 仁 – 元RE:CODE研究所協力医師】


透也は一瞥し、低く問うた。


「……何の用だ。」


「不破光生さんのことです。」



🔷 【甲斐の告白】


診療所の奥。


甲斐はタブレットを差し出した。


「これは……」


画面には、血のついた床に倒れる光生の写真。

そして、彼女の頬に触れながら無表情で立ち尽くす翔真。


「これは……なんだ……」


声が震えた。


「これが、彼女の最期の姿です。」


「……どうして、あんたがこんなものを……!」


「私は……彼女を助けられなかった。」


甲斐の指が、僅かに震えた。


「だが、真実を知ってほしかった。」



🔷 【真羽の行方】


透也は涙を流しながら、甲斐の胸倉を掴んだ。


「……真羽は!?光生の娘はどこだ!!」


甲斐は顔を伏せ、微かに首を振った。


「分からない……私も……それが知りたい。」



🔷 【決意 – NOISE始動】


診療所を出る頃、夜が明け始めていた。


冷たい朝焼けの下で、透也は空を見上げた。


「……光生。」


灯が涙を拭い、佳乃と真田が並び立つ。


透也は振り返り、僅かに笑った。


「……始めるぞ。」


「リーダー……」


「NOISEは、ここからだ。

奪われた声を、取り戻す。」


静かなその声は、

夜明け前の空気に溶け込み、やがて力強い決意となって響いていった。


市民団体NOISEが、武装団体NOISEとしての始まりでも、あった。



🔚 第18章・完

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