俺、映画化決定!
Yukl.ta
第1話 「俺の映画化が決定した!」
ある日テレビを観ていたら、
『俺が映画化した』
そんなニュースが流れてきた。
その時にはもう既に、
映画に必要な撮影も録音も編集も、
俺の知らぬ間に全てが終わっていた。
俺はその事実を、
映画初公開前日の今日、
始めて知る事となる。
…勘違いしないで欲しいのだが。
それは例えば『俺が書いた小説が映画になった』ではない。
文字通り『俺自身が映画になった』という意味だ。
◆
俺には夢がある。
『小説家になりたい』
それが俺の夢だ。
文章を書くのが好きだった。
物語を描く事が好きだった。
自分の中に世界を創る事が好きだった。
しかしその夢は、今もまだ叶わない。
新人賞への応募。
出版社への持ち込み。
Web小説サイトでの発表。
創作教室での学習。
パソコンスキルの会得。
いわゆる、夢を叶える為の努力は重ねてきたつもりだ。
だが、未だ俺の夢は陽の目を見ない。叶わない。
そもそも「小説家ってなんだ?」
「何をすれば小説家なんだ?」
そんな哲学的染みた事すらも頭に浮かび始めている。
しかし。
多様なジャンルの本を読み。知識を増やし、多くの経験を積み…。
「ひたすらに書き続けること」
それだけは小説家の必須条件であり、絶対の大前提だと信じている。
けれど…。
そうと頭では理解していても、ストレスは溜まる。
いくら努力を重ねようと、俺の夢は叶わない。そんな鬱屈。
俺の夢は多分、夢半ばで終わりの時が訪れる。そんな恐れ。
そんな負の情念が重なった結果…。
いつしか俺は、『夢を追う事』事態が自分の夢なのだと錯覚し始めた。
◆
友達達との酒の席で。
「俺はいつか小説家になるんだ!」
職場の喫煙室の井戸端会議で。
「俺は夢の為に努力してるんだぜ!」
そんな事を言い続けた。
その結果…。
周囲の人間が俺の夢など理解してはくれるはずもなく。
「変なことばかり考えている奴」
「不気味な人」
「付き合い辛くなった」
そんな評価を他人は下す。
しかしそれでも懲りずに俺は、自身の夢への賛同と賞賛を求めて、今度はインターネット上で、ひたすらに自身の夢をアピールした。
ブログに。Twitter(X)で。動画投稿も使って。
「夢を諦めない」そう書き込み続けた。
…当然、俺の求めるような反応は返ってこない。
そこでやっと俺は気付くのだ。
それらは全て、単なる抑圧の発散であり。
自分は努力しているのだというという見栄であり。
儚い夢への依存であり。
…それらは結局、コミットメントと一貫性の法則に支配された、サンクストとコンコルド効果による、自身の歪んだ執着の証明でしかなかったのだ。
高潔な決意のもとで心に芽生えた夢を、目標を。
これから成し遂げようとする計画を。
これらを軽々しく他人に語ってはならなかったのだ。
言葉とは力である。
決意を持って『変わる』というその意思を軽率に吹聴してはならなかったのだ。
言葉とは質量である。エネルギーそのものである。
蒸気機関と同じく、漏れ出せば車輪は決して回転しない。
話したその瞬間に一瞬の満足感は得れり、しかし本来留まるべきエネルギーも同時に霧散してしまった。
決意という精神的エネルギーは、軽々しく外に漏らしてはならなかったのだ。
…まぁ、何が言いたいのかというと。
俺は今、自分に限界を感じている。
そして『自分の夢を諦めようと考えている』
つまり俺は、自身の夢の果てを意識し始めていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます