エルフに救われる #7
交易都市ヴェルガ。
大陸のほぼ中央に位置し、各都市への交通の便が良いという地政学的な重要性から、交易の中継地として栄えている──というのが、この街の設定だ。
多くの富と人がこの街に集まり、商人たちの手によって、王都をはじめとする様々な街へと運ばれていく。
ゲーム内でも乗合馬車のターミナルが設置され、多くの店が軒を連ねる、何かと便利な「冒険の中盤の拠点」となる街であるはずだ。
「交易都市ですよね? ……それが、衰退しているんですか?」
僕の問いかけに、アイリシアはまっすぐに僕の目を見つめ返す。
「……やっぱりそうか」
何かに納得したように、アイリシアは頷く。
「君の知っている物語は、おそらく百年ほど前の話だよ」
百年前?
僕はてっきり、アストラル・オーブの物語そのものの世界に転生したのだと思っていたが、どうやら違う。
百年前ということは、僕はゲーム本編から百年後の世界にいる、ということになる。
そこまで考えたところで、ふとある記憶が蘇る。
僕が死ぬ少し前に、アストラル・オーブの続編開発が発表されている。
発売日は未定だが、プレスリリースには『物語の舞台は前作から百年後になる』という記載があったはずだ。
だとしたら、僕は「開発が始まったばかりの続編の世界」に転生してしまったというのだろうか。
それにしても奇妙な話だ。
まだ影も形もなく、僕自身も何の知識も持たない続編の世界に、なぜ。
僕の混乱をよそに、アイリシアは淡々と話を続ける。
「今からおよそ八十年前に大きな災害があってね、この大陸全体が深刻な打撃を受けたんだ。実際、港町が一つ壊滅している」
前作の後、そんな出来事があったとは。
「それがきっかけでこの国の基幹道路が再整備されることになったんだけど、当時のヴェルガの領主が色々ごねて、計画から外されてしまってね。結果、今では近隣のリーゼリオという街が交易の中心になっているんだ」
リーゼリオという街の名前は初耳だ。
続編ともなれば、前作のマップをそのまま流用するわけにもいかない。
おそらく、新しくできた街なのだろう。
その兼ね合いなのかは分からないが、いずれにせよ、僕の知るアストラル・オーブからは、ずいぶんと様変わりしているようだ。
ゲームであれだけ入り浸ったヴェルガの街を目の前にして、胸に広がるのは期待よりも、言いようのない不安の方が大きい。
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