第10話

 起きて朝食を済ませた俺は、この町に一番近いダンジョンへと向かっている。このごろの食事は、栄養補給というより習慣だな。



 意外と朝からダンジョンに行く人はいるみたいだ。門を出ると、生き生きとした冒険者達はダンジョンへと続く道を歩いて行っている。


 おじさんとかお姉さんとか十数人で、ほとんどはパーティを組んでいるみたいだ。これからの冒険に胸を躍らせているようだ、俺とは違うな。


 ーーいや、もしかしたら同じかもしれない。俺も、他の冒険者と同じくらい、希望を持っている。胸が躍っている。



 歩いていると、なんかいかつい格好のお兄さんに話しかけられた。


「おい、君。何でこんなところにいるんだ、危ないぞ。この道はダンジョンへの道なんだ」


 ああ、俺が子供だから心配してくれているのか。別に、いらない心配だと思うけど。


「はい、知ってますけど. . 」

「それなら早く家に帰るといい」

「いや、僕冒険者なので、ダンジョンに行かなくちゃ」

「へ?君が?」


 やっぱり、そりゃ驚くよな。あのおじさんがおかしかっただけだな。


 そうやって話していると、お兄さんのパーティーメンバーらしき3人の男女がこっちへ駆け寄って来た。


「おい、どうしたんだ、フィス」

「いや、なんかこの子が冒険者だって言うから. . . 」

「うそ、この子が?ちょっと小さすぎるんじゃないかしら」


 やっぱ俺ぐらいの歳の冒険者は珍しいものなんだな。4人は奇妙な目でこっちを見てくる。子供相手にその目はどうなんだ...


 すると、突然最初のお兄さんが詰め寄って来た。


「君が冒険者って、それ本気で言ってるのか?」

「はい、、」

「お前、冒険者を舐めてるんじゃないか?」

「いや、そんな事は. .

「お前、死ぬのは怖いだろ。別にそれは当たり前だ、俺もまだ怖い。でも、それ以上に楽しめる奴が冒険者になるんだ。しかも、危険で冒険者の中でもやる人の少ないダンジョンに行くなんて、、パーティーもいなさそうだし、悪い事は言わない、早く辞めて帰った方がいい」


 ・・何か長ったらしく説教された気分だ、まあこいつは優しさでこんな事言ってるんだろうが。. . . 熱い奴だな、全く。これが、本当の『冒険者』って感じがする。


 ただ、今にも死にそうなほどに無気力に生きている俺には、言い返すこともできなかった。


「お気遣いはありがたいですが、僕は辞めるわけにはいかないんです」

「は?お前本気で俺ら冒険者を舐めて. . . 」

「おい、早く行かないと遅れちまうぞ」

「・・・わかった、もう行こう」


 そう言って、4人は行ってしまった。


「いったい何だったんだ...そうだ、俺も行かなきゃ」


 俺もダンジョンへと向かった。




 ▽




「これがダンジョンかぁ」


 道を進み、俺はダンジョンへと辿り着いた。


「これは、そのまま入って良いのかな?なんか宝具みたいなのが置いてあるけど」


 ちょっと考えていると、別の冒険者パーティーが通りかかった。


「よしっ、じゃあ行くか」

「おう」


 そう言って冒険者証を宝具にかざすと、光と共にパーティーみんなが消えてしまった。


「テレポートってこんな感じなのか。試しに、俺もやってみるか」


 持ってきた冒険者証をかざした

 すると、目の前に表示が出てきた。



 ーーーーーーーーーーーー

 '聖の魔層'


 階層   1/46



 -1-

 -2- 記録なし

 -3- 記録なし

 -4- 記録なし

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



 ーーーーーーーーーーーー



 俺はここに来た事が無いから全部記録なしって事ね。


 てか〈聖〉なのか〈魔〉なのか、一体どっちだよ。紛らわしい名前だな。


 そう思いつつ、俺はダンジョンへと進んだ。



 うわっ、中ってこんな暗いのか。まあ、俺には丁度いい、かな。こういうところで終われればいいんだけど.....。



 やっと明かりが見えてきたよ。てかこれ、何の光だ?

 近づくと、だんだん光の正体が見えてきた。これは、宝石か?それとも魔石ってやつか?なんかキラキラしてるけど、見た事がない。

 そう思っていると、少し先に動物みたいなものが見えてきた。


「うわっ、なんかいるし」

「グァゥル」

「何だこいつ、狼みたいだな. .


 すると突然襲いかかってきた。


「うぎゃっ 」


 剥き出しの牙が俺の足を捉える。俺は逃げずにそれを受け止めた。


「いっつぅ」


 でも、2秒も経たないうちに再生してしまった。


(これで治らなかったら楽だったのにぃ. . . )


 さらに攻撃してきたが、ことごとくすぐに治ってしまった。


 やっぱりダメか、、どうしてこんな体に....

 俺は短剣を出し、狼に斬りかかった。


「よっっ. . . . へ?」


 俺の腕はいつのまにか、見事な一撃で狼の首を切っていた。俺の身体能力じゃ信じられない力がでた。


 まじかよ、これが<剣王>の力か。末恐ろしいな。


 その後ろから、さらに7匹位の狼が襲ってきた。俺は攻撃しようとすると、体が勝手に動く。

 短剣は綺麗な太刀筋で魔物を次々と葬り去った。


「ちょっと、3匹同時に攻撃はずるく無い?!」


 しゅぱぱぱっ


「・・・・・・・」


「何だよこれ、ほんと馬鹿げた力だな、おい。


 苦労することなく、奥へと進んでゆく。

 そのまま奥へ進んで行くと、大きな階段が見えた。近づいて下を見たが、暗くてよく見えなかった。


 なんか気味悪いな、ここ。こんなところを毎日通ってるなんて、冒険者って結構エグい職業だな。


「カッ、カッ、カッ」


 降りる音が反響して、やはりちょっと気味が悪かった。

 下まで辿り着くと、大きな扉が見えてきた。


「めっちゃでかい・・・これ開けられるのか?」


 キィィ


 あれ、すんなり開いたーーーー

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