英雄は終わりを求めて旅に出る 〜死を追い求めし世界最強の冒険録〜

了静

第0話 

 「ああぁぁ、つかれた」


 あるIT企業に勤める25歳の会社員、佐藤たくまは、いわゆる“社畜”というやつだった。


 その日も残業終わり、終電に乗り、帰路についていた。


 いつも通りの道だけど、ちょっと薄暗いな・・・






 その時、後ろから何やら気配を感じた。




 後ろを振り返ったのも束の間、いつの間にか体は動かず、地面に倒れこんでいた。


 こういうのは、何度かドラマで見たことがある、まあ通り魔か何かだろう。別に大してお金も何も持ってないのに、不憫な奴だな。


 ああ、俺もやっと終われる。別に未練も、、無いといえばうそになるが、あんな生活からおさらばできるのは、正直うれしい。


 ーーー突然、走馬灯のように頭に俺の人生での記憶が流れ込んでくる。


 俺が人生を楽しいと思っていたのは、まぁ中学生位の時までだろう。高校じゃ、中学の友達はほとんどいなくなって、コミュ力の低い俺は1人で過ごすことが多くなった。


 それだけならまだよかったが、大学に入ると、周りの奴らにいいように使われて、パシリみたいな生活。疲れ果てた俺は、大学を中退し、頑張って就職してみたのは良いものの、給料も低いし残業で終電帰りの毎日。彼女もいないし、生きるのに無気力だった。ーーー


 ま、とりあえず、死にたくても死に切れない、生きた屍みたいな感じだった。. . . もう生きるのはコリゴリだ、次になるならナマケモノとかがいいかな、、


 その時、目の前が急に明るくなった。



 おっとぉ、天からの迎えか何かですか、やっぱり天国って存在するんだな。


 ってか、何も見えない・・ でも、なんだか心地がいい感じがする。


 ▽


 『あっ、どうもぉ』


 . . . . . .ん?なんか変な声が聞こえるけど


 『あの~、聞こえてますか、すみませ~ん、お~い』


 . . .やっぱりなんか聞こえるよな、俺は死んでなかったのか。でも、体は動けないし前も見えないし、返事もできないんだが?


 『もぉ~、なんで無視し、、、あぁ、そうだった。この人魂だけで実体がないんだった、ごめんごめん』


 あれ、なんか急に前が見えて、、、


 『ちゃんと聞こえてますかぁ?』


 声が、めっちゃ可愛らしいな、おい。


「あ、あぁ。ここは. . .どこなんですか、て言うかあなただれなんですか. .」


 急に前が見えたと思ったら、なんだこの美人は。誰もが〈美人ってどんな人ですか〉って聞かれたら思い浮かべるような超絶美人だ。


 透き通った白い髪に青い瞳、こんな天使の様なやつが存在するのか?


 『ここは天界、あなた方の言う天国と大体同じだと思っていいわぁ。そして私は女神、この世界を作りし女神、イリナよ』

「はぁ、、じゃあ現実の俺は死んだってわけか」

 『妙に受け入れるのが早いのねぇ』

「こういうのはテレビでよく見てきたからな。まあ、少しは驚いてるけど。って言うか、なんで俺なんかと話してるんだ、死者なんて多すぎて、一人一人と話してる時間なんかないだろ」

 『そりゃそうよ、別にいちいち魂に実体を与えてしゃべるなんてめんどくさいことはしないわぁ』

「じゃあ何で. . 」


 女神(仮)はにっこにこの笑顔で口を開いた。

 

 『でもね、私あなたのことがすっごいタイプなのぉ』

「. . . へっ?」


 な、何言ってんだコイツ、頭沸いてんのか?


 やばい、こいつは絶対やばい。言動があやしすぎる。


 改めて考えると女神だなんて本当なのか、、でも、傷は何も残ってないし、そこは本当っぽいな。


 俺がタイプだ?そんなこと人生で一回も言われたこともないわ。まあちょっとはうれしいけど. . . って、惑わされるな、俺。ちょっと可愛いからって・・・


 『あなたを生み出した時からずっと思ってたのよ、タイプだって。でも、こっちからは何も手を出せないし、かといって死んじゃったら、新たな生命としてすぐに転生してしまうし、複雑な気持ちで見守っていたのよ』

「そりゃどうも。じゃあ、今の話で行くと、俺はこれから新しい生命として転生するってことでいいのか」


 今の話じゃ、俺は転生先を選べなさそうだな。


 『いやぁ、それが、あなた、ほんとちょうどいいところで死んでくれてねぇ。今ね、後輩の女神が人類に変な事をしたせいで転生する魂が少なすぎて困ってて、助けてほしいっていうから、こっちの世界の、人生半ばで途絶えた悲しき魂を送ってあげようとしてたのよぉ』

「長々しくどうも。それで、俺が選ばれたと」

 『そう、そうなの。あなたをこのまま転生させちゃうのはもったいないと思ってたから、ちょうどよかったわ」

「でも、どっちみち魂が転生されるなら関係なくないか?大体、転生したらもう俺はいなくなるんだろ、何でそんなにうれしそうなんだ...」

 『うっふふ、今回の転生はね、別の世界からの転生ってことで、意識はそのままで転生できるように交渉したの。だから安心してねぇ」


「はぁ??」


 少し考え込んだ後、再び話し出す。


「. . . じゃあ、俺は人生をやり直す、ってことだよな」

 『ええ、その通りよ。まあ、姿かたちは違うけどねぇ』

「そうか、人生を. . . .」


 人生を、初めから、もう一度. . .


 『そんなにうれしいんですか』

「. . ぁだ」

 『はい?』

「ゃだ、イヤだぁぁぁぁ」


 何だよその罰ゲーム?俺が人生やり直すって?バカ言え、俺は前世でよく分かったんだ。


 俺には人と生きていく力なんてない、そう、コミュ力が!無いんだよ!


 『えぇぇ?!こういうのは、ふつう、うれしいもんじゃないんですかぁ』

「わからないのか?お前俺の人生を見てきたんだったらわかるだろぉが、俺はな、もう人生に疲れたんだよ。やっと楽になれると思ったのに. .」

 『はぁぁ?こっちはそんな人生だったからこそもう一回やり直させてやろうって言ってんのに』

「それが余計なお世話だって言ってんだろうが!」


 どうやらこの女神は人の心がわからないらしい。やっぱり外見と内面がそろってる人なんていないんだろうか。、、いや、人じゃないのか?


 『もおいい!あなたがここに来た時から転生が始まってるから、もう遅いのよ!』

「へ?」


 [. .転生の準備が終了しました]


 『. . .じゃあね、この馬鹿っ』

「ちょいちょいちょい、それは自分勝手すぎないか?いやちょ待って待っ」


 再び、視界は白い光に包まれる。



 ▽



 ちくしょう、なんだあいつは。変なことばっか言いやがって。


 何なら俺を殺したのもあいつの仕業かもしれん. . . ああもう、考えるのはやめだ。


「どんなところに転生するんだろうか」


 あの女神のことだ、、、不安で仕方ない。

 

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