ヴェルガを訪れる #1
ヴェルガの城壁は、途方もなく高い。
街が近づくにつれて、その威容にただただ圧倒される。
見渡す限りの石積みが、これほどの高さで築かれている光景は壮観だ。
一体どれほどの年月と人員を費やして完成させたのだろうか。
アストラル・オーブにおいて、ヴェルガ周辺は比較的強力なモンスターが現れる地帯だ。
多くの富と人が行き交う交易都市ともなれば、それを狙う盗賊や、モンスターの襲撃に備える必要があったのだろう。
この堅牢な城壁は、ヴェルガの権勢を内外に誇示する役割も担っていたのかもしれない。
正門の脇には、乗合馬車のターミナルとなる、ロータリーがあったのだが、今はそれも撤去されているようだ。
往時は数えきれないほどの人々や馬車が往来したであろう、巨大な正門に向かう。
しかし、その門が開け放たれているにもかかわらず、そこに立つ門番はたった一人だ。
体格こそ屈強そうだが、その鎧は僕のような素人が見ても明らかに古びており、手に持つ槍の穂先は一部が欠けている。
研ぐ暇すらないほど、この街の台所事情は苦しいのだろうか。
門番は僕たち──というよりアイリシアに気づくと、慌てたように敬礼する。
彼女が門番へと近づく。
「おかえりなさいませ、アイリシアさん」
門番はそう言った後、ちらりと僕に視線を向ける。
「そちらの方は?」
全身に血を浴びた僕の姿を見て、その目にははっきりとした警戒の色が浮かんでいる。
無理もない。
「森でハウリングウルフに襲われていたところを、私が助けたんだ。どうやら行くあてがないようだから、しばらく街に滞在させてあげたいんだけど、入れてもらえるかい?」
「アイリシアさんがそうおっしゃるのであれば、何の問題もございません」
門番は少しも迷うことなく、あっさりと許可を出す。
アイリシアは僕の事情をほとんど省略して説明しているが、門番はそれ以上何も詮索しようとしない。
彼女がこの街でいかに信頼されているかが、この一連のやり取りだけで十分に伝わってくる。
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