第1話 

 神聖歴312年、大陸の辺境、静かな風が吹き抜ける地で、一人の男の子が産声を上げた。

 名は、レイン・アリオス。


 父はガイル・アリオス。母はエリオ・アリオス。

 父のガイルは、天下にその名を轟かせる伝説のパーティー『ビクトリア』に所属する超一流の冒険者だ


 冒険者の中でも特に有名な父は、家族に危険が及ばないよう、結婚や出産は内密にし、この秘密を知っているものは『ビクトリア』に所属する残りの二人のみであった。


 父は冒険者をいったん休職し、ここ、バルサ国の辺境で、毎日家事や育児に徹していた。


 しかし、この子供には、両親さえも知らない秘密があった。


 (まさか、俺が第二の人生を歩む事になるなんて.....)


 そう、それは彼が【転生者】であること。


 終わりにしたいと思っていた彼の人生は、皮肉にも新たな産声とともに動き出したのだ。



 そんな三人の暮らしは、何事もなく、平和に過ぎていった。




 1歳にも満たないころ、言葉が話せるようになった。


「あなた、レインがママって言った!ねぇ、ママって言ったわ!!」

「本当か..!」

「ままぁ ぱぱぁ」


 まあ驚くのも無理はない。俺だってびっくりだ。まじで猛勉強したら、一年足らずでスラスラ話せるようになってしまったのだから。


(やっぱり子供の体ってすげぇな)


 異世界語を早くに習得出来たのには、他にも理由があった。お父さんとお母さんが、よく寝る前に話を読み聞かせてくれていたのだーーーー





「さて、今日は、この世界の不思議について話そうか」


 お父さんは、隣に横になって話し始めた


「ーーー世界では、昔から魔物の襲撃がひどく、普通の武器では対処し切れない魔物たちに、人々は日々を怯えながら生きていた。 そんな時、天から光が降り注ぎ、何者かの声が聞こえてきた。  ≪この世界に生きるか弱きものよ、我が力を授けよう。そして生きるのだ...≫  . . . そして、その啓示とともに、人類は魔力を使い、魔物と戦う力を得たのであるーーー」


「その声って、誰?」

「女神様だと言われてるけど、真実は神のみぞしる、だな」

「へぇー」


「さあ、次は冒険していた時の話だ.........



 ▽



 3歳が過ぎた。魔物の出現が増えてきたこともあり、父は一番近くの町、トリニオンで町の護衛をするようになった。


 日中はいつも母と二人、そんな日常を過ごすうちに、俺は家事を頻繁に手伝うようになった。


「ちょっと、お父さんのお部屋を掃除してくれる?」

「もちろん!僕雑巾持ってくね」


 そうやって母に言われて父の部屋を掃除している時だった。


「よいしょっと、ふぅ」


 棚の奥。不自然に置かれていたその箱は、不気味な雰囲気をかもしだしていた。


 子供の大きな好奇心からか、俺はそれを取り出して開けようとする。


「ふんんんっ あれ、開かない?」


 鍵穴は無いようだったけど、まだ力がなかったからか、開けることができなかった。でも、びくともしなくて、やはり何かロックされているようにも感じた。


「ただいまぁ」

「やばっっ」


 お父さんの帰宅の声を聞いたレインはすぐにその箱をしまい、何食わぬ顔で掃除を再開した。





 そうやってあっという間に日々は過ぎていき、俺は5歳の誕生日を迎えた。


「「「誕生日おめでとう!!」」」

「ありがとう!」


 俺の誕生日は、いつも父と母と三人で祝ってた。でも、今日は違う。


 そう、今日は父の冒険仲間の二人、アベルさんとノアさんが来てくれているのだ。


 父が仕事をするようになってから、二人はたまに来てくれていて、よく俺に冒険話をしてくれる、とても良い人たちだ。


 そんな二人が今日の誕生日に来てくれたのには、理由があった。


「今年でレイン君も聖紋の儀かぁ」

「こんなに大きくなって、お母さんもうれしいわ」


 そう、この世界では、5歳になると子供は教会で『聖紋』を授かり、そこで神からスキルと称号をいただくという儀式があるらしい。


 最初こそどうなっているのかわからないし、中二病設定で少し興奮したが、過ごしていくにつれて、あまりに身近なもので、違和感も感じないほどになっていた。


 そして唯一神イリスティア?様は、その『聖紋』を授ける能力を持つ、この世の頂点ともいえる存在なんだが、、


「あの女神を見たらなぁ」


 あの女神の後輩らしいし、ろくでもないやつに違いない。ていうか、そうに決まってる。


 まあそれはともかく、そんな俺を祝うために、今日はわざわざ来てくれたらしい。うれしいね。


「この料理、すっごくおいしいです!僕、こんな料理食べたことありません!」

「これはな、ボアードっていう魔物でな、アベルとノアが今日のためにダンジョンでとってきてくれたものなんだぞ」

「へぇー...え、魔物って食べられるの?!」

「ほとんどのものは硬かったり毒があったりで食べられないが、一部の上級魔物はすぐにさばけば食べられるんだ」


 魔物なんて、どう考えてもやばそうなやつでしょ。


 〈魔〉物なんて言ういかにも物騒なのを食べるなんて考えたこともなかった。


 確かに、魔物も動物なら食べられそう、、なのか?道理で見たことないわけだ。


「というか、そんな魔物を倒せるなんて、お二人はいったいどんなスキルをもらったのですか」

「そうか、気になるか、そぉかそうか」


アベルさんは自慢げに答える。


 「じゃあ教えよう、俺のスキルはなーーーー」

「ーーコイツは剣聖のスキルを持ってるんだ。ノアは<大魔導師>、回復に援助、攻撃魔法までいろんなことができる万能職なんだ。まあ細かいことは言えないけど」

「それ俺のセリフ!!」


 そうか、アベルさん何となく剣士っぽかったけど、ノアさんは魔導師だったのか。


『剣聖』に『大魔導師』、、まさに最強のパーティーだな。


「ほ、ほかには何があるんですか」


 今度はアベルさんに聞いた。


「ほかは聖職者とか、ネクロマンサーとかだな。多すぎてわからないところもあるけど、一応ざっと100種類くらいかな」

「100種類もあるんですか」


(俺の第二の人生、一体どうなるのやら. . . )


 俺はこれからの人生に思いを馳せた。

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