第2話 憲法改正に係る新規モデル事業検討会議

私達が暮らすこの国にとてもよく似たその国の、とある政治家がこう言った。

「このままでは国が滅びる」と。

「誰かが何とかしなければ」と。


そして…。

日本国憲法第27条に定められる勤労の義務…『すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う』。

先の大戦以来より存在したこの憲法が改正された。


西暦202⚫︎年。

時の内閣総理大臣の意思を受けた国会は、憲法27条の改正を閣議。議員過半数の支持を受け、その内容と解釈を新たにしたのだった。


『すべて国民は勤労の権利を有し義務を負う』という条文は改正され…。

『すべて国民は勤労の権利を有し"責務"を負う』となった。

『義務』から、『責務』へ。

自由意志から強制へ。

全ては国を憂いての選択の結果である。

だが、この変革が国民に何を齎すのか…。

その改革への試みは、これから始まる。



統京都千代多区靄ヶ関。

労働厚生省(※厚生省)。

中合同庁舎第5号館8階第一会議室。

第一回『憲法改正に係る新規モデル事業検討会議』の場にて。

その話し合いは行われた。


それは、各庁官僚・同庁責任者が一同に会する重要な会議であった。


各席の上に並べられた資料には、

『働きたくない』

『国民の約6割の若者が働く事の価値が見つからない、と返答』

『急増する、夢を持たない若者達』

といったキーワードが羅列されていた。


「お手元の、お手元の、資料をご覧下さい。」

資料を手に持つ官僚風の役人が、会議の参加者を前にして長広舌を振るう。

「お手元の資料の記述にある通り、昨今の若者が抱く労働への意欲の低下は、著しい、著しい問題であります。」

独特な言い回しを多用しながら、その役人は熱く自案を語る。

「若者の、若者の労働意欲を取り戻さねば、この国に未来は、未来はありません!」


参加者一同「「「なるほど確かに。」」」


「よって私は、私は、先の憲法27条改正によって生まれた新法案【青年人材資源健全化育成法】の名の下に、国を挙げての青少年救済プロジェクト【夢見る青年モデル事業】の立ち上げを提言致します!」


参加者一同「「「それは素晴らしい!」」」


会議室内に沸き上がる満場の拍手をもって、【夢見る青年モデル事業】の始動が確約された。

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