第8話

「ゔっ、、、へ?」


 心臓へと刃が突き刺さる瞬間、心臓から何かが光った。


 俺の胸を突いたはずの剣は、心臓へ届く前に弾き返されていた。


「き、傷が治って……」


 傷は、みるみるうちに塞がり、跡形もなく消え去っていく。


「な、なんで…」


 俺は、確かに自分を刺したはずだ。でも、剣にはもう血が付いていない。さっきの光は、一体なんだ?・・・ダメだ、それならもう一度っーー


 俺は、勇気を振り絞って再び心臓を刺した。


「っっ!やっぱり治るんだ」


 刺した部位はやはりすぐに治ってしまった。でも、痛みは感じた。信じられない...


「一体何が起こって. . . ん?なんだこれ」


 急に、目の前に自分のステータス、みたいなのが表示された。詠唱もしてないのに、何で...


 ≪スキル【超回復】【英雄の加護】が自動発動しました≫

 〝以後このメッセージを表示しますか"

 〈はい〉 〈いいえ〉


「何だ?」


 不思議に思いながらも適当に〈いいえ〉を押した。

 そうすると、後ろに隠れているステータスが出てきた。




 ’ステータス'

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


【名前】 レイン・アリオス 

【種族】 人間族  【年齢】 11歳 

 魔力 : 38065865

【称号】

 <魔術師>  Lv.3

 <英雄> Lv.538

【スキル】

 〈魔法系〉 

 [水魔法] Lv.1 +Lv.537


 [火魔法] Lv.1 +Lv.537


 [氷魔法] Lv.1 +Lv.537


 [援助魔法] Lv.1 +Lv.537


 [光魔法] Lv.765


 〈剣術系〉  剣王 (詠唱不要) Lv.965


 〈防御系〉  英雄の加護 Lv.1095


【固有魔法】 ステータス

 元帥

 極・超回復

 レベル補正


【総合能力】 S++



 ーーーーーーーーーーーーーーーー




 何だよこれ....


 見たことないステータスばかりだ。称号が2個ある?しかも<英雄>って、もしかしてお父さんの. .


 でも、何で引き継がれてるんだ?スキルの引き継ぎはできないって聞いてたのに、どうして。


 心臓を、取りかえた、からなのか?


 ていうかさっきの表示、もしかしてさしてこの【超回復】と、【英雄の加護】のせいで俺は死ななかったってことか。



 . . . もしかして、俺は死ねないのか。どれだけ死にたくても、、俺は生きなきゃいけないってこと、か。


 レインは、絶望の淵に立たされていた。一度死のうと決心したレインは、自分が死ねない事を悟ったのだった。


「俺に、一体どうしろってんだよっ…」


 何で、何で. .



 こうして、俺は逃げ道を失ってしまったのだ。



 ーーーーーーーーーーーー



 次の日、レインの頭は焦燥感でいっぱいだった。


「ちゃんと、働かなくちゃ」


 俺は、どうしたら死ねるのか一晩中考えた。しかし、もう魔力切れ、つまり寿命以外に方法は見当たらなかった。だから、とりあえず必要なお金だけは無くてはならない。

 俺にはもう、逃げ道は無いんだ。真っ向から生きなきゃ。


「でも、2日でこんなに探して見つからなかったんだ。いったいどうすれば.....」


 そうやって町を歩いているが、でも、やはり見つからないものだな。



 そうやって、何もできない時間が過ぎていったーーーーー





 ▽







 ーーーーーーーーーー〈18日後〉


 今日も、今日もダメか。


 もう疲れた。何やってるんだよ、俺。まじで。


 あれから2週間ちょっと過ぎたが、全く働き口が見つからない。この年齢だと、歳を偽ることさえできない。お金がないから、他の町に行くことも難しい。まあ、要するに詰み状態だ。


 こんなの、一体どうすればいいんだよ...


 俺は、とてつもない困難を前に、なすすべなく過ごしていた。




 *《宿の食堂》*


「すみませーん、お昼定食一つで」

「はいよ」


 やっぱりここは賑やかで、俺にはどうも合わないな。早く食べちゃって、また仕事、探しにいくかな。


 ていうか、もう俺は死ねないって分かったんだ。このままだらだらと過ごしていくのも、結構アリじゃね?お金さえどうにかすれば、もう何も考えなくて良くなるんだぞ。...うーん、


 そう思っていると、店に冒険者らしき人達が入ってきた。


「すみません、定食3つ」

「はーい」




「もぐもぐもぐ」


 ここのご飯は、たぶん美味しい。でも、心への負担が体まで来てしまったのだろうか。ここ最近は、どこか無機質な味に感じる。やっぱ、だらだら過ごしてちゃダメなのかな・・・



 すると、隣から冒険者の会話が耳に入ってきた。



 ”「…聞いたかよ、この前、<勇者>が魔王と交戦したらしいぞ」

「ああ、聞いたさ」

「じゃあさ、その魔王がどんなスキルを持っていたか知ってるか?」

「知らないな、どんなのなんだよ」

「それがよ、〝魔力切を吸い取る“スキルがあったらしいぜ、それも大量に」

「嘘だろ?そんなスキル、もし存在したら.....」“



 ーー俺は、不意に横から聞こえた話に衝撃を受けた。



「ーーそれは本当なのか」


 レインは聞いた。


「ん?. . . ああ、そうらしいが、、って、お前誰だよ」

「そうか、魔力を...」


 魔力を、吸い取る?にわかには信じがたいな。前なら『嘘つけ!アホか!』って言って突っぱねてたかもしれない。


 ーーでも、今は違う。何も希望もなかったレインにとって、その話はまさに救済であった。光であった。そして、その話を疑う余地もなかった。


「どうもありがとう!」


「え、ちょ」




 俺は、そそくさと宿を出て、いつのまにかその足は冒険者ギルドへと向かっていた。顔も、久しぶりに真顔から少しだけ緩んだ。



 魔力を吸い取るとか、俺にとって最高じゃないか。魔王なら、俺を殺せるかも知れない。


 その魔王と、会ってみたい。働く場所もできるのは、俺にはうってつけだろう。天職ってやつか?ははっ、こんなところで出会うなんて!もうだらだら生活とはおさらばだ!


 レインは自分の高鳴る鼓動を抑えきれず、冒険者ギルドへと駆けていった。



 ▽



 ここが冒険者ギルド. . .


 中に入ると、たくさんの人が笑いあって話したり、なんか叫んだりしている。


 ここの人たちを見ると、冒険者というのは、俺の想像している、ゴツくて強くてかっこいい人達ばっかではないようだ。それどころか、女の人も2割..くらいいるし、男もなんならヒョロガリの方が多いんじゃないか?


 それに、ここに来たはいいが、冒険者についてはほとんど何も知らない。昔お父さんから聞いた話が全てだ。


 まあ、魔王に会えればそれでいい。


「すみません、ちょっと聞きたい事があって」

「はい、って、子供?」


 受付にはお姉さんが立っていた。


「魔王ってどうしたら会えるんですか」

「ま、魔王?君、何を言って、、」


 その時、ギルド内にいた人達の視線が一気に集まった。


(ねぇ、今あの子魔王に会いたいって)

(てか何だあいつ、子供じゃないか. . . )


 ただ、レインはそんな事を気にする素振りも見せずに話し続ける。


「魔王に会いたいんです、本当に!」

「会いたいって、、まあ、どこかのダンジョンの最下層にいるらしいですが」

「ダンジョン. . . 」


 お父さんの話で、特に話題として多かったのは、ダンジョンについてだった。ダンジョンって言うのは、何かの歪みで世界に散らばる、地下の迷路みたいなものだ。今も歪みが広がるごとに増えていっている。


 魔物の発生源のひとつで、最下層をクリアすると何か宝のようなものがもらえるらしい。大半の冒険者は最下層なんか行けずに、出来るだけ深い階層で出来るだけ高価な魔物の魔石を取るか、地上でクエストを受けてギルドで報酬をもらう事で生活しているらしいが・・・


「そうですか、じゃあダンジョンに行くためにはどうすればいいですか?」

「ダンジョンには冒険者証が無くては行けませんよ」


 冒険者証?免許証みたいなものか?


「じゃあそれ作ります」

「え、それ本気で言ってますか?見たところ成人もしていないようですが. . . 」

「年齢制限とかが、あるんですかね?」


 確かに、これも一種の職業だし、あってもおかしくはないか。でも、それだと本当に困るんだけどーー


「いや、年齢制限はないですが、その歳の方はほとんどいないので、」


 ・・・え?今、無いって言った?まじかよ、こんなところに、本当に天職があったなんて!


「じゃあやります」

「で、でも. . . 」

「やります、今すぐ!ーーーー



 俺は、奥にある部屋に案内された。


「それでは、まずここに個人情報の記入をお願いします」



「. . . はい」

「大丈夫ですね、では次にステータスの測定に入ります」


 ステータス?あれ、これってもしかして、俺が英雄になったってばれる?


「聖紋を見せてもらえますか」

「え、何でですか?」

「聖紋にはその人のスキルや称号の情報が組み込まれています。この宝具に当ててもらえば、情報を協会に記録できるんです。だから、聖紋を見せてください」


 こ、これはまずいぞ、まずい。


「いやぁ、ちょっと. . 」

「ああ、聖紋の位置が、見せるのが恥ずかしいんですか。大丈夫ですよ、そういう方はたくさんいらっしゃいますから。服越しで構いません」


 違う、違うんだ。そういうんじゃないぞ、断じて。


 腕を隠して拒もうとしたのも束の間、お姉さんは何かの宝具を取り出し、服越しで腕に宝具を当てられてしまった。


 .....これってプライバシー侵害とかにならないのかよ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


【名前】 レイン・アリオス 

【種族】 人間族  【年齢】 11歳

 魔力 : 38065830

【称号】

 <魔術師>  Lv.3

【スキル】

 〈魔法系〉

 [水魔法] Lv.1


 [火魔法] Lv.1


 [氷魔法] Lv.1


 [援助魔法] Lv.1


 〈剣術系〉  なし


 〈防御系〉  なし


【固有魔法】 ステータス


【総合能力】 D


 ーーーーーーーーーーーーーーーー



 うぉっ、なんか出てきた。やばいやばい...


 . . . って、ちょっと待て。これって、前のステータスじゃないか?何で、、


「はい、記録は完了しました。最後に、この誓約書にサインを」


 安心したと同時に疑問に思いながらも、俺はサインをそそくさと書き終えた。


「すぐにダンジョンへ向かわれますか」

「はい、すぐにでも」

「では、このカードをお持ち下さい」


 そういって、小さなカードを受け取った。


「これがあれば、そのダンジョンで行ったことのある階層まで移動する事ができますよ」


 そんなものまであるのか、すげぇな。


「ありがとうございます。そういえば、魔王は結局どのダンジョンにいるんですか?」

「魔王?ああ、まだそんなこと気になるんですか」


 そんなこと、だと?聞き捨てならん、これは、俺の人生にとって最大級の問題なんだ! まあ、それを言っても分からんか・・・


「それが、どこのかのダンジョンの最下層には大きな時空の歪みがあって、そこを通ると歪みを生み出すほどの魔力をもち、隠された地に住む魔王のところへ行ける。、、らしいんですが、詳しくは、ちょっと.....」


 歪みは魔王の魔力からできてる、か。それに、そこを通らないと魔王に会えないなんて、知らなかったな 。


「分かりました、色々とありがとうございました」

「はい、これから頑張って下さい」



 ここから、俺の新しい旅が始まった。

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