エルフに救われる #3

杖の先が、僕の喉元に向けられている。


「はっきり言え。君は何者だ? どこから来た? 記憶がないのかい?」


エルフの冷徹な問いに、僕は言葉に詰まる。


記憶喪失のフリをしようかとも考えるが、どうせすぐにボロが出るだろう。


かといって、本当のことを話したところで信じてもらえる材料なんて何一つ持っていない 。


だが、どうせ僕は一度死んだはずの人間だ。


これ以上彼女を怒らせても、頭が吹っ飛んで、首のない体が力無く倒れるだけだ。


僕は観念し、正直に話すしかないと腹を括る。


「僕は……その、異世界から来たんです。この世界とは、全く違う世界から」


「……何を言っているんだい?」


エルフは呆気に取られたような顔をする。


無理もない。


いきなりそんな話をされて、すぐに理解してもらえるはずがない。


僕ですら、この状況が完全には理解できていないのだから。


「僕は、元いた世界で死んで、気がついたらこの森にいたんです。いわゆる、異世界転生というものだと思います」


「転生……。君は、転生したというのかい?」


エルフは僕の言葉を繰り返すが、その表情は依然として困惑に満ちている。


「そうだと思います」


「他の世界から?」


「はい。こことは全く違う世界からです」


エルフはしばらく僕を睨みつけるが、やがてゆっくりと構えを解く。


ふう、と彼女が小さく息を吐く音が聞こえる。


「なるほど。君は『この世ならざるもの』というわけだね」


理解してくれたことに驚くが、どうやら警戒は解いたようだ。


「リンク・コグニションが通じない理由も、大体理解できた。対話もできるようだし、君に悪意はなさそうだね」


リンク・コグニション。


その言葉に、脳内の記憶が繋がる。


さっきの光景が、フラッシュバックのように脳裏に蘇る。


「……あの狼はハウリングウルフで、あなたは、アロー・エレクトロで倒したんですか?」


僕は思わず尋ねてしまう。


エルフは眉間に深い皺を寄せ、じっと僕を見つめる。


「そうだよ。……何か心当たりがあるのかい?」


ああ、そうか、やはり。


「僕はこの世界を知っています」


ここは「アストラル・オーブ」の世界だ。

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