エルフに救われる #6

「アストラル・オーブ」において、エルフはプレイヤーが選択可能な種族として登場する。


集中力(コンセントレーション)に長けた種族であり、その特性からハンターやメイジといったジョブに高い適性を持つのが特徴だ。


目の前を歩くアイリシアはメイジのようだが、その腰にはハンティングナイフが装備されている


本来はハンターが適性を持つサブウェポンだ。


以前はハンターで、そこからジョブチェンジしたのかもしれない。


メイジが接近戦で用いるサブウェポンといえば、杖を構えたまま最短で近接攻撃に移れる伸縮式のクローが一般的だ。


それを考えれば、あえてハンティングナイフを選ぶ彼女は、ゲーム的にはなかなかに通好みと言える。


おそらく彼女は、杖からナイフに持ち替えてでも、クリティカルを狙っていくようなアグレッシブな戦闘スタイルを好むのだろう。


集中力の高い、エルフならではのビルドだ。


また、先ほど彼女が放った「アロー・エレクトロ」には、ホーミング属性が付与されていない。


彼女がどのような状況で魔法を放ったのかは定かではないが、飛びかかるハウリングウルフにヘッドショットを決める腕前を見るに、やはりハンターとしても相当の手練れであることがうかがえる。


そんな風にアイリシアの能力を考察しているうちに、僕たちは森を抜ける。


しかし、森を抜けた目の前にすぐ広大な景色が広がるわけではない。


緩やかな上り坂を、僕たちは黙々と進む。


太陽は真上から少し西に傾いている。


元の世界の感覚で言えば、午後二時か三時といったところだ。


やがて丘の頂上が見え、今度こそ視界が開けると、少し先に高い城壁に囲まれた都市が姿を現す。


森の近くだからと、勝手にこぢんまりとした田舎町を想像していた僕の予想に反して、その規模は大きい。


街の奥には、城までそびえ立っている。


「立派な街ですね」


思わず感嘆の声を漏らす僕に、アイリシアは静かに答える。


「遠目に見れば、そう見えるかもしれないね。でも、あの街はもう衰退しているんだ」


彼女は僕の顔をちらりと見やり、その反応を確かめるように呟く。


「街の名前はヴェルガだよ」


もちろん、その名は知っている。

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